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法律事務所女性事務員解雇事件

事件の分類
解雇
事件名
法律事務所女性事務員解雇事件
事件番号
名古屋地裁 − 平成15年(ワ)第2455号
当事者
原告個人1名

被告個人1名
業種
サービス業
判決・決定
判決
判決決定年月日
2004年06月15日
判決決定区分
棄却(控訴)
事件の概要
 被告は、昭和62年に弁護士登録し、平成4年4月に法律事務所を開設した弁護士であり、原告は同事務所開設から10年以上勤務した元事務員の女性である。

 原告は、被告に対し一般論として結婚しても仕事は続けられるか尋ねたところ、被告は構わない旨回答した。平成14年11月頃、原告は被告に対し弁護士Aと結婚する予定であると伝え、その際結婚後も勤務を続けても、退職してもどちらでも構わない旨伝えた。被告は、原告の結婚相手が同じ名古屋弁護士会に所属し、同じ市内に事務所を置く弁護士である以上、事件の処理に当たり、秘密保持、依頼者との信頼関係等の観点から問題が多すぎると判断し、原告に対して引継ぎ等も考慮して平成15年3月末をもって退職するよう提案した。これに対し原告は、破産事件が概ね目処がついたとして了解の旨回答した。
 被告は原告との話合いの後、新事務員を年内から勤務してもらうこととし、その旨原告に伝えたが、原告は年内から勤務することに不快感を示した。新事務員は平成14年12月11日に被告事務所に呼ばれ、原告らに紹介されたが、同日別の会社に決まったとして勤務を断る旨の連絡した。原告は平成15年1月、被告に対しなぜ辞めなければならないのか追及したところ、被告は秘密保持のため同年3月31日で辞めるよう答えた。その後原告は有給休暇の日数を確認し、3月は5日間のみ出勤し、被告に対し退職金振込みのための銀行口座を送信し、同年5月6日、退職金146万5980円を受領した。原告は同年6月11日、本件解雇は解雇理由も示されず、合理的理由もないものであり、不法行為に当たるとして、逸失利益として6ヶ月分賃金相当額139万8000円及び賞与相当額46万6000円並びに慰謝料300万円を請求した。
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
判決要旨
 原告は、平成14年12月に行われた新事務員の募集について、被告に格別の抗議をしていないこと、原告は平成15年1月28日に退職について異議を唱える発言をしているが、最終的には同年3初31日の退職を前提に残りの有給休暇の日数を確認していること、それまで余り有給休暇を取らなかった原告が、自ら平成15年3月の有給休暇の予定表を作成し、同月は5日間出勤するだけで、20日を最後に出勤しなくなったこと、原告は同月31日に、被告に対し、退職金の振込先の銀行口座を記載した書面を送信し、同年5月6日、退職金を受け取っていること、原告は配偶者が弁護士であって被告との交渉も比較的容易であるにもかかわらず、退職の話が出た平成14年11月以降本件訴訟が提起された平成15年6月に至るまで、被告に対し、明示的に事務員としての地位を保全する行動に出ていないことなどに照らすと、原告は、平成14年11月に被告との間で雇用契約を合意解約し、被告との雇用契約が平成15年3月31日に終了することを前提として行動していたものと認められる。
 以上の事実に照らすと、原告の上記主張に沿う証拠は信用することができず、他に原告の上記主張を認めるに足りる的確な証拠はない。従って、原告の上記主張を採用することはできない。
適用法規・条文
なし
収録文献(出典)
労働判例909号72頁
その他特記事項
本件は控訴された。