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O中央郵便局職場ヘルパー雇止事件

事件の分類
雇止め
事件名
O中央郵便局職場ヘルパー雇止事件
事件番号
大阪地裁 - 昭和59年(ワ)第4252号
当事者
原告 個人1名
被告 国
業種
公務
判決・決定
判決
判決決定年月日
1989年02月27日
判決決定区分
棄却
事件の概要
 原告は、昭和47年6月29日にO中央郵便局に職場ヘルパー(外勤職員の制服の繕い、休憩室の清掃、湯茶の用意、外勤職員の生活相談等に従事)を委託された女性である。

 大阪中央郵便局長は昭和58年4月、近畿郵政局長から職場ヘルパーの配置を2名に減ずる旨の通達を受け、3名中2名とのみ契約することは困難であったため、全員と再契約しないこと、ただヘルパーの生活を考慮して6ヶ月間に限り職場ヘルパー委任契約を締結することを決定した。そして同郵便局窓口集配部長は同年4月11日、原告ら3名と6ヶ月間の委託契約を締結し、同年9月30日をもって原告との契約は終了した。
 原告は、(1)労働契約の締結は国家公務員法に違反しないこと、(2)仮に同法により私法上の労働契約の締結が許されないとしても、被告は脱法行為として委託契約の形式によって労働契約を締結したのであるから、労働契約の成立を否認することは信義則に反すること、(3)本件が労働契約と認められないとしても類似の無名契約として有効に成立したというべきであることを主張し、本件契約は反復更新されて約11年間にわたり継続されてきたのであるから期限の定めのないものに転化したとして、解雇に関する法理の適用を求め、解雇に関する正当な理由はないとして、非常勤職員、従業員又は無名契約上の地位の確認と賃金の支払いを請求した。これに対し被告は、職場ヘルパーの業務は被告の指揮命令に親しまず、ヘルパーの創意工夫に基づいた裁量に強く依存しており、原告との委託契約は労務自体を目的とした労働契約ではなく、一定の事務処理の委託を目的とした準委任契約であること、原告を任期の定めのない非常勤職員として任用することは法律上あり得ないことを主張して争った。
主文
原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。
判決要旨
 郵便等の事業を行う国の経営する企業に勤務する職員は一般職の国家公務員たる身分を有し、その勤務関係は公法関係である。そして一般職に属する非常勤職員については人事院規則による特例はあるものの、その勤務関係は基本的に公法関係であると解される。

 郵政省における非常勤職員の任期は1日であり、ただ予定雇用期間2ヶ月の範囲で任期が自動的に更新されるに止まり、予定雇用期間の満了日において職員は当然退職となるほか、任命権者が任期を更新しない旨の意思表示を行った場合は、その日の勤務終了をもって当然退職となるのである。したがって、法制上郵政省においては任期の定めのない非常勤職員は存せず、かつ、非常勤職員の任期は自動更新されたときでも2ヶ月を超えることはない。

 被告は昭和47年6月29日原告を職場ヘルパーとして用いるに当たり、原告から期間を9ヶ月と定めた職場ヘルパー委託請求を徴しているのであるから、被告において原告を任期の定めのない非常勤職員として任用したものでないことは明らかである。
 政府は、一般職又は特別職以外の勤務者を置いてその勤務に対し給与を支払ってはならず、これに違反した者には刑罰が科せられる。これは、法定の任用行為によらないで、国の指揮命令の下に公務に従事する職員を採用することを禁止し、右任用行為によらない職員の採用を無効にする趣旨と解される。そうすると、原被告間に労働契約が有効に成立したと認めるべき余地はない。また原告主張にかかる労働契約類似の無名契約もその内容は労働契約と同一であって、有効な成立の余地はない。したがって、原告の右主張を前提とする第2次、第3次請求もその余の点について判断するまでもなく失当である。
適用法規・条文
国家公務員法2条2項・4項、附則13条
国営企業労働関係法2条2号
収録文献(出典)
労働判例535号33頁
その他特記事項
本件は控訴された。