判例データベース
Sホテルホステス解雇事件
- 事件の分類
- 解雇
- 事件名
- Sホテルホステス解雇事件
- 事件番号
- 大分地裁 − 平成元年(ヨ)第180号
- 当事者
- その他債権者 個人21名
その他債務者 株式会社 - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 決定
- 判決決定年月日
- 1989年11月01日
- 判決決定区分
- 認容
- 事件の概要
- 債権者らは、債務者に雇用され「クラブS」に勤務するホステスである。債務者は、「クラブS」が慢性的赤字体質であることからこれを閉鎖することとし、債権者らを料飲課等に配転する方針の下に労働組合と交渉した。組合は、ホステスの定年を50歳から47歳に切り下げ、これを超える年齢の者を対象とする案を債務者に伝えたが、債務者はホステス全員を配転する方針を変えず、組合の合意を得られなかったため、平成元年6月4日、ホステスの職場もしくは職種の変更には事前に組合を交えて協議する旨を定めた労働協約を廃棄する旨組合に通告し、「クラブすぎのい」の営業形態の変更やホステスの配転問題について何ら解決をみないまま、同クラブの閉鎖を決定した。一方債権者らは、これに反発し、同クラブを自主運営していたところ、同年7月、債務者は改めて同クラブを閉鎖すること、債権者らを料飲課に配転する旨の命令を発したが、債権者らがいずれもこの命令に従わなかったため、債務者は債権者らを出勤停止、自宅待機の処分をした上、同年8月27日付け書面で雇止めを行った。
これに対し債権者らは、債権者・債務者間の雇用契約はいずれも期間の定めがないものであるから、本件雇止めには解雇の法理が類推適用されるべきところ、本件雇止めには何ら合理性がなく解雇権の濫用であって無効であることを主張し、債務者の従業員たる地位にあることの確認及び賃金の支払いを求めた。 - 主文
- 1 債権者らが、いずれも平成元年10月1日以降債務者の従業員たる地位にあることを仮に定める。
2 債務者は、別表債権者氏名欄記載の各債権者に対し、それぞれ平成元年10月1日から本案判決言渡しもしくは同表定年時期欄記載の各定年時期のいずれかが到来するまで、1ヶ月につき同表認容金額欄記載の各金員を翌月10日限り仮に支払え。
3 申請費用は、債務者の負担とする。 - 判決要旨
- 債権者らの勤務年数、反復継続されてきた雇用契約、ホステス就業規則に基づく50歳定年、一定の条件下における年次有給休暇、昇給、退職慰労金の各制度の存在及び何よりも債務者が債権者らを業務命令違反など実質的解雇事由ともいうべき理由をもって本件雇止めをしていることに照らすと、本件雇用契約は雇用期間のないものと解するのが相当であると思料する。そうすれば、本件雇止めについては、解雇の法理をもってその合理性の有無を判断するのが相当である。
本件雇止めは、債務者が平成元年6月4日に決定した「クラブすぎのい」の閉鎖に伴う一連の流れの終着点において生起したものとして捉えるべきものと解するのが相当であるところ、この閉鎖決定が、営業形態の変更やホステスに対する配転等の具体的な合理化案について何ら解決を見ないままなされたものであり、解決を見なかったことについて組合や債権者らに責に帰すべき特段の事情も見出し得ない以上、債務者は、協定に違反して閉鎖決定をなしたものといわざるを得ない。そうすれば、これに続く本件業務命令も、具体的合理化案として決定された新営業形態や配置転換に基づくものではなく、単にその閉鎖を実施し、全ての債権者らホステスを強引に料飲課へ所属させようとしたに過ぎないものであるというべきであるから、協定に違反したものというべきである。そうすると、それに続く自主営業中止並びに本件業務命令違反を理由とする出勤停止及び自宅待機の各処分、ひいては自宅待機中の説明会の欠席をもって、債権者らに就労の意思なしとしてなした本件雇止めは、いずれも著しく不合理であり、社会通念上相当として是認できないというべきであるから、本件雇止めは、解雇件の濫用として無効であるといわざるを得ない。 - 適用法規・条文
- なし
- 収録文献(出典)
- 労働判例550号6頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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