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地公災基金京都府支部長(J市教委次長)くも膜下出血死控訴事件【過労死・疾病】
- 事件の分類
- 過労死・疾病
- 事件名
- 地公災基金京都府支部長(J市教委次長)くも膜下出血死控訴事件【過労死・疾病】
- 事件番号
- 大阪高裁 − 平成2年(行コ)第67号
- 当事者
- 控訴人 地方公務員災害補償基金京都府支部長
被控訴人 個人1名 - 業種
- 公務
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1991年09月13日
- 判決決定区分
- 控訴棄却
- 事件の概要
- Hは、昭和26年に京都府の教員になり、昭和52年5月以降J市教委教育次長の職にあった者である。J市では、汚職事件等で市長が退陣し、教育長も任命されないことから、Hはその建て直しのためにJ市教委に派遣され、事務局の事実上トップになった。Hが次長に就任した当時、J市教委では問題が山積しており、Hは就任以降、長時間労働を強いられる状況にあった。
昭和52年10月に新市長が登庁し、中学校建設のための用地取得に奔走していたHは、同月11日から15日まで夜8時から10時頃まで勤務し、予算査定、市議会文教委員会への出席、小学校建設協議会への出席等の業務をこなし、同月15日には、新たに発生した疑惑に対処するための対策協議を行い、定例部長会議終了後の正午過ぎ、くも膜下出血で倒れ、同月30日に死亡した。
Hの妻である被控訴人(第1審原告)は、Hの死亡は公務に起因するものであるとして、控訴人(第1審被告)に対し、公務災害認定請求を行ったが、被告はこれを公務外災害と認定(本件処分)した。そこで被控訴人は、本件処分を不服として審査請求、更には再審査請求を行ったが、いずれも棄却されたことから本件処分の取消しを求めて提訴した。
第1審では、Hの公務と死亡との間における相当因果関係を認め、本件処分の取消しを命じたことから、控訴人はこれを不服として控訴した。 - 主文
- 本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。 - 判決要旨
- 地公法31条所定の公務起因性を肯定するには、死亡、負傷又は疾病と公務との間に相当因果関係があることを必要とし、その証明の責任はこれを主張する被控訴人にあり、その証明の程度は高度の蓋然性であることを必要とし、かつこれをもって足りることは原判決の判示のとおりである。そして、右の相当因果関係の内容につき、本件に即していえば、それは自然的因果関係の存在を前提として、使用者である地方公共団体において、予見し又は客観的にみて予見し得た公務に関する事実によって所属職員の疾病又は死亡が生じたものと認められることである。
脳動脈瘤発生及び破裂の機序については、原判決のとおりに認定できるところ、これによると、脳動脈瘤の破裂が外的なストレスによって起こることもあり得るものといわなければならず、原判決はこの事実を前提に判断しているのであって、証明の原則に反するところはない。控訴人主張の新しい認定基準は、行政上の基準とはいえ、民事裁判においても重要な参考とすべきものではあるが、これによって民事裁判における証明の原則が変更されるものでないこと言うまでもない。原判決は相当因果関係の内容及び証明の原則に従って認定判断しているのであり、なんら不当な点はない。
以上の次第で、本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとする。 - 適用法規・条文
- 地方公務員災害補償法31条
- 収録文献(出典)
- 労働判例615号52頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
京都地裁 − 昭和59年(行ウ)第20号 | 認容 | 1990年10月23日 |
大阪高裁−平成2年(行コ)第67号 | 控訴棄却 | 1991年09月13日 |