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S社配転命令無効確認請求事件

事件の分類
配置転換
事件名
S社配転命令無効確認請求事件
事件番号
大阪地裁
当事者
原告 個人1名
被告 株式会社
業種
製造業
判決・決定
判決
判決決定年月日
1997年03月24日
判決決定区分
認容
事件の概要
 原告は被告に雇用され、仙台支店において営業の業務に従事していた者である。原告は被告に雇用される際、家庭の事情で仙台以外では勤務できない旨申し出、被告支店長は承った旨回答し、本社からも留保を付することなく採用が認められた。原告は、仙台支店において営業成績はトップクラスだったものの、他の社員との折合いが悪かったことから、被告は原告が同支店の結束の障害になると考え、本社業務本部の下にプロジェクト・リサーチ部を新設し、原告をその仙台分室の配属とし、組織上支店と切り離した。
 平成5年3月、同部を営業本部直属とする組織変更に伴い、被告は原告に大阪転勤を打診したが、原告は勤務地は仙台に限定する約束であったと主張し、転勤を拒否した。これに対し被告は、原告に対し転勤に応じなければ解雇する旨通知したため、原告は別居手当の増額、一時帰省に必要な交通費の支給、帰省休暇の付与、転勤費用の被告による負担等を条件として、本件転勤命令に応ずる旨の意思表示をし、異議を留めた上で転勤に応じたが、本件転勤命令の無効を主張して提訴した。
主文
判決要旨
 原告は、採用面接において、採用担当者であった支店長に対し、家庭の事情で仙台以外には転勤できない旨明確に述べ、支店長もその際勤務地を仙台に限定することを否定しなかったこと、支店長は本社に採用の稟議を上げる際、原告が転勤を拒否していることを伝えたのに対し本社からは何らの留保を付することなく採用許可の通知が来たこと、その後被告は原告を何らの留保を付することなく採用し、原告がこれに応じたことがそれぞれ認められ、被告が原告に対し転勤があり得ることを明示した形跡もない以上、原告が被告に応募するに当たって転勤できない旨の条件を付し、被告が右条件を承認したものと認められるから、原告・被告間の雇用契約においては、勤務地を仙台に限定する旨の合意が存在したと認めるのが相当である。したがって、本件配転命令は、勤務地限定の合意に反するものであり、原告の同意がない限り効力を有しないというべきところ、原告が本件配転命令に同意しなかったことは当事者間に争いがないから、本件配転命令はその余の点を判断するまでもなく無効であるということができる。
適用法規・条文
収録文献(出典)
その他特記事項