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独立行政法人R研究所テクニカルスタッフ雇止事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- 独立行政法人R研究所テクニカルスタッフ雇止事件
- 事件番号
- 東京地裁 − 平成16年(ワ)第26603号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 独立行政法人 - 業種
- 公務
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2007年03月05日
- 判決決定区分
- 棄却
- 事件の概要
- 被告は、科学技術に関する研究等を総合的に行うことにより科学技術の水準の向上を図ることを目的とする独立行政法人である。原告は、平成14年2月に旧法人に雇用され、任期制職員であるテクニカルスタッフとして勤務し、平成15年4月1日、旧法人と1年間の雇用契約を更新した。被告は平成15年10月1日に旧法人を承継して発足し、平成16年2月24日、原告に対し、同年3月31日をもって、期間満了により雇用契約を終了する旨通知した。
これに対し原告は、当初の任用の際、室長AやチームリーダーBから、平成17年度末まで更新される旨説明を受けたとして、少なくともプロジェクトが完了する平成18年3月31日まで雇用が継続することについて合理的な期待があるから、本件雇止めは合理的な理由を欠き無効であるとして、研究員としての地位の確認と賃金の支払いを請求した。 - 主文
- 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 - 判決要旨
- 旧法人及び被告(被告等)における任期制職員であるテクニカルスタッフの地位について、予算制度上も研究業務の運用上も、雇用期間が1年とされていること及びその雇用契約を更新するか否かは予算や研究事業の展開状況に応じて室長AやチームリーダーBが研究への貢献度や適格性等から総合的に判断するとされていることには合理性が認められる。そして、このようなテクニカルスタッフの地位と当初の雇用契約から本件契約までの各契約書の契約期間及び更新に関する特約についての記載内容が合致していることからすれば、原告は雇用契約があくまで期間1年の単年度契約であることを十分認識の上、当初の雇用契約を締結し、その後もかかる認識のもとにこれを更新して本件契約を締結したと認めることが相当である。
これに対し原告は、原告の業務に常用性があると主張するが、1回目の雇用契約更新時及び本件契約書には、原告は「研究その他関連する業務の遂行に従事する」旨明示されていること、平成14年度当初、解析等のコンピューター関連業務を行い得る能力を持った者は原告しかおらず、原告の業務はバイオインフォマティクス解析業務が中心であるというべきであったこと、原告の賃金は他のテクニカルスタッフより高額であったことが認められ、、研究の進捗状況や諸条件により流動的に変化していくという研究の性格上、直ちに常用性があるとはいえず、原告の業務の一部は既に終了していることからすれば、原告の業務に常用性があるとの原告の主張を採用することはできない。
次に原告は、1年の契約期間は予算単年度主義による建前に過ぎないと主張するが、被告における予算の変動が大きいこと、被告における任期制職員は、その所属する研究チームの研究が複数年契約であっても、その間の自動更新が保証されているわけではなく、被告の平成15年度末の在籍者2142名のうち、雇止めになった者は126名、平成16年度末の在職者2250名のうち雇止めになった者は108名に昇ること等の事実並びに当初の雇用契約から本件契約までの各契約書に期間として1年間及び特約として原告と旧法人の協議の上双方の合意があったときにのみ更新できる旨記載されている事実に照らせば、1年の契約期間が予算単年度主義による建前であるとは認め難い。
また原告は、当初の任用前に、Aから平成17年度まで更新されること、Bから、よほどのことがない限りプロジェクト終了まで雇用すること、平成16年度以降の責任者が原告であること等の説明を受けたとして、同年度以降の雇用継続が前提とされていたと主張するが、上記の説明は被告における任期制職員の任用に関する認定事実にそぐわず、A及びBは原告主張の説明をしたことを否定していること等が認められるから、原告の主張を採用することはできない。
更に原告は、1回目の契約更新は原告に成果・適格性があることを前提になされており、更新2回の契約期間は2年2ヶ月であって、プロジェクト期間4年2ヶ月の半分を超えている旨主張するが、僅か2回という契約更新及び合計2年2ヶ月という契約期間は、原告の雇用継続についての期待が合理的であることを基礎付けるには足りないというべきである。
以上検討したところに加え、被告等における任期制職員の雇用契約の更新状況、原告はBから、平成14年11月から翌年1月までの間に、業務遂行能力を改善し、他の研究員等と協調していかなければ、次年度は契約を更新しない旨通告され、更に同年6月及び11月、上記の点が改善されていないなどとして次年度は契約を更新しない旨通告されたが、いずれの際も契約の更新を求めなかったこと並びに原告が本件雇止めの通知を受けた後に退職に向けた準備を行い、他の研究チームの公募に応募したことを踏まえれば、原告には雇用が継続されることについて合理的な期待があるとの主張は採用できない。したがって、本件契約は、被告がその更新を拒絶した以上、その契約条件のとおり、平成16年3月31日、期間満了により終了したというべきである。 - 適用法規・条文
- なし
- 収録文献(出典)
- 労働経済判例速報1974号10頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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