判例データベース
O大学図書館事務補佐員雇止事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- O大学図書館事務補佐員雇止事件
- 事件番号
- 大阪地裁 - 昭和60年(ワ)第2097号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 国 - 業種
- 公務
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1990年11月26日
- 判決決定区分
- 棄却(控訴)
- 事件の概要
- 原告は、O大学学長より、昭和54年9月1日から同56年5月10日まで、国家公務員法上の図書館事務補佐員(時間雇用非常勤職員)として、次いで同月11日から同59年3月30日まで、同事務補佐員(日々雇用非常勤職員)として任用されてきた女性である。原告は同日以降再任用されなかったところ、(1)学長が原告を日々雇用職員として任用するに当たり付した任期の定めは国公法等に反し無効であること、(2)国立大学における日々雇用職員の任用は、季節的又は一時的に増加した業務の処理のため必要がある場合に限り、その任用継続期間は最長12ヶ月を超えてはならないとされていること、(3)原告の従事した業務内容、勤務形態その他の労働条件は一定の専門的知識、経験、習熟を必要とし、常勤職員の業務と渾然一体をなし、常勤職員のものと差異はなかったこと、(4)原告は日々雇用職員とし3年間任用されており、社会保険の適用は継続雇用として取り扱われていることから、実質上任期の定めなく任用されていたと主張した。
原告は上記の主張を踏まえて、(1)原告の任用経緯、期間、業務内容、勤務実態等に照らすと国公法に違反し任期の定めは無効であること、(2)原告の日々雇用としての期限付き任用は任用の更新により任期の定めのない任用に転化したこと、(3)任期の定めのない任用と解し得ないとしても、原告の任用関係は継続することが期待されていたというべきであることから、本件雇止めは解雇法理が類推適用されるべきところ、原告を解雇或いは雇止め
すべき相当理由はなく、原告を再任用しなかったのは権利の濫用、裁量権の濫用として無効であるとして、非常勤職員としての地位の確認と、雇用継続に対する期待権を侵害される等の精神的苦痛を強いられたことに対する慰謝料100万円を請求した。 - 主文
- ・原告の請求を棄却する。
・訴訟費用は原告の負担とする。 - 判決要旨
- 1 地位確認請求等
国公法上、一般職職員の期限付き任用は、同法59条(条件付任用)及び60条(臨時的任用)以外にも、明文の規定はないが、期限付き任用を必要とする特段の事由があり、且つ期限付き任用が同法に定める職員の身分保障の趣旨に反しない場合には許されると解するのが相当である。したがって、同法附則13条に基づく人事院規則8-14第1条、同8-12第74条1項3号、2項が規定する日々雇用非常勤職員、文部省における日々雇用非常勤職員の任用は、右の趣旨に沿う限り、国公法に違反しない。
日々雇用非常勤職員の任用が専門的知識、経験、習熟を要する恒常的職種について行われた場合、その任用は違法と解されるが、右の場合、任用行為の付款たる任期の定めのみを無効とし、任用自体は任期の定めのない任用であると解することはできない。その理由は、国公法制上、任期の定めのない非常勤職員は存在せず、又日々雇用非常勤職員の任用と任期の定めのない職員の任用と、任用権者、任用方法が異なっていること、従って、又日々雇用非常勤職員の任用権者において、付款たる任期の定めがなくても、なお任期の定めのない非常勤職員或いは常勤職員として任用したと解する余地は全くないからである。
日々雇用非常勤職員の任用が許容される場合、右任用が、任用予定期間をも超えて反復繰り返されたからといって、期限の定めのない任用に転化するとは解されない。何故ならば、日々雇用非常勤職員の任用の内容は、法律によって規定されているのであり、任用権者及び人事担当者の合理的意思解釈によって決し得るものではないからである。
原告は、任用が反復更新されたことにより、実質上、任期の定めのない任用として継続し、昭和59年4月以降も更新されることが期待されていたと主張する。しかしながら、原告の任用関係が実質的に任期の定めのない任用として継続していたと認めるに足りないのみならず、仮に原告の任用関係が実質的に任期の定めのない任用として継続していたとするならば、或いは人事担当者にそのような言動があったとするならば、それは国公法及びその他の関連法規に違反するのであるから、これを根拠とする任用継続の事実上の期待は法によって保護するに値しないといわざるを得ない。以上によると、原告の地位確認請求はその余の点について判断するまでもなく理由がない。
2 不法行為による慰謝料請求
原告は、学長が原告を日々雇用職員として再任用しなかったことにより、原告の任用継続の期待権を侵害したと主張するが、学長は原告を再任用すべき法律上の義務を負わず、又原告を再任用し得る裁量権を有する訳でもなく、原告の任用継続の期待は法の保護しない事実上の期待に過ぎない。したがって学長において原告を再任用しなかったことが不法行為に当たると認めることはできない。 - 適用法規・条文
- 国家公務員法59条、60条、附則13条
- 収録文献(出典)
- 労働判例576号45頁
- その他特記事項
- 本件は控訴された。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
大阪地裁 - 昭和60年(ワ)第2097号 | 棄却(控訴) | 1990年11月26日 |
大阪高裁 − 平成2年(ネ)第2471号 | 棄却(上告) | 1992年02月19日 |
最高裁 − 平成4年(オ)第996号 | 棄却 | 1994年07月14日 |