判例データベース
T教育サポート・サービス雇止め事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- T教育サポート・サービス雇止め事件
- 事件番号
- 東京地裁 − 平成11年(ワ)第7849号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 有限会社 - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2003年10月01日
- 判決決定区分
- 棄却(確定)
- 事件の概要
- Tジャパン(本件分校)は、米国T大学の日本分校として開設され、当初は(株)T・ニッポンが、平成4年5月以降は(株)テンプル・インターナショナルが、平成8年5月以降は被告が経営を行ってきた。原告はニュージーランド国籍の女性であり、平成2年3月以降、T・ニッポンと2回、テンプル・インターナショナルと3回、それぞれ期間を1年とする雇用契約を締結し、集中英語コースの専任教員として勤務していた。
原告は被告との間で期間を平成8年5月1日から平成9年4月30日までとする雇用契約を締結したところ、被告は同年3月24日付けで、原告に対し、本契約を更新しない旨通知するとともに、これに代わるものとして期間を4ヶ月とする雇用契約を申し出たが、原告はこれを拒否したため、期間満了によって雇用契約は終了した。
原告は、被告との間の契約は自動的に更新されることが内規で保証されていること、契約更新について期待を持つことに合理性があること等から、本件雇止めは解雇に関する法理を適用すべきところ、本件雇止めには合理性がないから無効であると主張し、平成9年5月から平成11年3月までの給料等1100万円、帰国手当40万円、慰謝料55万円を被告に対し請求した。 - 主文
- 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 - 判決要旨
- 被告は、T・ニッポン、T・インターナショナルと同じく本件分校の経営主体であるが、これらの法人とは資本構成、役員構成を異にしており、T・インターナショナルは、本件分校の各教員に対し、テンプル大学との委任契約は平成8年4月30日限りで終了し、その後は各教員とは何ら関係がないと通知したこと等からすれば、原告は本件分校の経営主体が被告に変更されたことを認識していたことが推認できる。本件契約は、原告が本件分校で引き続き集中英語コースの専任教員として勤務することを目的とするものであることを考慮しても、原告とT・ニッポン、原告とT・インターナショナルの間の雇用契約とは別個の新たな契約といえる。
被告は、まず、T大学の雇用慣行に従い、原告との間で、更新の保証のないことが明記された雇用契約を締結し、その5ヶ月後、原告に対し、集中英語コースの常勤教員を20名から15名に削減しなければならないため、雇用契約を更新できない可能性があること等を通知し、平成9年2月、更新対象教員の審査を行い、その結果原告について契約を更新しないこととした。原告は、契約を更新しないことはそれまでの経営主体との間で確立した雇用慣行に違反することを主張するが、従前とは別の経営主体である被告が新たに教員との間で雇用契約を締結するに当たり、どのような条件を提示するかは、被告の裁量に属する。以上によれば、本件契約は、当事者双方とも格別の意思表示がなければ当然に更新されるべき雇用契約を締結する意思であったと認めることはできないから、期間の定めのない雇用契約に転化した、またはこれと実質的に異ならない状態で存在していたということはできない。また、本件契約は、1年間以上の継続が当然には期待されておらず、実際にも1度も更新されたことはなかったから、本件雇止めの効力を判断するに当たり、解雇に関する法理を類推適用すべきであると解することはできない。したがって、本件契約は、平成9年4月30日の期間の経過をもって終了したと認めるのが相当である。
また、被告は、集中英語コースの各教員との間で十分に協議した上で原告の適格性を評価し、更新の可否を決定したのであるから、その結果、原告が契約の更新を申請した教員らの中で相対的に低い評価を受けたからといって、これが不法行為を構成するとは認められない。
仮に、本件雇止めを有効と判断するためには社会通念上相当とされる客観的合理的理由が必要であると解するとしても、原告は、1年ごとに期間を1年間とする雇用契約を締結しており、原告の教員としての地位は、期間の定めのない雇用契約による教員のそれとは異なるから、必要とされる客観的合理的理由及びその程度は異なると解される。
集中英語コースの応募者の減少から、被告は同コースの教員数を削減する必要があったと認められるところから、更新の対象となる教員について審査を行った結果、原告の適格性が他の申請者のそれよりも相対的に低いと評価されているのであるから、原告を更新対象から外した被告の判断は正当といえる。更に被告は、原告を次年度における更新対象者から外す一方で、期間を4ヶ月間とする他は従前と同様の待遇とする雇用契約を申し出、代替案を提示したが原告自らこれを拒否したことからすれば、仮に本件雇止めに社会通念上相当とされる客観的合理的理由が必要であるとしても、本件分校における学生数の減少及びこれに伴う教員削減の必要性、審査手続きの策定及びその実施経緯、代替案の提示などの事情を考慮すると、本件雇止めには社会通念上相当とされる客観的合理的理由があったと認められる。 - 適用法規・条文
- なし
- 収録文献(出典)
- 労働判例820号89頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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