判例データベース
W工業(S重機横須賀工場)雇止等控訴事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- W工業(S重機横須賀工場)雇止等控訴事件
- 事件番号
- 東京高裁 - 平成20年(ネ)第615号
- 当事者
- 控訴人 個人2名 A(控訴人A)(甲事件原告・丙事件被告)B(控訴人B)(甲乙事件原告・丙事件被告)
被控訴人 株式会社(被控訴人W)(甲乙事件被告・丙事件原告)
被控訴人 株式会社(被控訴人S)(乙事件被告) - 業種
- 製造業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2008年08月07日
- 判決決定区分
- 控訴棄却(確定)
- 事件の概要
- ブラジル国籍の控訴人(第1審原告)A、同Bは、被控訴人(第1審被告)Wと、平成13年8月、同年12月にそれぞれ本件雇用契約を締結し、3ヶ月の期間雇用を更新して溶接工として就労していた。
控訴人Bは、平成14年12月2日、ゴミの入ったバケツを提げて歩行していた際に転倒し、右肩関節脱臼と診断され、平成16年9月30日まで、休業補償給付の支給を受け、後遺障害12級6号に認定され、障害補償一時金等の支給を受けた。
控訴人Aは、被控訴人Wから、平成15年1月より社会保険加入、有給休暇付与等をする一方、時給を従来の2150円から1000円に引き下げることを通告され、時給1000円での賃金の支払いを受けた。控訴人Aは労組に加入して団交を求めたが、被控訴人Wは、原告Aとの本件契約を同年3月31日までとする旨通告した。
控訴人らは、本件各雇用契約は期間の定めのないものであるから、本件雇止めは解雇に当たるところ、解雇権の濫用として無効であるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めたほか、原告Aは平成15年1月から3月までの賃金につき、時給2150円と1000円の差額分の未払賃金の支払いを請求した。また控訴人Bは、被控訴人W及び被控訴人Sの安全配慮義務違反によって業務上災害を被ったとして、後遺障害による逸失利益831万円余、通院慰謝料176万円、後遺障害慰謝料290万を被控訴人らに対し請求した。
第1審では、控訴人らの請求のうち、控訴人Aの未払賃金の支給のみ認め、それ以外は全て棄却したため、控訴人らはこれを不服として控訴した。 - 主文
- 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 - 判決要旨
- 当裁判所も、控訴人Aの請求は原判決が認容する限度で理由があり、その余は理由がなく、控訴人Bの請求はいずれも理由がないものと判断する。
(1)被控訴人Wは、好不況の波に応じた業務量の変動に対応するため、業務量が増大した場合には、必要に応じて臨時工を直接雇用していたこと、(2)上記臨時工には有効期間3ヶ月の臨時門鑑が交付されていたこと、(3)被控訴人Wは、平成13年から15年にかけて、業務量が著しく増大したことから、スポット又は臨時的下請業者を確保する必要が生じたこと、(4)控訴人らは勤務条件の良い勤務先に転職を繰り返す等していたこと、(5)控訴人Aは、平成13年夏頃被控訴人Wの臨時工募集に応じて本件雇用契約を締結し、控訴人Bも、同年12月、同被控訴人との間で本件雇用契約を締結したこと、(6)上記契約の際、被控訴人Wは控訴人Aに対し、雇用期間は3ヶ月とするが業務量に応じて3ヶ月毎に自動更新となる旨説明し、時給1000円、社会保険への加入、有給休暇の付与等の勤務条件を説明したこと、(7)控訴人Aは、上記勤務条件のうち、社会保険への加入、有給休暇の付与及び残業手当の支給を不要とする代わりに時給2300円を要求したため、被控訴人Wは控訴人Aの了承を得て時給2150円で合意し、その後控訴人Bとの間でも時給2000円で合意したこと、(8)被控訴人Wは控訴人らに対し、有効期間3ヶ月の臨時門鑑を交付し、控訴人らは臨時工として稼働していたこと、(9)被控訴人Wは、平成15年4月以降は被控訴人Sから請け負う溶接作業も通常の業務量に減少する見込みとなったことから、同作業に係る臨時工を削減する必要が生じたこと、(10)平成15年に至りLUC分会からの要求を受けて、被控訴人Wは控訴人らについて社会保険の加入手続きをとったことが認められ、これらの事実を併せ考慮すれば、被控訴人Wは、景気変動に伴う雇用量の調整を図るため臨時工を雇用していたが、一時的業務の増大のために控訴人らを3ヶ月の期間を定めて雇用したものであり、その後5、6回にわたり更新していたが、人員増大の必要性も失われ、期間満了とともに雇止めが行われたものであって、この事実によれば本件雇用契約は有期雇用契約であるというべきである。
(1)控訴人Bは平成14年10月1日に雨で濡れた鉄梯子から足を踏み外し、片手でぶら下がったところ、右肩関節の亜脱臼を起こしたこと、(2)船底に通じる開口部は直径50cmの円形のものと横40cm縦60cmの楕円形のものであったこと、(3)ゴミを入れたバケツは相当の重量になるが、同年12月2日の本件事故当時、控訴人Bには、脚部、股間から腰部、腰部又は胸部付近には負傷の形跡はなかったこと、(4)控訴人Bが本件事故後に受診した際にも、右肩関節亜脱臼以外の負傷に関する診断を受けていないこと、(5)本件事故当日の診察では、肋骨骨折やその疑いに係る診断はされていないこと、(6)本件事故当日、船底の溶接作業は行われていなかったこと、(7)本件事故当日、換気ファンは控訴人ら準備書面記載の位置に置かれていたことが認められる。これに加えて、控訴人Bの供述部分には、エアホースに引っかかった足について供述は変遷している部分があるほか、その陳述書には、本件事故当日、船底に降りて溶接作業を行っていたとの客観的事実と異なる記載部分がある。また控訴人Aの本件事故状況に関する供述部分は、控訴人Bの供述とも必ずしも一致しない。
また、控訴人Bは、労災保険障害補償給付支給請求書において、右足がエアホースに引っかかり、穴にはまって転倒した旨記載して提出し、その後エアホースに引っかかったのは左足である旨主張を変更したことが記録上明らかである。
上記事情に照らすと、各証拠はたやすく採用できず、控訴人らの主張は採用できない。以上によれば、控訴人Aの被控訴人Wに対する請求は、原判決が説示するとおり、未払賃金の差額分にかかる請求部分32万4318円の限度で理由があり、その余は理由がなく、控訴人Bの被控訴人Wに対する請求は理由がない。 - 適用法規・条文
- 労働基準法19条、24条
- 収録文献(出典)
- 労働判例966号13頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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横浜地裁 − 平成16年(ワ)第1517号(甲事件)、横浜地裁 − 平成17年(ワ)第333号(乙事件)、横浜地裁 − 平成19年(ワ)第2439号(丙事件) | 一部認容・一部棄却 | 2007年12月20日 |
東京高裁 - 平成20年(ネ)第615号 | 控訴棄却(確定) | 2008年08月07日 |