判例データベース

A銀行・B労働者派遣会社派遣労働者解雇上告事件

事件の分類
雇止め
事件名
A銀行・B労働者派遣会社派遣労働者解雇上告事件
事件番号
最高裁 - 平成18年(オ)第1186号
当事者
その他上告人兼申立人(申立人) 個人1名
その他被上告人兼相手方(相手方) 銀行(A)、労働者派遣会社(B)
業種
金融・保険業
判決・決定
決定
判決決定年月日
2009年03月27日
判決決定区分
上告棄却
事件の概要
上告人(第1審原告・控訴審控訴人)は、昭和62年2月、特定労働者派遣事業を行っていたC(IBS)に派遣労働者として雇用され、その後平成12年5月まで、6ヶ月毎にIBS又はその営業譲渡を受けた被上告人(第1審被告・控訴審被控訴人)Bとの雇用契約を更新されて、継続的に被上告人Aの支店に派遣され、事務用機器の操作の業務に従事していたところ、同年5月に雇用契約の更新を拒絶された。上告人は、被上告人Bに対し、更新拒絶は権利濫用に当たり無効であること、被上告人Aとの間に黙示の雇用契約が成立していることを主張し、従業員としての地位の確認を求めるとともに、被上告人らに対し慰謝料を請求した。
第1審、控訴審とも、上告人と被上告人Bとの雇用契約は終了しているとして、更新拒絶を有効としたが、控訴審では上告人の派遣先である被上告人Aの上司の対応に不適切な面があったとして、慰謝料1万円を認めたところ、これを不服として上告人が上告したものである。
主文
本件上告を棄却する。

本件を上告審として受理しない。
上告費用及び申立費用は上告人兼申立人の負担とする。
判決要旨
本件申立の理由によれば、本件は民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない。

裁判官Iの反対意見は、次のとおりである。

本件は、(1)派遣労働者である上告人が派遣元であるIBS又は被上告人Bに「常用型」として雇用されていた者であるか、(2)長期間更新を繰り返された雇用契約の更新拒絶について認められる「雇止めの法理」が、派遣労働者の雇用契約においても適用されるかという2点において、派遣労働者の雇用関係についての重要な法律問題を含む事件である。

(1)については、IBSは、上告人と雇用契約を結んだ時点では、常時雇用される労働者のみを派遣する特定労働者派遣事業の届出をしていたに過ぎず、一般労働者派遣事業の許可を得ていなかったところ、上告人の雇用形態がその後変更された形跡は窺われず更新拒絶の時点に至ったことからすると、上告人が「常時雇用される労働者」であって、上告人と被上告人との間の雇用契約が常用型に当たると解す余地が十分にある。また(2)については、上告人のように長期にわたって雇用契約の更新を繰り返されてきた労働者については、派遣労働者であっても雇止めの法理が適用される場合があり得るところ、本件がそのような場合に当たると解する余地があり、更新拒絶について合理的な理由があるか否かを判断しなければならないことになる。したがって、本件のうち上記部分を受理し、この点について上告審としての判断を示すのが相当であると考える。
適用法規・条文
収録文献(出典)
労働経済判例速報2047号25頁
その他特記事項
本件は、「解雇(その他)」の「A銀行・B労働者派遣会社解雇事件 高松高裁 平成15年(ネ)290号 2006年5月18日判決」の上告審である。