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地公災基金東京都支部長(M高校教諭)心臓死上告事件【過労死・疾病】
- 事件の分類
- 過労死・疾病
- 事件名
- 地公災基金東京都支部長(M高校教諭)心臓死上告事件【過労死・疾病】
- 事件番号
- 最高裁 − 平成6年(行ツ)第24号
- 当事者
- 上告人 地方公務員災害補償基金東京都支部長
被上告人 個人1名 - 業種
- 公務
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1996年01月23日
- 判決決定区分
- 上告棄却
- 事件の概要
- K(昭和2年生)は、昭和32年6月16日から都立M高校に保健体育科教諭として勤務していた。
Kは、55年4月16日、健康診断検査の第1日目、午前9時頃階段で気分が悪くなり、救急車で病院に搬送され、心筋梗塞の疑いがあると診断されて入院を勧められたが、職場に戻って健康診断の業務を続けた。翌17日、Kは病院で検査を受けた後学校に戻ったところ、1時間程して気分が悪くなり、介抱を受けた後救急車が呼ばれて医者や救急隊の処置を受けたが、午後4時35分死亡した。
Kの妻である被上告人(第1審原告・第2審控訴人)は、Kの死亡は公務に起因するものであるとして、地方公務員災害補償法に基づく公務災害認定請求を行ったところ、上告人(第1審被告・第2審被控訴人)は、Kの死亡は公務上の災害とは認められないとの決定(本件処分)をした。控訴人は本件処分を不服として審査請求、更には再審査請求をしたが、いずれも棄却の裁決を受けたため、本件処分の取消を求めて本訴を提起した。
第1審では、公務とKの疾患には相当因果関係が認められないとして、控訴人の請求を棄却したため、控訴人はこれを不服として控訴したところ、第2審ではこれを認めて本件処分を取り消したことから、上告人はこれを不服として上告に及んだ。 - 主文
- 本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。 - 判決要旨
- Kは、昭和55年4月16日午前9時頃、勤務先において、労作型の不安定狭心症を発症し、救急車で病院に運ばれたものであるところ、Kはその際、入院の上適切な治療と安静を必要とし、不用意な運動負荷をかけると心筋梗塞に進行する危険の高い状況にあったにもかかわらず、その日は病院から勤務先に戻り公務に従事せざるを得ず、更に翌17日も、午前中に病院で検査を受けた後に公務に従事せざるを得なかったというのである。右事実関係の下においては、Kが4月17日の午後4時35分に心筋梗塞により死亡するに至ったのは、労作型の不安定狭心症の発作を起こしたにもかかわらず、直ちに安静を保つことが困難で、引き続き公務に従事せざるを得なかったという、公務に内在する危険が現実化したことによるものとみるのが相当である。そうすると、Kの死亡原因となった右心筋梗塞の発症と公務との間には相当因果関係があり、Kは公務上死亡したものというべきであるとした原審の判断は、正当として是認することができる。
- 適用法規・条文
- 地方公務員災害補償法31条、42条、45条
- 収録文献(出典)
- 労働判例687号16頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
東京地裁 − 昭和62年(行ウ)第135号 | 棄却(控訴) | 1991年03月22日 |
東京高裁 − 平成3年(行コ)第47号 | 原判決取消(控訴認容) | 1993年09月30日 |
最高裁 − 平成6年(行ツ)第24号 | 上告棄却 | 1996年01月23日 |