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I社パートタイマー雇止事件

事件の分類
雇止め
事件名
I社パートタイマー雇止事件
事件番号
大阪地裁 − 平成9年(ヨ)第1656号
当事者
その他債権者 個人1名
その他債務者 株式会社
業種
卸売・小売業・飲食店
判決・決定
決定
判決決定年月日
1997年10月16日
判決決定区分
認容
事件の概要
 債権者は、昭和59年11月、債務者が属する企業グループの別会社に雇用期間の定めのない常勤パートとして雇用され、平成5年3月に債務者に転属となった者である。債権者は平成4年7月から契約期間1年、6月1日更新の雇用契約を締結し、平成8年7月21日、企業グループとの間で、契約期間同年7月11日からの6ヶ月間、就業年齢が原則50歳まで、本人の業務内容、勤務成績等により契約延長もあり得る等を内容とする雇用契約を締結したところ、平成8年12月17日、債務者から平成9年7月11日以降は契約しないとの通知を受けた。
 これに対し債権者は、債務者との間の雇用契約は実質的には期間の定めのない契約であるから、その雇止めは解雇に当たり、合理性が必要となるところ、解雇を合理的とする理由はないから、本件雇止めは解雇権の濫用として無効であるとして、従業員としての地位保全の仮処分命令を申し立てた。
主文
判決要旨
 債権者は、当初Iグループとの間で期間の定めのない雇用契約を締結し、その後Iグループとの間で期間の定めのある各雇用契約書を作成しているが、期間の定めのない労働者としての地位を有しながら、数年も経てから、特別の事情もないのに期間1年以内という雇用契約に変更するとは考えられない。しかも債権者が、右各雇用契約書を作成したときの年齢が50歳前後であったことも考慮するとなおさらである。そして、債権者に期間の定めのある契約に変更するような、例えば従前より有利な条件の提示があったとか、仕事上のミスにより雇用主側の要求に応ぜざるを得なかったなどの事情は認められなかったから、右各雇用契約書の期間制限は格別の意味を持たず、右各雇用契約書にかかわらず、債権者は期間の定めのない雇用契約上の地位を有すると考えるのが相当である。

 債権者と債務者との雇用契約は期間の定めのない契約であるから、債務者の債権者に対する雇止めは解雇の意思表示であり、解雇権濫用禁止の法理の適用がある。債務者の就業規則には、成績不良で成業の見込みがないときには解職できるとあるが、解雇が正当とされるためには、単に形式的に右事由があるだけでは足りず、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合に当たらないことが必要である。
 債務者を含めたIグループ全体の経常利益が減少して、より効率的経営を迫られていたこと、達算チームの仕事が組織合理化により不要となったこと、当日配送を止め、翌日配送としたため債権者の従事していた昼間のピッキングの仕事が減少することが予想されたことが認められるが、一方、債権者は長くピッキングの仕事をしてきたし、Iグループ全体を見た場合には、未だに昼間のピッキングのための女子長期パートを募集していて、債務者を含めたIグループ内で必要に応じて配置換えできる状況にあるなどの事実が認められ、これらも総合すると、債務者には債権者を整理解雇するほどの合理的理由は認め難い。以上から、債務者の債権者に対する雇止めは、解雇権の濫用に当たり無効である。
適用法規・条文
なし
収録文献(出典)
平成10年労働関係判例命令要旨集
その他特記事項