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K社雇止事件

事件の分類
雇止め
事件名
K社雇止事件
事件番号
京都地裁 − 平成20年(ヨ)第500号
当事者
原告 個人2名 A、B
被告 株式会社
業種
運輸・通信業
判決・決定
判決
判決決定年月日
2009年04月20日
判決決定区分
一部認容・一部却下
事件の概要
 債務者はK新聞社の100%出資子会社であり、企画事業会社(K社)も同系列の会社である。

債権者Aは平成13年6月1日、K社に採用され、その後同年12月1日、平成14年4月1日以降平成17年4月1日まで6ヶ月毎に契約を雇用更新し、更に平成18年2月24日に債務者と本件雇用契約Aを締結し、平成19年3月19日及び平成20年3月19日に同契約を更新した。一方債権者Bは、平成16年6月5日K社に採用され、平成17年4月1日に雇用契約を更新し、平成18年2月24日に債務者と本件雇用契約Bを締結し、平成19年3月19日及び平成20年3月19日に同契約を更新した。

 債権者らが債務者において担当する業務は、記事体広告の作成、イベントの企画等といった債権者らが所有するノウハウ・取引先との人的関係により維持される要素が大きい業務であり、K社及び債務者は上記業務継続のために債権者らとの雇用契約の更新を繰り返した。債権者AのK社在籍時の有給休暇日数は、入社後毎年2日ずつ増加し、本件雇用契約Aを締結した後は、平成18年度が16日、同19年度は18日、同20年度は20日となった。また債権者Bの有給休暇も入社後毎年2日ずつ増加し、平成20年度は16日となった。
 債務者は、雇用契約の年限の上限を3年と定めて、その上限に当たる平成21年3月31日をもって、債権者らの雇用契約は終了したものとして扱ったが、債権者らは同年4月1日以降も雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認と、同日以降の賃金の支払いを求めて仮処分の申立てを行った。
主文
判決要旨
 K社、債務者が債権者らに対して雇用契約期間を3年を上限とすること(3年ルール)について説明したことを認めるに足りる資料はなく、雇用契約の契約書面にもこのような上限についての記載はない。

 債権者AはK社との雇用契約を平成16年4月1日に更新したことにより、同年6月1日に雇用期間が3年を超えることになったが、債権者Aは同年1月、2月から新たな企画の準備を始め、同年3月から12月までこの業務を遂行した。そして債権者AがK社から債務者に移った平成17年ないし18年にかけて各種イベント業務や記事体広告業務を担当した。また、債権者Bは平成16年から17年にかけて記事、試写会、イベントの業務を担当し、K社から債務者に移った平成17年から18年にかけて、各種のイベント業務を担当した。このとおり、K社及び債務者は債権者らに対し、雇用期間が3年を超えてしまうこと及び本件雇用契約の更新時期を顧慮することなく、債権者らが次に担当すべき業務を課していたものといえる。したがって、債務者及びK社が契約社員に対して期待を抱かせる言動を全く採っていなかったとまでいうことはできない。

 債権者らが本件雇用契約を締結した段階で、K社と債権者らとの間に存在した従前の各雇用契約について、K社が債権者らに対して、それまでの雇用契約を雇止めとする旨の通知をしたことは窺えず、また債権者らがK社に対して上記雇用契約に関し何らかの行為をしたことも窺えない。債権者Aの担当業務は国道事務訴の広報支援業務に限定されるものではなく、それ以外の種々の業務を担当していたのであって、国道事務所からの委託業務がなくなれば債権者Aとの雇用契約も終了するものであったと解することはできない。以上のことから、債権者らが3年ルールを知った上で、これを了解し納得していたとは認められず、債権者らに雇用継続に関する合理的な期待が生じたものというべきである。
 以上の事実等を考慮すると、債権者らと債務者との間の本件雇用契約が期限の定めのないものに転化したといえるか否かを判断するまでもなく、債権者らには債務者との間の雇用継続に対する正当な期待があったというべきである。そして、債務者による本件雇止めは客観的合理的理由を欠き、社会的相当性のないものとして無効であるといわざるを得ない。債権者らの本件雇用契約は従前の本件雇用契約A、本件雇用契約Bと同様の期間の定めがあるものとして更新時点(平成21年4月1日)で本件雇用契約が更新され、現在まで継続しているというべきである。
適用法規・条文
収録文献(出典)
労働判例981号165頁
その他特記事項