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神奈川(労働者派遣会社)解雇仮処分事件
- 事件の分類
- 解雇
- 事件名
- 神奈川(労働者派遣会社)解雇仮処分事件
- 事件番号
- 横浜地裁 − 平成20年(ヨ)第803号
- 当事者
- その他債権者 個人1名
その他債務者 株式会社 - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 決定
- 判決決定年月日
- 2009年03月31日
- 判決決定区分
- 一部認容・一部却下
- 事件の概要
- 債務者は労働者派遣事業を主な目的とする株式会社であり、債権者は債務者との間で平成20年10月1日から平成21年3月31日までの間雇用契約を締結し、自動車部品の梱包を行う注文主のI社の工場内で就業していた。
R社は、債務者に対し、平成20年11月14日付「派遣契約解除のお願い」と題する書面により、債権者外1名について最終派遣日を同年12月17日とする旨通知したところ、債務者は同年11月17日、債権者に対し、R社との労働者派遣契約が解除されたことを理由として、同年12月17日限り解雇する旨の意思表示をした。債務者は、同年11月25日、債権者に対しN自動車O工場での派遣業務を紹介したが、債権者はこれを断った。また債務者は同年12月4日、5日と、債権者に対し物流メーカーでの1日の派遣業務を紹介したが、債権者はこれも断った。更に債務者は、平成21年1月7日、債権者に対し物流メーカーでの派遣業務を紹介したところ、債権者が時給の点で返事を留保したため債務者から断った。債務者は債権者に対し、同月16日に介護センター業務、同月29日に特別老人ホームの介護スタッフ、トラック運転手を紹介したが、債権者はいずれも断った。債権者は、本件解雇は解雇権の濫用により無効であるとして、地位保全等の仮処分申請を行った。 - 主文
- 判決要旨
- 1 本件解雇の有効性
債権者と債務者は、平成20年10月1日から平成21年3月31日までの期間を定めた労働契約を締結しているところ、このような期間の定めのある労働契約は「やむを得ない事由」がある場合に限って期間内解除が許される(労働契約法17条1項、民法628条)。
この点、債務者とR社との間の労働者派遣契約は、R社からの解約の意思表示により平成20年12月17日限り終了していること、債務者は本件解雇の後、債権者に対し他の派遣先等の紹介をしたこと、債務者が平成20年8月には201名いた契約社員との雇用契約を打ち切り、契約社員の数が平成21年1月63名になったことが疎明される。
しかし、前記「やむを得ない事由」は、雇用期間の中途で解雇しなればならないほどのやむを得ない事由であることに鑑みれば、派遣元会社が派遣先会社との労働者派遣契約の解約に伴い、派遣労働者の就労場所が消滅し、派遣元会社が派遣料の支払を受けられなくなることをもって直ちに「やむを得ない事由」に当たると解することはできない。そして、本件においては、そもそも債権者とR社との間の労働者派遣契約の内容を明らかにすべき資料はなく、派遣先が解約の意思表示をした場合の派遣元に対する損害賠償義務の存否及び範囲も明らかでなく、また債務者の経営状況についての疎明資料はなく、人員を削減する経営上の具体的な必要性が明らかでない。更に本件において債務者が紹介した派遣先のうち平成21年1月29日に紹介したもの及び契約期間が1日のものを除いては、契約期間や具体的業務内容を認めるべき資料はなく、平成21年1月29日に紹介した業務はいずれも本件契約上の業務と種類が異なる。
以上によれば、本件解雇に「やむを得ない事由」があると認めることはできず、無効であるといわざるを得ない。 - 適用法規・条文
- 民法628条、労働契約法17条1項
- 収録文献(出典)
- 労働判例985号91頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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