判例データベース
電装広告用器具販売会社試用期間解雇事件
- 事件の分類
- 解雇
- 事件名
- 電装広告用器具販売会社試用期間解雇事件
- 事件番号
- 東京地裁 − 平成13年(ワ)第2450号
- 当事者
- 原告個人1名
被告D株式会社 - 業種
- 卸売・小売業・飲食店
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2002年01月22日
- 判決決定区分
- 一部認容・一部却下(確定)
- 事件の概要
- 被告は、電装広告用の器具の販売等を目的とする株式会社であり、原告は平成12年10月10日、被告に営業社員として雇用され、採用後3ヶ月間は試用期間とされた。
被告は従業員8名の零細企業であり、各営業社員に対し、1ヶ月当たり2件の契約を成立させることを、会社にとって不可欠の営業目標として掲げていた。ところが、原告は3ヶ月の試用期間中に契約を1件しか成立させず、社長らに営業に関する疑問点を質問しないなど、営業に対する熱意が足りなかった。被告は、原告を即戦力の営業社員として採用したが、前記のとおり、試用期間中に適格性と能力を欠くことが判明したことから、平成13年1月9日をもって試用期間を終了し、本採用しないと伝えた。しかし、年末年始に転職活動を強いることを避けるため、試用期間を10日延長し、同月19日、原告に対し「解雇通知」を交付し、本採用を拒否した。
これに対し原告は、実際に営業活動に従事したのは1ヶ月と3週間ほどに過ぎず、この間に、契約の成立が見込まれたものが2件、買主が承諾したが提携先のクレジット会社の審査が通らなかったために契約が成立しなかったものが1件あったが、これらの案件が完了しなかった責任が全て原告に帰すわけではないこと、他の従業員に対し営業上の疑問点を質問していたことなどを主張し、試用期間満了後においても被告との雇用関係は継続しているとして、その確認を求めた。 - 主文
- 判決要旨
- 被告は、小規模な会社であり、数名の営業社員が文字表示機を販売したり、広告を受注したりすることにより得られる収入に依存しているところ、原告が短期的にみて十分な販売実績を上げ、被告の収益に貢献したとはいえない。しかし、1件の契約を成立させたほか、契約の成立が見込まれた案件が3件あったことなどの就業状況に照らすと、原告は営業活動において相応の努力をしたといえる。被告が取り扱っていた製品は、限られた顧客を対象とする特殊なものである上、原告が販売営業に従事した期間は、入社直後の1ヶ月余りの短期間であったから、この期間中に原告が十分な販売実績を上げることができなかったのはやむを得ない面がある。また、本件解雇の時点において、原告が長期的にみても被告の利益に貢献することができないと判断することは相当とはいえない。そうすると、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認することができないから、権利の濫用に当たり無効である。したがって、被告は原告に対し、平成13年2月から本件判決確定まで、毎月25日限り、20万円の賃金を支払う義務を負う。
原告がいつまで労務を提供するかは必ずしも明らかでないから、本件訴えのうち、本判決確定後の賃金の支払いを求める部分については、訴えの利益を欠き、不適法というべきである。 - 適用法規・条文
- 収録文献(出典)
- 労働判例818号88頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|