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S郵便局副課長脳出血死上告事件【過労死・疾病】

事件の分類
過労死・疾病
事件名
S郵便局副課長脳出血死上告事件【過労死・疾病】
事件番号
最高裁 − 平成4年(オ)第1526号
当事者
上告人 個人1名
被上告人 国
業種
公務
判決・決定
判決
判決決定年月日
1996年01月23日
判決決定区分
上告棄却
事件の概要
H(昭和2年生)は、昭和18年9月郵便局職員として採用され、昭和52年7月から名古屋市S郵便局郵便課副課長として勤務していた。

Hは高血圧で、血圧降下剤の投薬を受けていたところ、昭和52年11月16日、差立作業に従事した後夕食のため外出したところ倒れ、病院に搬送されたが、翌17日未明脳出血により死亡した。

Hの妻である上告人(第1審原告、第2審被控訴人、本審では子供が承継)は、Hの死亡は公務災害に当たるとして、被上告人(第1審被告、第2審控訴人)に対して公務災害の認定請求をしたが、被上告人はこれを公務外とする決定(本件処分)をした。上告人は本件処分の取消を求めて本訴を提起したところ、第1審ではこれを認め本件処分を取り消した。そこで、被上告人はこれを不服として控訴したところ、第2審ではHの死亡は公務に起因するものとは認められないとして控訴を認容したことから、上告人はこれを不服として上告に及んだ。
主文
本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。
判決要旨
Hは、約9年前から本態性高血圧症が続き、健康管理医によって、月1回は診察を受けて治療及び日常生活上の指導を受けるように指示されていたにもかかわらず、これを遵守せず、食事・運動療法もしないなど必要な血圧コントロールを怠ったため、死亡10日前の検査では、最高血圧191及び最低血圧121と記録されるに至ったというのであり、他方、同人は郵便局郵便課副課長の地位にある管理職で、平常日は2時間の超過勤務が常態となっており、死亡の5日前には休日出勤しているなどの事情があるものの、その業務内容には、肉体的、精神的に過重労働と認め得るようなものはなかったというのである。そうであれば、Hの死因である脳出血は、血圧のコントロール不良による高血圧症の増悪に起因するものであり、公務に起因することの明らかな疾病とは認められないとした原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に諸論の違法はない。
適用法規・条文
国家公務員災害補償法15条
収録文献(出典)
労働判例687号18頁
その他特記事項
(注)本判決は、名古屋高裁平成元年(ネ)604号、1992年3月17日判決の上告審である。