判例データベース
K社業務請負契約解除事件
- 事件の分類
- 解雇
- 事件名
- K社業務請負契約解除事件
- 事件番号
- 大阪地裁 − 平成9年(ヨ)第2693号
- 当事者
- その他債権者 個人1名
その他債務者 株式会社 - 業種
- 運輸・通信業
- 判決・決定
- 決定
- 判決決定年月日
- 1998年01月05日
- 判決決定区分
- 一部認容・一部却下
- 事件の概要
- 債務者は、労働者派遣事業、車両運行管理請負業務等を目的とする会社であり、債権者は平成元年4月3日債務者に雇用され、車両運行部に配属され、K銀行に派遣されて支店長車の運転手として勤務してきた者である。
債務者は、平成9年8月18日、債権者に対し、車両運行部の業務縮小のため必要であるから、1ヶ月後には運転業務を中止して有給休暇32日を消化し、退職して欲しいと述べて、有給休暇満了の日である同年11月5日をもって解雇する旨通告した。
これに対し債権者は、解雇の無効を主張し、労働契約上の地位にあることの確認と賃金の支払いを請求した。 - 主文
- 1 債権者が債務者に対し労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。
2 債務者は、債権者に対し、平成9年11月6日以降本案訴訟の第1審判決の言渡しに至るまで、毎月24日限り、月額金25万0600円の割合による金員を仮に支払え。
3 債権者のその余の申立てを却下する。
4 申立費用は、これを4分し、その1は債権者の負担とし、その余は債務者の負担とする。 - 判決要旨
- 整理解雇が有効であるためには、解雇の必要性、解雇回避の努力、被解雇者の選定の合理性及び被解雇者に対する説明の4要件を充足していることが必要であると解される。
債務者の車両運行部門の業務の大半はK銀行との業務請負契約による運転手の派遣であったこと、K銀行から平成8年8月をもって解約する旨の申入れがあったこと、債務者はK銀行と協議して解約の時期を平成9年7月末まで延期してもらうとともに、その間の定年等による退職者を待ち、一部運転手について派遣を継続してもらうなどしたが、結果として債権者外7名の派遣運転手を車両運行部門で余剰人員で抱えねばならない状況となったこと及び同部門で債権者外7名を余剰人員として抱えていくことは経営上困難であったことが認められる。したがって、本件解雇は、事業縮小の結果引き続き雇用していくことが困難となったために行われたものであって、解雇の必要性は認められる。
債務者は、車両運行部門の業務縮小に対応して、余剰人員となる者について他の事業部門への配置転換も検討したものの、事業部門においても業務縮小が行われており、資格や知識経験を要する事業部門もあるため、配置転換により解雇を回避することはできなかったことが認められる。しかし、債務者が希望退職者を募集したことはないと推認されるところ、K銀行の解約申入れから本件解雇に至るまでには相当の期間があり、この間担当支店を異動させた上で派遣運転手として残留させた場合もあることからすれば、異動に伴う通勤の便宜から退職を希望する者があった可能性もあり、またK銀行への派遣運転手で残留した者は10名であるのに対し、解雇予告を行った者が8名であることを考慮すれば、債務者は解雇に先立って希望退職者を募集すべきであったと解される。したがって、この点において、債務者は解雇回避の努力を尽くさなかったということができる。
債務者は、被解雇者の選定基準について、当初、解雇対象は余剰人員となった支店長車の運転手全員であり、このうち定年退職者等を除く10人中大型免許を有する者等を除いた8名全員を解雇した旨主張していたが、解雇されない者については右基準によって説明できないことが明らかとなり、その後被解雇者は原則として廃止される車の運転手であると主張を訂正するに至った。のみならず、最終的に債権者を含む被解雇者の数が8名になった経緯は明らかでない。また、債務者の主張によれば、K銀行本店、堺支店、神戸支店、大津支店の役員車について運転手を残留させたとのことであるが、債務者主張の選定基準が支店長車についてのものか、役員車についても同じ基準が適用されたのか明らかでない。債務者は3名の運転手を、他の支店長車の運転手として残留させているが、なぜこの3名を異動させてまで残留させたのか、債務者主張の選定基準では説明がつかない。以上によれば、債務者が被解雇者の剪定基準を設けていたとは認められない。
債務者は、債権者を含む各被解雇者に対して解雇予告の際に解雇に至った経緯を説明しており、債権者に対しては、平成9年8月18日に説明したことが認められるが、説明の内容が十分であったとは認められない。また、整理解雇せざるを得ない状況にあることが解雇予告より相当期間前から明らかである場合には、再就職先の確保等の必要からできるだけ早期に説明すべきであり、本件では、解雇予告の以前から解雇予定者及びその者に対する解雇予告の日が予定されていたことが窺われるから、解雇予告の以前に被解雇者に経過を説明すべき責任があったが、それが適時にされたとはいえない。すなわち、債務者は
K銀行から解約申入れを受けた後も、数次にわたって解雇予定者、業務終了日等のリストをK銀行に提出しており、特段の事情がない限り、遅くとも大量の解雇予定者のリストの作成日である平成9年6月11日には債権者に説明すべき義務があったが、右時点で説明がされたとは認められない。したがって、債務者が債権者に対し説明義務を尽くしたということはできない。
以上の次第で、本件解雇は整理解雇の要件を充足しておらず、就業規則に該当するとはいえないから、本件解雇は無効である。 - 適用法規・条文
- 収録文献(出典)
- 労働判例732号49頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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