判例データベース
R社派遣労働者解雇事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- R社派遣労働者解雇事件
- 事件番号
- 名古屋地裁 − 平成18年(ワ)第3833号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 株式会社 - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2007年06月06日
- 判決決定区分
- 一部認容・一部却下・一部棄却(控訴)
- 事件の概要
- 被告は、特定の車両部品製造会社への労働者派遣を主たる業務とする会社であり、原告は平成16年9月20日頃、被告に期限の定めのない労働契約により雇用された者である。
原告は、平成16年9月20日頃から平成17年8月31日までA社に派遣され、ケース洗浄等に従事し、翌9月1日から同年11月30日までA社に雇用されて同一の業務に従事した。原告以外の派遣社員らは、同年12月1日以降も被告と雇用契約を締結してA社での業務に従事したが、原告については同日以降雇用が継続されなかった。
同年12月1日以降、被告は原告との間の契約が終了したとして賃金を支払わなかったところ、原告は被告との雇用契約は継続しているとして、被告の従業員としての地位の確認と、同日以降の賃金の支払いを請求した。 - 主文
- 1 原告が被告に対して労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2 被告は、原告に対し、平成18年1月26日から本判決確定の日まで毎月26日限り月額27万0880円の割合による金員及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3 原告の請求中、本判決確定の日の翌日から毎月26日限り月額34万9215円の割合による金員及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める部分を却下する。
4 原告のその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用はこれを5分し、その1を原告の、その余を被告の各負担とする。
6 この判決は主文第2項に限り仮に執行することができる。 - 判決要旨
- 1 本件雇用契約が合意解約されたか
本件雇用契約を解約する旨の明示的合意はなく、黙示の合意があったとも認められない。すなわち、自社社員を他社に使用させる形態としては出向があり、この場合、出向元会社との雇用契約を維持したまま出向先会社との間でも雇用契約が成立するのであり、A社との雇用契約が成立したからといって、被告との間の本件雇用契約が解約されたとはいえない。ましてや、本件においては、A社との雇用契約は3ヶ月という短期のものである上、その後は被告の社員として派遣されることが予定されており、このような実態に鑑みると、A社との雇用契約期間中は被告に在籍したまま出向しているに過ぎないというのが当事者の合理的な意思であると解することができる。
2 被告の継続雇用の拒否が解雇権の濫用に当たるか
本件雇用契約の合意解約が認められない以上、平成17年12月1日以降雇用しない旨の通告は解雇の意思表示に他ならないというべきところ、派遣先であるA社が原告の受入れを拒否したというだけでは、客観的に合理的な解雇の理由があるとはいえない。けだし、本件雇用契約は、被告とA社との間の派遣契約とは別個の法律関係であり、前者が後者の影響を直接受けることはないからである。また、これによって原告が被告に復帰せざるを得なくなれば、被告のように派遣先を1社しか有しない場合には対応に困難を来すことになるが、それも複数の派遣先に所定の期間に限って労働者を派遣する方法であれば支障がなかったはずであるのに、被告がA社に協力して派遣可能期間を超えて同一の職場で同一の労働者を稼働させていた結果、そのような事態を招いたこと、更には上記理由による解雇を有効とすれば、労働者を恣意的な理由で解雇することも可能になり相当ではないことからしても、上記判断を左右するものではない。
そこで、上記とは別に解雇の理由があるか検討するに、被告は、A社から原告の受入れを拒否された際に、原告が自転車で転倒して負傷し仕事を休んだこと、残業の指示に従わなかったことを告知されたと指摘するが、これらをもって客観的に合理的な解雇の理由に当たるとはいえない。また、被告は、原告に対しB社での就労を勧めた旨主張するが、就労場所や職務内容等を具体的に特定して就労を指示したとまでは認められず、その他解雇を相当とする事情は認められない。以上によれば、本件解雇は、社会通念上相当として是認できないものであるから、権利の濫用に当たり無効である。
3 解雇後の賃金について
原告は、A社での賃金額34万9215円を主張するが、本件雇用契約とA社との雇用契約は別個の法律関係であり、本件雇用契約に基づく賃金請求の額としては被告での27万0880円を採用すべきである。 - 適用法規・条文
- 収録文献(出典)
- 労働判例978号90頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
名古屋地裁 − 平成18年(ワ)第3833号 | 一部認容・一部却下・一部棄却(控訴) | 2007年06月06日 |
名古屋高裁 − 平成19年(ネ)第577号 | 控訴棄却(確定) | 2007年11月16日 |