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情報技術開発パートタイマー雇止め保全事件

事件の分類
雇止め
事件名
情報技術開発パートタイマー雇止め保全事件
事件番号
大阪地裁 − 平成6年(ヨ)第3296号
当事者
その他債権者  個人1名
その他債務者  株式会社
業種
サービス業
判決・決定
判決
判決決定年月日
1995年06月05日
判決決定区分
一部認容・一部却下
事件の概要
 債務者は、コンピューターのシステム開発を業務とする株式会社であり、債権者は昭和58年3月に大学工学部を卒業した後債務者に雇用され、プログラマーとして主に貿易システムプログラミングを担当し、昭和60年12月結婚後も勤務を続けていた女性である。債権者は、平成3年10月2日から平成4年11月15日まで、出産休暇、育児休暇により休職したが、同日に債務者を一旦退職した上、パートタイム契約を結んで復職した。パート契約の期間は当初は平成5年3月末日までであり、以後は期間を6ヶ月とする契約の更新を重ねてきたところ、債務者は平成6年9月1日、業績悪化を理由に同月末日限りで債権者との契約を以後更新しない旨の通知をした。これに対し債権者は、本件雇止めは合理的な理由のない不当な解雇であるとして、地位保全等の仮処分の申立てを行った。
主文
判決要旨
 債権者は、育児休業期間が終了した後、正社員として復職することを強く希望していたが、勤務時間の変更や時間短縮の要望が叶わず、正社員としての復職はできなかったため、一旦退職した上、女子正社員の再雇用制度の適用をすることにより、パート社員として雇用を続けることとなった。

 本件パート契約における時間給は、債権者の正社員当時の処遇を基準に設定され、服務規律、各種社会保険などは正社員と同じであって、債権者はパート契約後もシステムエンジニアのもとでプログラマーとして正社員とともにチームを組んで稼働し、正社員を含む研修などにも参加していた。本件パート契約は期間が明示されているものの、債権者が職務について継続かつ専門性を有していることを前提に契約するに至り、更新を重ねられてきたものであり、勤務内容、更新の際の手続きなどからしても債権者が継続雇用について高度の期待を抱くのも尤もであると認められ、債務者もこれらを十分に認識していたのであるから、期間の経過のみで当然に終了するものではなく、本件パート契約の雇止めには解雇の法理が類推され、合理的理由のない限り許されないものと解される。

 債務者は業績悪化の難局を打開するため、事務所の統廃合、残業の廃止、経費の削減、固定資産の売却、定期採用の縮小、従業員の配転などのほか、パートの雇止めなどによる合理化を進めてきた。債務者が本件雇止めの意思表示をした当時、人員の削減を含め相当の経営努力を要する状態にあり、合理化に取り組んでいたことは認められるが、債務者は、正社員であった債権者がパートタイマーになった経緯やその後において正社員に復帰する希望を有していることを十分認識していながら、パート契約は期間満了により当然終了するとの前提で、これを回避するための真摯な努力をすることなく本件パート契約の雇止めを決定したものといわざるを得ず、到底正当なものであったとはいえない。
適用法規・条文
なし
収録文献(出典)
労働判例686号90頁
その他特記事項
債務者は異議申立てを行った。