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電信電話会社配転拒否控訴事件

事件の分類
配置転換
事件名
電信電話会社配転拒否控訴事件
事件番号
東京高裁 - 平成19年(ネ)第2475号
当事者
控訴人 個人9名 A、B、C、D、E、F、G、H、I
被控訴人 電信電話会社
業種
運輸・通信業
判決・決定
判決
判決決定年月日
2008年03月26日
判決決定区分
控訴棄却
事件の概要
被控訴人(第1審被告)は、構造改革の一環として、雇用形態を、(1)50歳時に退職し、新会社で60歳まで勤務した後契約社員として最長65歳まで勤務する「繰延型」。(2)雇用形態は(1)と同様で退職時に一時金を受給できる「一時金型」、(3)60歳まで勤務する「満了型」に分けて従業員に選択させたところ、控訴人(第1審原告)らはいずれも選択しなかったため「満了型」を選択したものとみなされた。

 被控訴人は、満了型約300名のうち130名を首都圏の法人営業等に配転し、控訴人ら9名はいずれも首都圏に配転され、単身赴任や遠距離通勤を余儀なくされた。控訴人らは、勤務場所や職種を変更する際には本人の同意を要することが労働契約の内容になっていたところ、本件配転命令は、控訴人らの同意なく行われたこと、業務上の必要性を欠くこと、組合活動に支障を与える等不当な動機によるものであることなどを主張し、その無効確認を求めると共に、各300万円の慰謝料を請求した。
 第1審では、(1)勤務場所や職種を限定することが労働契約の内容や労使慣行になっていたとは認められないこと、(2)本件配転命令には権利の濫用はないこと、(3)本件配転はいずれも業務上の必要性があったことを認め、原告らの請求を棄却したため、原告らはこれを不服として控訴した。
主文
1 本件各控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。
判決要旨
控訴人らの当審における各控訴人の個別的な不利益についての主張は、いずれも基本的には原審からの主張の繰り返しであり、それについて判断は各控訴人について説示したとおりであって、控訴人らは本件各配転によって単身赴任や遠距離通勤を余儀なくされ、これによって控訴人ら及びその家族の寂しさや日常生活上の不便が生じていることはうかがえるものの、子の監護養育や親の介護に具体的な支障を生じたとまでは認められず、また配転に具体的な支障があったものともいい難く、単身赴任や遠距離通勤によって一般的に生じ得る範囲の不利益にとどまるものというべきである。そして本件構造改革がインターネットを中心とするネットワークに移行しつつある通信業界の構造変化に対応するために被控訴人会社の人的物的リソースを収益強化に資する部門に集中することを目指したものであって、満了型を選択して被控訴人会社に留まった者については、市場性、収益性が高い首都圏エリアの法人営業に人員を集中させることが労働力の適正配置、業務の能率推進、業務運営の円滑化の観点から合理的な判断であること、また、満了型を選択した社員を地元の新会社に在籍出向させることは本件構造改革の中核である雇用形態選択制度の沿わないものである上、新会社で再雇用された社員の不公平感をあおり、その勤務意欲を削ぐ結果となることからみても、移行対象業務に従事していた控訴人らを配転する必要性は高く、その配転先として首都圏が候補とされたことにも業務上の必要性が認められるものといえるのであるから、控訴人らに生じた前記不利益は、配転に伴い労働者が通常甘受すべき程度の不利益に留まるものというほかない。
適用法規・条文
収録文献(出典)
労働経済判例速報2003号3頁
その他特記事項