判例データベース
T建築請負会社事件
- 事件の分類
- セクシュアル・ハラスメント
- 事件名
- T建築請負会社事件
- 事件番号
- 東京地裁 − 平成11年(ワ)第28113号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 Sホーム有限会社 - 業種
- 建設業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2000年04月14日
- 判決決定区分
- 棄却(確定)
- 事件の概要
- 被告会社は、建築請負業等を業とする有限会社であり、原告(女性)は当初3ヶ月間の試用期間として被告会社に採用され、平成11年11月22日から勤務を開始した。
同月26日、被告会社の代表者である被告Aは原告及び他1名の女性従業員とビールを飲みながら雑談した際、「若い女性と飲むとおいしいね。」「今度お好み焼きを食べに行きましょう。」などと言った。
原告は、給料日の11月30日に欠勤し、12月1日に出勤したが、11月22日から締日である25日までの3日間の給料が支払われなかった。そこで原告は、外出中の被告Aの出先に電話し、「皆に給料を払って、私になぜ支払ってくれないのか。」と言ったところ、被告Aは、「昨日あなたが休んだので支払わなかっただけで、来月まとめても良い。」と答えたため、原告は更に強い口調で、「何で私だけ差別するのですか。」と抗議した。
被告Aは原告の発言を聞いて、このまま原告を雇用し続けても、営業職としてうまくやっていけず被告会社が不利益を被り、また社内的にもうまくやっていけないだろうと考え、同日午後11時頃、原告の同日までの給与を持参して原告宅を訪れ、これを原告に支払い、原告を解雇する旨告げた。これについて原告は、損害賠償として、被告会社に対し解雇までの給料と同額の6万6920円、被告Aに対して慰謝料92万9760円の各支払いを求めた。 - 主文
- 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 - 判決要旨
- 1 被告会社に対する請求について
一般に試用期間は、労働者を実際に職務に就かせ、この期間中に採用面接等では知ることのできなかった業務適格性等をより正確に判断し、本採用にするか否かを決定できるようにする目的で設けられるものであり、この期間内における解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認することができないものであってはならないものの、通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められるべきである。
これを本件についてみるに、原告が被告Aに支払日の経過した給料の支払いを求めること自体は正当であるものの、原告の被告Aに対する発言にはやや適切さを欠くものがあり、特に原告が営業を担当する予定で被告会社に採用されたものであり、このような職種ではとりわけ対人的な折衝能力が求められること、被告会社のような少人数の会社では他の者との和が求められることからすると、被告Aが、原告の発言から営業職としての適格性や被告の従業員としての適性に疑問を感じ、原告の雇用を継続することが困難であると判断したことには、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当として是認することができないではない。よって、解雇が違法であるとはいえないから、原告の被告会社に対する請求は理由がない。
2 被告Aに対する請求について
職場におけるセクハラとは、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する女性労働者の対応により当該女性がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該女性労働者の就業環境が害されることをいうものであるところ、11月26日の被告Aの言動は、その意図、勧誘の程度、発言内容等から見て、到底セクハラ行為といえるものではなく、不法行為を構成するとは認められない。
被告Aが、解雇の意思表示を深夜女性宅でしたことは、やや適切さに欠けるものの、解雇を違法とするほどのものであるとはいえない。また、セクハラの意味は前記で判示したとおりであるところ、被告Aの性的な言動の事実は含まれていないのであって、違法なセクハラ行為があったと認めることはできない。以上の次第であるから、原告の被告Aに対する請求は理由がない。 - 適用法規・条文
- 収録文献(出典)
- 労働判例789号79頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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