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C競馬会パートタイマー年休等請求事件
- 事件の分類
- その他
- 事件名
- C競馬会パートタイマー年休等請求事件
- 事件番号
- 立川簡裁 - 平成3年(ハ)第169号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 法人 - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1994年03月24日
- 判決決定区分
- 棄却(控訴)
- 事件の概要
- 被告は、法に基づき競馬の開催等を行う法人であり、原告は昭和48年4月から東京競馬場内投票所において、また同年9月からは後楽園場外投票所においても、土・日曜日に勝馬投票券発売の業務に従事してきた女性である。
原告は、被告に採用されて以来、途切れることなく毎年競馬開催の期間フルに勤務しており、年間の勤務日数は、、(1)昭和48年:50日、(2)同49年~53年:88日、(3)同54年~62年:80日、(4)同63年:72日となっていた。
労働基準法は昭和62年に改正され、年次有給休暇について、パートタイマーに対しても勤務日に応じた比例付与がされるようになったが、原告は、同法改正前から、原告のようなパートに対しても年休取得を要求してきたところ、同法改正後は、改正法に基づく権利として年休の取得を求めた。これに対し被告は、原告らは開催毎の雇用であって継続性はない旨主張し続けたため、原告は労働基準監督署等に対し労働基準法違反を訴え続けた。そうしたことから、労働省労働基準局は、平成元年3月10日付けで、「競争事業に従事する労働者の年次有給休暇について」と題する通達(基収140号)を発し、(1)概ね毎月就労すべき日が存すること、(2)雇用保険法に基づく日雇労働求職者給付金の支払いを受ける等継続勤務を否定する事実が存しないこと、のいずれにも該当する場合には、労働基準法39条1項の「継続勤務」と解される旨明らかにした。
原告は、競馬の開催主体、雇用形態はさまざまであり、「競争従業員」として一括して要件を策定すること自体に無理があり、原告の勤務実態からすれば、競馬開催期日の関係上1ヶ月以上の空白が生じても、労働関係は継続しているとみるべきであり、労働基準法39条3項により年休を付与すべきであるとして、カットされた賃金の支払いを請求した。
これに対し被告は、原告ら開催従業員は競馬開催毎に、各競馬場長の権限において雇用契約を締結するものであり、従業員としての地位は各開催期間のみに限定され次回開催まで雇用が継続するわけではないから、継続雇用を前提とした年次有給休暇の対象にはならないと主張して争った。 - 主文
- 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 - 判決要旨
- 原告ら従業員の雇用は、年間を通しての採用ではなく、一競馬開催毎の採用であるから、その勤務も年間を通しての勤務ではなく一競馬開催毎の勤務であり、ただ繰り返し採用されている結果、契約の更新=継続勤務が行われているかの様に見られているに過ぎない。
競馬会は、年度事業計画において、東京・中山競馬場については、7月及び8月は恒常的に競馬を開催しないこととしており、その結果、仮に従業員の繰り返しの雇用を目して契約の更新と解したとしても、この空白期間の存在により、競馬会と従業員との間の雇用契約は中断されることとなり、「継続期間=在籍」ということもできなくなると解される。
競馬会が年を前提として採用している諸制度は、従業員が一競馬開催毎ではあるが繰り返し採用された結果、業務の熟練度に差異が生じて来ることから、その様な事情を考慮することなく形式的に一律に取り扱うことはかえって平等を欠くことになるので、それを避け、かつ競馬会に必要な多数の従業員を確保するために取られているのに外ならないから、これらの制度の存在をもって、原告の勤務を年間を通じての勤務であると即断することはできない。
基収140号通達の内容については、年休制度の本来的意義である「労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るため、休日のほかに毎年一定日数の有給休暇を与える」という趣旨や、競馬会は年度開催計画において、東京・中山については夏季の2ヶ月間は全く競馬を開催しないこととしている等の事情を考慮すると、その内容について特段の不当性はない。してみると、原告の競馬会における従業員としての勤務は継続勤務に当たらないので、労働基準法39条1項に該当せず、したがって同条3項及び同法施行令24条の3第3項による年休の請求権は、これを認めることができない。
なお付言すると、労働基準法の改正により年休制度がパートにも適用されるようになったが、パートの勤務形態は多様であるため、同法は年休の比例的付与を規定した。その結果、一方で「1年間継続勤務」した者は、「1年間の所定労働日数が48日」の者でも年休付与の対象者になるのにかかわらず、他方原告のように年間80日間勤務した者でも「1年間継続勤務」の要件に該当しない者は、年休付与の対象者にならないという現象を生じることとなる。法適用の場合、いわゆるボーダーラインにある者について、往々にしてこのような結果を招来することはやむを得ないことと思われるが、原告の抱く不公平感を除くため、労務政策的な観点から、年休付与を図ることが必要であると考慮される。 - 適用法規・条文
- 07:労働基準法39条、
- 収録文献(出典)
- その他特記事項
- 本件は控訴された。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
立川簡裁 - 平成3年(ハ)第169号 | 棄却(控訴) | 1994年03月24日 |
東京地裁 - 平成6年(レ)第71号 | 原判決取消(控訴認容) | 1995年07月12日 |