判例データベース
Y運輸パート社員雇止事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- Y運輸パート社員雇止事件
- 事件番号
- 東京地裁 − 平成18年(ワ)第10223号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 Y運輸株式会社 - 業種
- 運輸・通信業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2007年01月29日
- 判決決定区分
- 棄却(確定)
- 事件の概要
- 被告は、貨物自動車運送等を業とする株式会社であり、原告は平成16年11月4日から同年12月31日までのアルバイトとして被告に雇用された者である。
その後原告は、平成17年1月16日に同年5月15日までのパート社員として被告に雇用され、原・被告間の雇用契約(本件雇用契約)は、引き続き同年8月16日まで、同年11月15日まで、平成18年5月15日まで、それぞれ更新された。本件雇用契約においては、標準の勤務時間は午後10時から翌朝6時まで又は午後11時から翌朝7時までとされ、休日は週2回又は3回とされていた。
原告は、平成14年12月6日、A社に雇用され、勤務時間は1日6時間で出勤日は週6日とされていた。一方被告は、B社との間で労働者派遣基本契約を締結し、B社から労働者の派遣を受けており、原告は、平成17年9月以降、B社との労働者派遣契約に基づき、同社から被告に週2日・1日7時間の条件で派遣されるようになった。
被告は、平成18年2月6日、原告に対し、二重、三重雇用に基づく過度の長時間労働により健康及び安全が損なわれるおそれがあるとして、次回の再契約を行わない旨通告し、同月27日、書面で契約更新しない旨通知した。これに対し原告は、被告に対し本件雇止めに異議を唱える申立書を送付したが、被告は雇止めを撤回せず、同年5月16日以降は派遣としても就労しないように要請したため、原告は本件雇用契約は実質的に期間の定めのない契約となっていること、仮にそうでないとしても、本件雇止めは解雇権の濫用に当たるから無効であることなどを主張し、従業員としての地位の確認と賃金の支払い、被告管理職から受けた侮辱に対する慰謝料等を請求した。 - 主文
- 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 - 判決要旨
- 本件雇用契約の期間は通して1年4ヶ月で、更新回数も3回(アルバイト契約を含めても約1年7ヶ月、更新4回)にとどまっており、契約更新の際にはいずれも契約期間を明示した契約書が作成され、原告と被告が記名・押印をしていること、平成17年8月16日と同年11月16日の更新の際の契約書には、「更新する場合があり得る」旨記載されていることが認められる。このような事情からすれば、本件雇用契約が期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態にあったと認めることはできない。
また、原告を採用するに際し、被告が原告に対し、定年まで働く環境があること、パート社員からフルタイマー社員への登用制度があることを説明したことは事実だが、上記の事情からすれば、雇用継続に対する原告の期待利益に合理性があったと認めることもできない。そうすると、本件雇止めに解雇権濫用法理が類推適用される余地はないから、本件雇用契約は期間満了により終了したと認めることができる。
原告はA社での就労、本件雇用契約及び本件派遣契約に基づく就労により、1ヶ月350時間にも及ぶ長時間労働をしていたこと、被告による労働時間短縮の要求に応じなかったことが認められる。そしてこのような長時間労働は、「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」を大幅に上回っており、このような長時間労働を継続すれば、原告が健康を害し、被告の職業上において何らかの労災事故に及ぶ可能性があることも否定できない。そうすると、被告が労働時間を短縮するように求めたにもかかわらず、原告がこれを受け入れずに長時間労働を継続したことは、就業規則の解雇事由「企業理念、会社ルールを逸脱し、会社の信用を失墜させたとき」に該当すると認めることができる。したがって、仮に本件雇止めに解雇権濫用法理が類推適用されるべきであると解したとしても、本件雇止めが権利の濫用に当たると認めることはできない。
被告が、平成16年11月1日、B社との間で、労働者派遣基本契約を締結して、B社に対して個別に労働者の派遣を依頼し、B社が被告に対して労働者を派遣していたこと、原告は平成17年9月25日、B社と本件派遣契約を締結し、同社から被告に派遣されたことは事実である。そうすると、本件派遣契約に関しては、原告と被告との間に直接の契約関係は存しないのであるから、そもそも原告が被告に対して直接就労を求める根拠はない。また、原告は人事総務課長などから侮辱されたとも主張するが、その内容は明らかでないし、そのような事情を認めるに足りる的確な証拠はない。 - 適用法規・条文
- なし
- 収録文献(出典)
- 労働判例939号89頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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