判例データベース
K学園常勤講師雇止事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- K学園常勤講師雇止事件
- 事件番号
- 神戸地裁 − 昭和60年(ワ)第1755号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 学校法人 - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1987年11月05日
- 判決決定区分
- 棄却(控訴)
- 事件の概要
- 被告は、K学園高校を設置する学校法人であり、原告は、昭和59年4月、被告に1年間の期限付で社会担当教諭として採用された者である。
被告は、教員にも服装の端正化を要請し、ネクタイの着用を徹底してきたが、原告は被告理事長、教頭らの指示にもかかわらず、度々ネクタイの着用を怠り、特に各中学校の教員に対する入試説明会の開催に当たり、事前に校長から入試説明会の重要性及び当日の服装についての注意をされたにもかかわらず、原告はただ一人ジャンパーを着て出勤した。また、原告は理事長朝礼を無断欠席したり、無断遅刻したりしたほか、求められた「過去及び将来の神戸弘陵学園高校の教育の在り方」と題するレポートの提出を怠った。更に原告は、全日本バスケットボール選手権大会の役員奉仕のため出張伺いを提出したが、大会の性格上高校に直接関係ないこと、始業式に出席する必要があることから、事務局が校長に相談するよう求めたにもかかわらず、無断で外出し、同日の勤務を放棄した。
被告は昭和60年3月18日、原告に対し同月31日をもって雇用を終了する旨通知したところ、原告は、右雇用契約終了通知は正当な理由なく無効であるから、原告は依然として本校教諭の地位を有しているとして、地位確認と賃金の支払いを請求した。 - 主文
- 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 - 判決要旨
- 原告は昭和59年3月1日の第2回面接の際、被告理事長から身分は常勤講師とし、契約期間は一応同年4月1日から1年とする旨説明されるとともに、口頭で採用したい旨の申し出を受けたことから、非常勤講師として内定を受けていた他校への就業を辞退した上で、同年5月中旬、常勤講師として1年の期限付きで採用された旨記載した契約書に署名捺印したことが認められる。以上の事実によれば、本件契約は同年3月5日に、同年4月1日の始期付きで、かつ契約期間を1年として成立したものとみるべきである。
ところで期限付きの雇用契約は、再三更新されるなどして期間の定めのない契約に転化したものと認められるなど特段の事情のない限り、期限の経過とともに当然に終了するものと解されるところ、本件契約にはこのような特段の事情は認められない。すなわち、被告が期限付き契約を採用した理由は、本校が新設校で一時に大量の教員を採用しなければならない反面、教員の採用は慎重に行わなければならないという事情にあったためであり、また期間を1年にしたのは、学校教育は行事も含め1年単位で行われるから、各教員にひととおりの経験をしてもらった上で、その適性を判断しようという趣旨であることが認められる。そして、本件契約は、これまで反覆更新されたことはないし、本校が新設校のため1年間の期限付き常勤講師を経れば必ず教諭に昇格する慣例が存在していたわけでもない。更に、被告は長年の教員の経験を有する者については当初から期間の定めのない契約を締結しており、昭和59年度採用の常勤講師を同60年度に再雇用するに当たり、同年4月被告から同教員らに教諭の辞令を交付していることが認められるから、被告は期限付き常勤講師と雇用期間の定めのない教諭を明確に区別し、期限付き常勤講師については、一応1年間採用するものの、この期間は教員としての適性を判断するためのものであって、教諭としての再雇用については未確定にしていたのであり、再雇用を前提にしていたとは認められない。他に原告が契約は当然に更新されると期待し得る事情もないから、本件契約は期間満了とともに終了したものと解さざるを得ない。 - 適用法規・条文
- 収録文献(出典)
- 労働判例506号23頁
- その他特記事項
- 本件は控訴された。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
神戸地裁 − 昭和60年(ワ)第1755号 | 棄却(控訴) | 1987年11月05日 |
大阪高裁 | 棄却(上告) | 1989年03月01日 |
最高裁 − 平成元年(オ)第854号 | 破棄差戻し | 1990年06月05日 |