判例データベース
K社雇止事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- K社雇止事件
- 事件番号
- 京都地裁 − 昭和61年(ワ)第2010号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 株式会社 - 業種
- 製造業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1988年04月06日
- 判決決定区分
- 一部認容・一部棄却
- 事件の概要
- 被告は生コンクリート及びセメント二次製品の製造・販売等を行っている株式会社であり、原告は昭和57年1月16日に被告に雇用され、試験作業及び試験事務等の仕事に従事してきた女性である。雇用契約締結当初は雇用期間について何ら話合いはなかったが、同年4月頃被告工場長は原告に対し、雇用期間を昭和57年1月18日から昭和58年1月17日までの1年間とする臨時雇用契約書を提示し、事務手続きの形式を整えるだけであり、1年で辞めさせるものではない旨答えたので、原告はこれに署名した。
昭和59年8月1日、工場長は原告に対し、雇用期間を同年1月18日から昭和60年1月17日までの1年間とする雇用契約書を提示し、従前と同様の説明をして原告に署名させた。原告はその後右契約書に疑問を感じ、組合を通じ右契約の撤回を被告に申し入れた。被告代表取締役は昭和60年12月20日頃、原告に対し、雇用期間を同年1月18日から昭和61年1月17日までの1年間とする雇用契約書を提示し、署名を求めたが、原告がこれに署名しなかったところ、被告は昭和60年12月23日原告に対し、原告との雇用契約は昭和61年1月17日で満了するが、同月31日で退職してもらう旨の書面を手渡し、同年2月1日以降の原告の就労を拒否した。
これに対し原告は、被告は原告に対し就労時間及び退職金の点を除いて全て就業規則、給与規程の適用をしていたこと、原告が従事する試験係は業務が多く人手不足であり、解雇の必要性はないこと、本件解雇は原告が被告の嫌悪する組合の組合員であることを理由とする不当労働行為に当たることを主張し、被告との間の雇用関係の存在と賃金の支払いを請求した。 - 主文
- 1 原告・被告間に、雇用契約関係が存在することを確認する。
2 被告は原告に対し、昭和61年2月25日限り金6万4880円及び昭和61年3月25日から毎月25日限り月額金9万9499円の割合による金員を支払え。
3 その余の原告の請求を棄却する。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
5 この判決は第2項に限り仮に執行することができる。 - 判決要旨
- 原告・被告間には雇用期間を1年間とする臨時雇用契約書が2通交わされているが、原告が被告に就職する際には雇用期間については何らの合意もなかったこと、右2通の臨時雇用契約書の作成時期は、1回目は就職後3ヶ月も後の時期であり、2回目は雇用期間を1年とした場合の更新時期から7ヶ月も経過した後であること、右契約書を交わすとき、工場長は契約書は形式的なものであることを強調し、この契約書で雇用期間に変更が生じるものではないかのような説明をしたことが、それぞれ認められ、これらの点を総合すれば、原告被告間に雇用期間を1年間とする雇用契約の合意が成立したと認めることは困難である。
なお、仮に原告被告間に雇用期間を1年間とする合意があったとしても、右認定の各点に加え、原告が就職した後、1年毎の更新を行うべき時期には更新手続きは全く行われず、原告は退職の話もなく3年間被告で働いてきたこと、原告の労働時間及び賃金体系は正従業員と異なるが、その仕事の内容は季節的なものではなく被告にとって欠くことのできない作業であったことなどの点を併せ考えれば、原告被告の雇用契約における意思は、いずれかから格別の意思表示がなければ当然に更新されるべき雇用契約を締結する意思であったというべきである。そして、このような雇用契約においては、期間満了を理由とする雇止めは実質において期間の定めのない雇用契約における解雇の意思表示に当たるから、解雇に関する法理を類推適用するべきである。被告の営業成績は必ずしも好調とはいえないことが認められ、被告はこの点を解雇事由として主張するかのようであるが、そのことだけで原告の解雇を正当と解するには足りず、その他原告の解雇を正当とするに足りる主張はない。 - 適用法規・条文
- なし
- 収録文献(出典)
- 労働判例518号48頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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