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W社パート解雇仮処分申立事件

事件の分類
解雇
事件名
W社パート解雇仮処分申立事件
事件番号
大阪地裁 − 平成12年(ヨ)第10012号
当事者
その他債権者 個人1名
その他債務者 株式会社
業種
製造業
判決・決定
決定
判決決定年月日
2000年04月17日
判決決定区分
一部認容・一部却下
事件の概要
 債務者は、建設機械その他産業機械の製作、販売等を業とする株式会社であり、債権者は、昭和57年9月から59年6月まで派遣労働者として債務者に就労し、59年7月から債務者に直接雇用され、国際営業部において主として英文タイプによる貿易関係書類作成事務を担当してきた女性である。

 債務者は、平成12年1月31日、近年の外国語文書作成用のアプリケーションソフトの使用により、英文タイプに頼る必要性が極端に減り、債権者が余剰人員になったとして、債権者に対し、パートタイマー就業規則11条7号「会社の業務の都合により、雇用の必要がなくなったとき」により、同年2月末日限り解雇する旨の意思表示をした。これに対し債権者は、本件解雇がなされた頃、期間の定めなく月曜日から金曜日まで1日6時間勤務であったところ、パートタイマー就業規則の適用はないこと、解雇に合理性がないことを主張して、従業員としての地位保全と賃金の支払いを求めた。
主文
判決要旨
 債務者は、パートタイム就業規則11条7号により本件解雇を行ったというが、同就業規則では適用対象となるパートタイマーを特定時間就業する期間雇用の従業員と定義しているのであって、債権者との雇用契約に期間の定めはないのみならず、精励手当は支給せず、賞与は支給するなど債務者自身、債権者に対して同規則所定のパートタイム従業員とは異なる処遇をしてきており、債権者が同規則が予定するパートタイム従業員に該当するといえるかには疑問がある。

 債権者は、当初は主として英文タイプによる書類作成事務が念頭に置かれていたとはいえ、その後コンピューター導入後はこれを使用した書類作成事務も担当してきており、雇用契約上、担当業務を英文タイプのみに限定するものであったとは解し難いし、債権者は、期間の定めなく15年もの間継続して雇用されているのであるから、債権者が終身雇用に対する期待を抱くのは当然であり、その期待には一応の合理性があるというべきである。

 債務者は、本件解雇をいわゆる整理解雇ではないと主張するが、本件解雇は債権者が余剰人員化したことを理由になされているのであるから、整理解雇の範疇に入れられるべきものである。そして、整理解雇の有効性を本件についてみると、収益の落ち込みから経費節減の必要が存したことは認められるし、通常の労働者とは労働条件の異なる債権者に対して、これと同程度の雇用確保の努力が要請されるとまではいい難く、国際営業部で余剰人員化している債権者を解雇の対象に選定したことも直ちに不当とはいえない。しかしながら、いかに通常の労働者と労働条件が異なるとはいえ、債権者は臨時雇いや期間雇用と異なり、期間の定めなく雇用された従業員であり、終身雇用を期待することももっともと解されるのであるから、そのような立場にあった債権者を解雇するには、債務者において、先に希望退職者を募り、債権者の配置転換を打診するなどの解雇回避のための措置をとることが要請されていたというべきであるし、手続き上も、人員整理の必要性などについて債権者に説明して納得を得るように十分協議を行う義務があったというべきである。しかるに、そのような解雇回避の措置についての検討や債権者との事前協議なされたとの事実を認めるに足りる疎明はない。そうすると、債権者が国際営業部で余剰人員化しているとの事情のみではいまだ本件解雇に合理的な理由があると認めるに足りない。
適用法規・条文
なし
収録文献(出典)
労働判例792号138頁
その他特記事項
本件は本訴に移行した。