判例データベース
Y大学病院非常勤職員雇止事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- Y大学病院非常勤職員雇止事件
- 事件番号
- 山形地裁 − 昭和56年(行ウ)第1号
- 当事者
- 原告 個人2名A、B
被告 Y大学長 - 業種
- 公務
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1986年02月17日
- 判決決定区分
- 却下(控訴)
- 事件の概要
- 原告Aは、昭和55年9月1日、被告に非常勤職員として採用され、Y大学医学部附属病院(山大病院)の受付、カルテ作成整理等の職務に従事してきた男性であり、被告Bは、昭和51年11月1日、被告に非常勤職員として採用され、原告Aと同様の職務に従事してきた女性である。
被告は、原告らに対し、昭和56年3月の面接の際、同年9月30日限りで退職させる旨の意思表示をしたところ、原告らは、本件各任用は任期の定めのないものか、任用更新の反覆により任期の定めのない任用に転化したから、本件退職予告は免職処分であること、仮に任期の定めのあるものであったとしても再任用の約定がなされていたこと、Y大病院の非常勤職員のうち更新を希望しながら任用更新を拒否されたのは、原告らとほか1名のみであること、その業務は一時的・臨時的なものではなく恒常的なもので勤務形態は常勤職員と異ならないことを主張し、任期満了後も任用更新されることに対する法的に保護された期待権があるとして、職員としての地位の確認を請求した。 - 主文
- 本件訴えをいずれも却下する。
訴訟費用は原告らの負担とする。 - 判決要旨
- 原告らは被告から任期を定めて採用され、その担当職務は補助的・代替的な単純労働であるから、右任期を定めた任用を無効ということはできない。原告らの勤務関係が公法関係であって任免に関する事項は法規による厳格な規制を受けるものであり、任用行為が厳格な要式行為であることなどを考慮すると、たとえ期限付任用が反覆されたとしても、任期の定めのない任用に転化するものと解することはできない。
また、仮に原告らが主張するように、任期満了後必ず任用を更新する旨の約定がなされたとしても、右のような任用行為が許されるとする実定法上の根拠はなく、職員の定数が定められていること及び任用行為の要式性などからすると、法の予定しない任用類型であって、右のような任用行為は無効であるといわざるを得ない。したがって、原告らが被告に対し右約定に基づいて任用更新請求権を有するものということはできない。
以上のとおり、被告は原告らを期限付きの非常勤職員として採用し、昭和56年4月1日、任期を同年9月30日として任用したものであるところ、人事院規則812第74条1項3号によれば、任期を定めて採用された公務員は、その任期が満了した場合当然退職するのであるから、原告らは同日限りで当然に退職したものである。
原告らは、本件退職予告あるいは退職通知が、原告らの有する任用更新に対する期待権を侵害するものであるから行政処分に該当する旨主張する。しかし、期限付で任用された公務員に一定の場合に任用更新に対する期待権を認め、これを法的に保護される権利として容認することは、任期満了によって当然に退職することを前提とする期限付任用を一定の範囲で設けた法の趣旨に反することであり、任期の定めのない公務員の任用行為が厳格な要式行為であり、厳格な法的規制を受け、また公務員の定数が定められていることなどを考慮すると、原告ら主張のような事情が存在したとしても、原告らの任用更新に対する期待は未だ事実上のものに止まり、法律上の権利ないし法的に保護された利益として認めることはできない。 - 適用法規・条文
- 人事院規則812第74条
- 収録文献(出典)
- 労働判例470号48頁
- その他特記事項
- 本件は控訴された。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
山形地裁 − 昭和56年(行ウ)第1号 | 却下(控訴) | 1986年02月17日 |
仙台高裁 − 昭和61年(行コ)第2号 | 控訴棄却 | 1987年09月29日 |