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米軍センターウエイトレス解雇事件
- 事件の分類
- 解雇
- 事件名
- 米軍センターウエイトレス解雇事件
- 事件番号
- 東京地裁 − 平成12年(ワ)第24328号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 米軍センター - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2002年12月10日
- 判決決定区分
- 棄却(確定)
- 事件の概要
- 原告は、定住者の在留資格を有するネパール国籍の女性であり、平成8年10月28日付けで在日米軍施設のホテルである被告米軍センターのウエイトレスとして雇用され、その後3ヶ月ごとに数回契約を更新した後、平成10年7月1日に常用従業員となった。
原告は、直接の上司Uによるメニューテストの強要や休暇申請の拒否、年休の申請不承認等の嫌がらせにより神経性うつ病になったとして、治療のため平成11年10月1日から傷病休暇を取得したが、職場復帰は可能となった平成12年2月7日から14日以上にわたり無許可欠勤した。被告は、同年2月22日付けで、原告に対し「職場放棄」を理由に、解雇の措置が発議されたことを通知し、同年3月30日付で、原告に対し同年4月3日限りで解雇するとの意思表示をしたことから、原告は労働契約上の地位の確認等を請求した。 - 主文
- 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 - 判決要旨
- 1 いじめや嫌がらせの有無
Uは、平成9年5月24日、原告から5日間の休暇申請を受けた際、原告に対し業務上の必要性を理由に認められないと説明するとともに、申請日から余り離れていない他の5日間に休暇を取るよう提案したが、原告は納得しなかった。Uは業務上の必要性に基づき原告の休暇を申請しなかったのであり、恣意的に休暇の申請を拒否したとはいえないから、これをもって原告に対するいじめや嫌がらせと評価することはできない。
Uは、Dが飲食部長に就任した際、業務を円滑・適正に行うため、原告に対し、従業員は所定の指揮命令系統に従わなければならないと注意・指導したが、これは部下を管理監督する立場にあるマネージャーの行うべき職務であって、特に非難されるべき行為とはいえないから、これをもって原告に対するいじめや嫌がらせと評価することはできない。
原告は、平成11年6月25日、年休予定表に記載された日と異なる日に年休を申請したため、Uは原告に対し、業務上の必要から申請通りの年休は認められないと伝えたが、これは業務上の必要性に基づくものであるから、いじめや嫌がらせに当たるとはいえない。
原告は、平成11年8月当時、ディナーの時間帯でウエイトレスとして勤務していたから、原告に対するメニューテストの実施は、業務上の必要性に基づくものであった。事前にテストの実施は通知されており、原告には十分な準備期間があったにもかかわらず合格しなかったのであるから、Uが原告に再受験を求めたことには合理的な理由がある。2回目の問題は1回目と同じであり、3回目のものは質問数が大幅に減らされており、回を追うごとにテストの内容が容易になったことからすると、テストを受けることが原告に苦痛や困難を強いるものとはいえないから、Uが原告に対しメニューテストの再受験を指示したことは、いじめや嫌がらせに当たるとはいえない。
Uは、平成11年8月30日、Dの了解を得た上で、原告に対し、休暇を取る前に職務遂行上必要なディナーメニューのテストに合格すべきではないのかと述べたが、これはマネージャーとして原告の職責に対する自覚を促したものとはいえるが、休暇の取得を妨害したものとはいえない。
原告の勤務は、従前は午前9時から午後3時までであったが、平成11年9月29日以降、午後2時から午後11時までのナイトシフトに変更された。変更の期間は一時的なものであり、Uの夏季・年次休暇の期間に対応しており、原告とUが同じ時間帯で働くことがないように配慮されていた。Dは原告と直接面談し、勤務時間の変更を受け入れるよう説得したが、原告はこれを強く拒否した。このような経緯からすると、勤務時間の変更は原告に対するいじめや嫌がらせと評価することはできない。
以上によれば、原告がUらによるいじめや嫌がらせと主張する行為は、いずれも社会的相当性を逸脱したいじめや嫌がらせと評価することはできない。
2 解雇権濫用の成否
原告は、職場復帰が可能になったにもかかわらず、レストランエリアでは働きたくないと主張して労務提供を拒否した。原告が上司からいじめや嫌がらせを受けた事実は認められないから、労務提供の拒否は正当な理由によるものとは認められない。被告は、それでもなお、原告の配置転換の希望を踏まえて勤務可能な職場を探したところ、バンケットのみが空いていたので、配置転換を提案したところ、原告はスケジュールが合わないから適当な仕事が見つかるまで無給休暇を取りたいと主張し、なお労務提供を拒否した。人事担当者は、再三にわたり原告に対して無許可欠勤として扱われると注意・警告したが、原告はこれに応じることなく頑なに労務提供を拒否した。このような経緯からすると、もはや原告に労務提供を期待することは困難であったといわざるを得ない。そうすると、本件制裁解雇は裁量権を逸脱したものとは認められず、解雇権の濫用に当たるものということはできないから、本件制裁解雇は有効である。 - 適用法規・条文
- なし
- 収録文献(出典)
- 労働判例840号90頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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