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D社いじめ退職強要事件

事件の分類
解雇
事件名
D社いじめ退職強要事件
事件番号
東京地裁 − 平成19年(ワ)第893号
当事者
原告 個人1名
被告人 3名 A、B、C
被告 株式会社D
業種
卸売・小売業・飲食店
判決・決定
判決
判決決定年月日
2008年11月11日
判決決定区分
一部認容・一部棄却(控訴)
事件の概要
 被告会社は、化粧品や医薬品の販売、美容マッサージ等を業とする株式会社であり、被告Aはその代表取締役、同Bは東京事業部の部長職、同Cは同事業部の課長職にあった者である。一方原告は、平成16年12月、テレフォンアポインターとして基本給18万8000円(歩合給なし)で被告会社に雇用され、平成17年4月からは正社員の美容カウンセラー(歩合給有り)として東京事業部で勤務していた。

 被告会社の主力商品である神草丸は医薬品でないにもかかわらず、被告会社では医薬品的な効能を詳細に述べるセールストークを記載したマニュアルを配布し、購入者にリボ払いローンを組むようにさせて高額商品を販売させており、国民生活センターに多数の苦情が寄せられていたことなどから、原告ら数名のカウンセラーはセールストークに疑問を抱き、被告Bや同Cに質問等したところ、原告らは不平分子とみなされた。

 平成17年10月28日に、顧客Pから「詐欺商法」とのクレームを受けた原告は、被告Bに指示を仰いで、これに従って解約する旨をPに示したが、本社からは解約を思い止まらせるよう電話で指示がなされた。同年11月24日の会議の席上、原告はPの解約について専務(被告Aの夫)から強く非難・罵倒され、その後カウンセラーの中で原告を除け者にするようないじめが行われて被告Bらは原告に同調するカウンセラーのことを「ろくでもない連中」などと罵った。同年12月17日、被告B及び同Cは、原告を呼びつけて「原告は嘘つきだ。私たちが会社のお金を横領して忘年会をしたと言った」等と追及し、同月19日、原告は本社の部長から、テレフォンアポインターに移るよう電話で命令された。原告はこれを拒否して文書で命令を出すよう求めたところ、専務から「あなたがいると会社が潰れてしまう。言うことを聞かなければ自宅待機だ」と電話で強く言われ、その後被告Bから全ての私物を持って会社から退去するよう命じられた。この出来事により、原告は重い荷物のため激しい腰痛となり、頸椎上がり症、腰部脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアがあると診断され、労基署に労災申請をした。また原告は、被告会社で罵倒・いじめを受けて反応性うつ状態で就労不能の診断を受けた。

 平成18年1月、被告会社の統括部長が、腰痛で動けない原告の自宅を訪問し、原告に対し出社できないのであれば退職届を出すよう求めた際、原告が腰痛とうつ病で出社できない旨伝えたところ、無断欠勤だとして原告は同年3月末に突然解雇された。
 原告は、正社員になってから基本給を減額されて月額12万8000円しか受給していないことによる合計30万円の未払賃金、時間外手当21万3392円及び不当に商品を売りつけられたことによる損害18万0545円の支払いを被告会社に請求した外、被告A、同B及び同Cらによる暴言、いじめ、退職強要等の不法行為により、腰痛、うつ病等に罹患して出社できなくなったとして、それによる精神的苦痛に対する慰謝料500万円、1年分の逸失利益225万6000円等合計823万8312円を被告らに対し請求した。
主文
1 被告株式会社D、同B及び同Cは、連帯して、原告に対し、361万7375円及びこれに対する平成19年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 被告株式会社Dは、原告に対し、51万1435円及びこれに対する平成18年4月1日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。

3 原告の被告Aに対する請求及びその余の請求をいずれも棄却する。

4 訴訟費用は、原告に生じた費用の3分の2と被告株式会社D、同B及び同Cに生じた費用を被告株式会社D、同B及び同Cの負担とし、原告に生じた費用の3分の1と被告Aに生じた費用を原告の負担とする。
5 この判決の第1項及び第2項は、仮に執行することができる。
判決要旨
適用法規・条文
民法709条、715条、719条
収録文献(出典)
労働判例982号81頁
その他特記事項
本件は控訴された。