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A保育園保母解雇上告事件

事件の分類
解雇
事件名
A保育園保母解雇上告事件
事件番号
最高裁 - 昭和55年(オ)第103号
当事者
上告人 社会福祉法人
被上告人 個人1名
業種
サービス業
判決・決定
判決
判決決定年月日
1983年10月27日
判決決定区分
棄却
事件の概要
 上告人(第1審被告、第2審控訴人・附帯被控訴人)は社会福祉法人で、小倉においてA幼稚園を経営しており、被上告人(第1審原告、第2審被控訴人・附帯控訴人)は同幼稚園の保母であった女性である。

 上告人はA幼稚園の園児が減少したことから、保母の定員を削減し、昭和51年3月31日をもって、被上告人ら2名を解雇した。これに対し被上告人は、上告人が解雇の必要性について説明し、理解を求める努力を行わず、希望退職の募集も行うことなく解雇6日前に突然解雇通告をしたことは解雇権の濫用に当たるとして、解雇の無効と賃金の支払いを請求した。
 第1審、第2審とも、本件解雇を無効と判断したため、上告人がこれを不服として上告に及んだものである。
主文
本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。
判決要旨
 上告人は、(1)期間の定めのない労働契約においては、使用者は民法627条1項により解雇の事由を有するものであり、その解雇権の行使については労働基準法19条、20条の制限に服するのみであって、権利濫用の一般法理によって無効とされるのはあくまで例外的認定されなければならないこと、(2)したがって原判決が、本件解雇について必要性を認めながら、使用者たる上告人の裁量を無視して解雇権の濫用と決め付けたことは、法令の解釈・適用を誤ったものであること、(3)原判決は、上告人が切迫した状態の中で、A保育園の設立趣意に沿わない職員及び勤務状態の良くない職員を基準として被解雇者の選定を行った点について何ら判断しておらず、理由不備の違法があること、(4)このことは、原判決が、被上告人解雇後ほぼ1年以内に2名の保母が退職した事実のみを取り上げ、その退職理由が解雇当時全く予想し得ない事態であったことを無視し、単に形式的に退職者募集の手続きがなされなかったことをもって、権利濫用と認定していることからも明らかであることとして、原判決の破棄を要求する。
 しかし、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、上告人において、園児の減少に対応し保母2名を人員整理することを決定すると同時に、被上告人ほか1名の保母を指名解雇して右人員整理を実施することを決定し、事前に、被上告人を含む上告人の職員に対し、人員整理がやむを得ない事情などを説明して協力を求める努力を一切せず、かつ、希望退職者募集の措置を採ることもなく、解雇日の6日前になって突如通告した本件解雇は、労使間の信義則反し、解雇権の濫用として無効である、とした原審の判断は是認することができないものではなく、原判決に所論の違法はない。論旨はひっきょう、右判示と異なる見解に立って原判決を非難するものであって、採用することはできない。
適用法規・条文
なし
収録文献(出典)
労働判例427号63頁
その他特記事項