判例データベース
O大学図書館事務補佐員雇止上告事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- O大学図書館事務補佐員雇止上告事件
- 事件番号
- 最高裁 − 平成4年(オ)第996号
- 当事者
- 上告人 個人1名
被上告人 国 - 業種
- 公務
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1994年07月14日
- 判決決定区分
- 棄却
- 事件の概要
- 上告人(第1審原告、第2審控訴人)は、昭和54年9月にO大学附属図書館の非常勤職員として任用され、4年半にわたって任用が更新された後、昭和59年3月30日をもって被上告人(第1審被告、第2審被控訴人)から任用を打ち切られた。
上告人は、本件非常勤職員としての任用は、実質的に期限の定めのない任用に転化しているから、本件雇止めは解雇に当たるところ、解雇の正当事由はないとして、非常勤職員としての地位の確認を求めるとともに、精神的苦痛に対する慰謝料100万円を請求した。
第1審、第2審とも、国公法上任期の定めのない非常勤職員はあり得ず、任用の更新を繰り返したとしても法制上期限の定めのない任用に転化することはないとして、上告人の主張を斥けたことから、上告人が上告に及んだものである。 - 主文
- 本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。 - 判決要旨
- 上告人は、期限付き任用に係る非常勤の国家公務員である日々雇用職員、すなわち任期を1日と定め、任用予定期間内は任用権者が別段の措置をしない限り任用を日々更新し、任用予定期間が経過したときは任期満了により当然に退職する職員として任用されたものであるところ、その任用当時、上告人が配属された大阪大学附属図書館閲覧課閲覧第一掛の事務量は、正規任用に係る常勤職員のみによって処理することができる範囲を超えていたが、直ちに常勤職員の定員を増加することは実際上困難であり、同掛の業務のうち、図書の貸出し、返却図書の受領等のいわゆるカウンター業務は、特別の習熟、知識、技術又は経験を必要としない代替的事務であって、日々雇用職員によっても適正に処理することができるものであったとみることができる。このような事情の下においては、日々雇用職員として任用することを明示した上で、上告人をカウンター業務に従事させることを予定して任用したことが、職員の任用を原則として無期限とした国家公務員の趣旨に反するものとまでは解し難い。したがって、学長が上告人を日々雇用職員として任用したことを違法ということはできないとした原審の判断は、正当として是認することができる。上告人は昭和59年3月30日に任用予定期間が満了したことによって当然に退職したものとした原審の判断は、正当として是認することができる。
上告人が、任用予定期間の満了後に再び任用される権利若しくは任用を要求する権利又は再び任用されることを期待する法的権利を有するものと認めることはできないから、学長が上告人を再び任用しなかったとしても、その権利ないし法的利益が侵害されたものと解する余地はない。もっとも、任命権者が日々雇用職員に対して、任用予定期間満了後も任用を続けることを確約ないし保障するなど、右期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものと見られる行為をしたというような特別の事情がある場合には、職員がそのような誤った期待を抱いたことによる損害につき、国家賠償法に基づく賠償を認める余地があり得るとしても、原審の適法に確定した事実関係の下においては、右のような特別の事情があるということはできない。 - 適用法規・条文
- 国家公務員法59条、60条
- 収録文献(出典)
- 労働判例655号14頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
大阪地裁 - 昭和60年(ワ)第2097号 | 棄却(控訴) | 1990年11月26日 |
大阪高裁 − 平成2年(ネ)第2471号 | 棄却(上告) | 1992年02月19日 |
最高裁 − 平成4年(オ)第996号 | 棄却 | 1994年07月14日 |