判例データベース
C航空会社客室乗務員雇止め控訴事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- C航空会社客室乗務員雇止め控訴事件
- 事件番号
- 東京高裁 − 平成14年(ネ)第670号
- 当事者
- 控訴人 個人1名
被控訴人 航空会社 - 業種
- 運輸・通信業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2002年07月02日
- 判決決定区分
- 棄却(確定)
- 事件の概要
- 被控訴人(第1審被告)は、米国の航空会社の子会社であり、控訴人(第1審原告)はこれに雇用される契約社員の女性客室乗務員である。被控訴人は平成10年に、正社員としての客室乗務員を廃止して全員を契約社員とすることにし、1年契約により5年間の勤務を行うこと等を内容とする第1次フライフォーファイブによる契約を締結するか、早期退職の選択を求め、同時に控訴人ら契約社員にも同制度が適用され、契約社員は全員が期間を1年とする雇用契約を締結した。しかし平成11年になって、被控訴人は契約期間を6ヶ月とする第2次フライフォーファイブによって契約社員を採用することとし、控訴人ら契約社員30名が応募したところ、16名は最初の6ヶ月契約が締結されたが、14名については更新されなかった。更に第2次フライフォーファイブの最初の契約が終了する際、一部の契約社員は更新が拒絶された。
これに対し、控訴人ら7名は、フライフォーファイブ契約は、実質的には5年間の契約期間を定める契約であって、労基法の趣旨から期間の定めのない契約と同視すべきであること、仮にそうでないとしても5年間の雇用を保証しているか、その合理的期待を持たせるものであって、更新拒絶には解雇に関する法理が適用されるべきであるところ、更新拒絶に正当な理由がないとして、解雇の無効と賃金の支払いを請求した。
第1審では、フライフォーファイブ契約は、契約書の一部に契約期間を5年としているかのような文言もあるものの、被控訴人に5年間契約存続を保証するものではなく、全体としてみれば契約更新されるという期待が客観的に合理的なものであったとはいえず、拒絶理由も信義則違反や権利濫用に当たらないとして控訴人らの請求を拒否したことから、7名の原告中控訴人のみがこれを不服として控訴したものである。 - 主文
- 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 - 判決要旨
- 解雇制限法理を適用ないし準用するには、雇用契約の当事者間において、期間の定めある契約があたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたか、少なくとも、期間が満了したというだけでは当然に雇止めになるわけではなく、むしろ雇用関係の継続が期待されていたことが必要になると解すべきであって、控訴人が主張するような客室乗務員の労働の内容という一般論や他の航空会社の取扱いを根拠に、控訴人と被控訴人間の雇用契約において契約更新に対する合理的な期待があったとの結論を導くことはできないといわざるを得ない。
控訴人は、採用の経緯や勤務実績、第1次フライフォーファイブに基づく雇用契約に至る経緯に照らせば、被控訴人は単に期間満了したという理由だけでは当然に雇止めを行うものとは考えておらず、控訴人も雇用契約が5年間継続されるとの合理的期待、信頼を抱いていた旨主張する。この点については、なるほどフライフォーファイブという制度の名称自体が、あたかも5年間の雇用を内容とする契約であるかのような誤解を与えかねないものであったこと、第1次フライフォーファイブが従来の正社員と契約社員の両方を対象とした制度であったため、契約社員に対しては、旧契約よりも好条件の契約であって雇用の安定につながるという印象を与えるものであったことを指摘することができる。
しかし、被控訴人においては、フライフォーファイブ導入前の契約社員制度の下で、契約社員である客室乗務員の平均勤務期間は2年に過ぎず、契約社員に対する契約更新が常態化していたということもできない。また、被控訴人は、第1次フライフォーファイブについて、パンフレットや契約書のほか、口頭での説明でも将来の予測は不可能であって再契約を保証したものではないことを繰り返し明言しており、控訴人もこのことを十分に理解していたということができるから、フライフォーファイブと言う名称が必ずしも適切ではなく、控訴人を含む従来の契約社員に好条件の契約との印象を与えるものであったとしても、なお、契約更新に対する控訴人の期待が客観的にみて合理的なものであったとまでいうことはできない。 - 適用法規・条文
- なし
- 収録文献(出典)
- 労働判例836号114頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
東京地裁 − 平成11年(ワ)第16167号、東京地裁 − 平成11年(ワ)第24417号 | 棄却(控訴) | 2001年12月21日 |
東京高裁 − 平成14年(ネ)第670号 | 棄却(確定) | 2002年07月02日 |