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I銀行ロビーコンパニオン雇止事件

事件の分類
雇止め
事件名
I銀行ロビーコンパニオン雇止事件
事件番号
大阪地裁 - 昭和60年(ワ)第134号
当事者
原告 個人1名
被告 株式会社(銀行)
業種
金融・保険業
判決・決定
判決
判決決定年月日
1985年06月25日
判決決定区分
棄却
事件の概要
 原告は、昭和59年10月2日、被告との間に雇用期間を同日から同年11月1日までとする契約で雇用された女性である。原告は被告との間で、雇用期間を同年11月2日から12月31日までとする雇用契約を締結し、引き続き被告に雇用されたが、被告は同年11月26日、適性なしとの判断から、原告に対し雇用期間満了後雇用契約を締結しない旨の雇止めの意思表示を行った。
 これに対し原告は、採用面接の際、被告から雇用期間は形式的なものであり、必ず1年以上勤めて欲しい旨の申し出があったから、少なくとも1年以上勤務する予定で本件契約を締結したと主張し、本件雇止めによって、家族、親族、知人らに対し惨めな思いをさせられ、もって著しく人格権を侵害され、1年以上賃金を取得し得る期待権も侵害されたとして、その被った精神的苦痛に対して600万円の慰謝料を請求した。
主文
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
判決要旨
 原告は、被告から1年以上勤務するようにとの申し出があったので、少なくとも1年以上は勤務する予定で被告に雇用されたものであり、本件契約の各雇用期間の定めはいずれも形式的にすぎなかったとの事実を前提に、被告の雇止めにより原告の人格権が侵害され、また1年以上雇用されて賃金を取得し得るという雇用契約上の期待権も侵害された旨主張するけれども、原告本人の供述は証人の証言と対比してにわかに措信できない。却って、被告が右雇止めの措置を採るに至った経緯と理由は、被告の主張するとおり、(1)顧客に対する応対、誘導の仕方、協調性、積極性等の勤務状態が他の者より劣ること、(2)原告は被告総務部長及び頭取に対し、被告の従業員や得意先の実名を挙げて、「組織、産業スパイ、企業破壊分子体、共産党思想、過激派グループ、マフィア、シンジケート」である旨の投書を行ったこと、(3)原告は業務日誌に、マフィア独特の騒音、内部に産業スパイがいる等常軌を逸した記載をしていること、(4)数名の顧客より被告に対し、原告がロビーコンパニオンをしているのであれば、被告との取引を止めるとの申し出があったこと等によるものであることが優に窺われるところであって、右雇止めの措置が、何ら原告の人格権、期待権を侵害するものとは認められない。
適用法規・条文
なし
収録文献(出典)
労働判例461号92頁
その他特記事項