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社会福祉法人事務長解雇事件

事件の分類
セクシュアル・ハラスメント
事件名
社会福祉法人事務長解雇事件
事件番号
東京地裁 − 平成17年(ワ)第27382号
当事者
原告個人1名

被告社会福祉法人
業種
サービス業
判決・決定
判決
判決決定年月日
2007年02月26日
判決決定区分
棄却
事件の概要
被告は、知的障害者入所更正施設であるT育成園を運営する社会福祉法人であり、原告は同園の事務長であった者ある。

 原告は、繰り返し女性職員らに対し性的関係を迫るような言動を含むセクハラ行為を行い、そのため女性職員がうつ状態との診断を受けて他の施設に異動したほか、他の女性職員もセクハラ行為が原因で退職したことから、被告は原告を事務局付きに配置転換し、退職勧奨を行ったが、原告はこれに応じなかった。

 T育成園のパソコン調子がおかしくなり、調査の結果コンピューターウィルスが発見され、その後の調査で、園長が使用していたコンピューターがウィルスの感染源になり、メールからの感染が数点あることや、いわゆるアダルトサイトや出会い系サイトを閲覧した痕跡があることが判明した。調査した業者からウィルス感染に関する報告書が提出されたが、その報告書には、原告の指示により無修正のわいせつ画像が表示される等、通常の報告書と大きく異なる体裁になっていた。
 原告は、事態を穏便に済ませる条件として人事異動の撤回を被告に働きかけるよう園長に求めたが、園長がこれを拒否したため、職員のみならず保護者をも巻き込んで園長の責任を追及した。被告は、原告のこのような行為が就業規則に違反するとして、原告を解雇したところ、原告は解雇の無効を主張して職員としての地位の確認を請求した。
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
判決要旨
 原告の女性職員らに対する言動は職員として好ましくない行動をしたものといわざるを得ないところ、職員からセクハラの相談を受ける窓口は事務室とされており、原告は事務長としてその責任者の立場にあったと解されることを考慮すれば、その責任も重いというべきである。
 原告は、コンピューターウィルスに絡んで、事態を穏便に済ませる条件として、かねてから不満に思っていた人事異動の撤回を求め、これが受け容れられないとなると、職員のみならず保護者をも巻き込んで園長の責任を追及し、園内の混乱を招いたと言わざるを得ないのであって、原告が管理職という立場にあることをも考慮すれば、原告のこのような行為は、終業規則所定の服務規律違反に該当し、職員として好ましくない行動をしたと認めざるを得ないし、その責任も極めて重いというべきである。このことからすると、原告には解雇事由が認められるところ、いずれの点についても原告の責任は極めて重いといわざるを得ないから、本件解雇は相当なものであったと認めることができるし、本件解雇に至る手続きが違法なものであったとは認めることができず、本件解雇は有効である。
適用法規・条文
収録文献(出典)
平成20年版年間労働判例命令要旨集282頁
その他特記事項