判例データベース

国会議員秘書控訴事件

事件の分類
セクシュアル・ハラスメント
事件名
国会議員秘書控訴事件
事件番号
東京高裁 - 平成9年(ネ)第5950号
当事者
控訴人個人1名

被控訴人個人1名
業種
公務
判決・決定
判決
判決決定年月日
1998年08月25日
判決決定区分
棄却(上告)
事件の概要
 控訴人(第1審甲事件被告・乙事件原告)は参議院議員であり、被控訴人(第1審甲事件原告・乙事件被告)は控訴人の議員会館で勤務する女性事務員である。平成7年2月20日、控訴人は事務所において被控訴人に抱きつき、キスするなどの猥褻行為に及び、その直後被控訴人は退職届を提出した。

 被控訴人は、控訴人の猥褻行為によって貞操の危機に晒され、円満な家庭も脅かされ、多大な精神的苦痛を受けたほか、退職に追い込まれたとして、控訴人に対し慰謝料等880万円を請求した(甲事件)。一方、控訴人は被控訴人及びその夫の虚偽の発表によって、週刊誌に控訴人が猥褻行為を行ったかのような記事が掲載され、国会議員としての社会的信用を著しく傷つけられ、精神的苦痛を受けたとして、被控訴人及び夫に対して、1000万円の損害賠償を請求した(乙事件)。
 第1審では、被控訴人の供述に係る猥褻行為があったものと認定した上で、控訴人に対し慰謝料160万円、弁護士費用20万円の支払いを命じるとともに、控訴人の名誉毀損の請求を棄却したことから、控訴人はこれを不服として控訴した。
主文
1 控訴人の請求を棄却する。
2 訴訟費用は控訴人の負担とする。
判決要旨
 控訴人は、被控訴人に対し、原判決通り慰謝料を支払うべきものであり、被控訴人らの
控訴人に対する名誉毀損は認められないものと判断する。
 控訴人は、被控訴人らの供述は信用できない旨主張するが、その主張に係る(1)セクハラ行為があった時、控訴人が事務所の鍵をかけに行った際被控訴人はすぐに逃げ出さなかったこと、(2)被控訴人は控訴人が事務所のどこを通って鍵をかけに行ったか覚えていないこと、(3)被控訴人は乳房を噛まれた時と控訴人に抱き寄せられた時の前後関係が曖昧であることについては、被控訴人にとって控訴人は雇用者であり、突然抱きつかれ、キスされたことに混乱し、呆然となったことからみれば、当然のことである。また、被控訴人がセクハラ行為のあった後、M議員と会った旨供述したという記憶は明確で、嘘をつく実益もないから、真実であると認められる。その他控訴人及び控訴人側の証人の供述は信用できないから、原判決は相当で、本件控訴はいずれも理由がない。
適用法規・条文
なし
収録文献(出典)
その他特記事項
本件は上告されたが、棄却された(最高裁 平成10(オ)2056号)。