判例データベース
市立小・中学校図書館非常勤嘱託員雇止控訴事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- 市立小・中学校図書館非常勤嘱託員雇止控訴事件
- 事件番号
- 福岡高裁 − 昭和51年(ネ)第294号
- 当事者
- 控訴人個人3名 A、B、C
被控訴人北九州市 - 業種
- 公務
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1980年03月28日
- 判決決定区分
- 棄却(確定)
- 事件の概要
- 昭和38年の5市合併後、同年10月から市立小・中学校で学校図書事務の嘱託職員として任用されていた控訴人(第1審申請人)は、1年ごとの嘱託契約の更新を経た後、被控訴人(第1審被申請人)から、昭和46年3月、高齢を理由に同年7月31日までとする嘱託契約の更新を受けた。その後被控訴人は労組との折衝などを経て、控訴人らに対し、昭和47年1月10日まで嘱託する旨の発令を行い、同日以降嘱託発令を行わなかった。これに対し控訴人らは、自分達は任用期間の定めのない一般職の職員であり、本件再任用拒否は法令の規定に基づかない免職に当たり無効であるとして、嘱託職員としての地位の保全と賃金の支払いを求めた。
第1審では、実体審理を行った上で、控訴人らの嘱託期間は昭和47年1月10日に終了したとして控訴人らの主張を斥けたが、他方本件仮処分申請は、行政事件訴訟法44条に抵触して許されず、実体判断の必要がないかの問題が存するとの指摘も併せて行った。 - 主文
- 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 - 判決要旨
- 第1に、控訴人らは被控訴人から昭和47年1月10日限り免職する旨の意思表示を受けたが、この免職の意思表示は無効であるから、控訴人らは未だその地位にあるとして、被控訴人の職員たる地位にあることを仮に定める旨の仮処分を求めるというのであるから、結局右免職処分の意思表示の効力を一時停止することを求めることに帰着する。ところで行政事件訴訟法第44条は「行政庁の処分その他公権力の行使については、民事訴訟法に規定する仮処分をすることはできない。」と規定し、右免職の意思表示は行政庁の処分に当たると解されるから、かかる内容の仮処分は右法条からして許されないものといわなければならない。また、一面、控訴人らが被控訴人の職員たる地位を仮に定めることは、裁判所が新たな行政行為を新たにすることを意味し、右法条はかかる法律状態の形成をなす仮処分も排除する趣旨と解されるから、この点からしてもかかる内容の仮処分は許されないといわなければならない。
第2に、控訴人らは、控訴人らと被控訴人との間が私法関係であるとし、それを前提に第1の理由をもって控訴人らが被控訴人の職員たる地位を有することを仮に定める旨の仮処分を求めるというのであるが、一般に地方公共団体が私法上の雇用契約を締結することはできないことは明らかである。
第3に、控訴人らの金員支払いを求める仮処分の申請は、控訴人らが被控訴人の職員たる地位を有することを仮に定められることが前提であるところ、その前提の認められないことは前説示のとおりであるから、このような仮処分はその実質において給与請求権の消滅という免職処分の効果の一部を停止することになるから、行政事件訴訟法44条に抵触し許されないものといわなければならない。以上のとおりで、本件仮処分の申請は本案の審理に進むまでもなく、不適法として却下を免れない。 - 適用法規・条文
- 行政事件訴訟法44条
- 収録文献(出典)
- 判例時報974号130頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
福岡地裁小倉支部 − 昭和47年(ヨ)第161号 | 却下(控訴) | 1976年03月29日 |
福岡高裁 − 昭和51年(ネ)第294号 | 棄却(確定) | 1980年03月28日 |