判例データベース
K塾(非常勤講師・出講契約)解除上告事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- K塾(非常勤講師・出講契約)解除上告事件
- 事件番号
- 最高裁 − 平成21年(受)第1527号
- 当事者
- 上告人 学校法人
被控訴人 個人1名 - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2010年04月27日
- 判決決定区分
- 原判決破棄(上告認容)
- 事件の概要
- 被上告人(第1審原告・第2審控訴人)は、昭和56年4月、学校法人九州K塾との間で契約期間1年とする出講契約を締結し、同法人が上告人(第1審被告・第2審被控訴人)と合併してからは上告人との間で、平成17年度まで出講契約の締結を繰り返して非常勤講師を務めてきた。
被上告人は、平成17年12月、上告人から、平成18年度の1週間当たりの担当授業(90分1コマ)を、従前の7コマから4コマに削減すること、その結果私学共済から脱退してもらうことを告げられた。これに対し被上告人は、前年度と同じ7コマ程度を要望したが、上告人はこれを拒否し、被上告人が平成18年度の契約書について、上告人が指定した期日までに発送しなかったことから、上告人は被上告人に対し、出講契約の終了を通知した。
これに対し被上告人は、本件出講契約は労働契約に当たり、上告人が契約を更新しなかったことは雇止めに当たるところ、解雇権濫用法理ないしその類推適用により雇止めの必要性を欠くことなどから、本件出講契約の終了は無効であるとして、労働契約上の地位の確認、賃金支払いに加え、私学共済の加入資格を有することの確認と慰謝料500万円の支払いを請求した。
第1審では、本件出講契約は労働契約であり、その終了は雇止めに当たると認めたものの、解雇の法理が類推適用されることはなく、本件出講契約の終了は合理的であるとして、被上告人の請求をいずれも斥けた。被上告人はこれを不服として控訴に及んだところ、控訴審においては、被上告人が契約書を提出しなかったのは、上告人が被上告人の提案を一顧だにしないなど強硬な態度に終始し、この態度は被上告人の生活への配慮に欠け、これが被上告人を追い込んで冷静な行動を採ることを困難にしたものであるから不法行為を構成するとして、上告人に対し被上告人に慰謝料等350万円を支払うよう命じた。そこで上告人はこれを不服として上告に及んだ。 - 主文
- 原判決のうち上告人の敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき、被上告人の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。 - 判決要旨
- 上告人と被上告人との間の出講契約は、期間1年単位で、講義に対する評価を参考にして担当コマ数が定められるものであるところ、上告人が平成18年度における被上告人の担当講義数を週4コマに削減することとした主な理由は、被上告人の講義に対する受講生の評価が3年連続して低かったことにあり、受講生の減少が見込まれる中で、大学受験予備校経営上の必要性からみて、被上告人の担当コマ数を削減するという上告人の判断はやむを得なかったものというべきである。上告人は、収入に与える影響を理由に従来通りのコマ数の確保等を求める被上告人からの申し入れに応じていないが、被上告人が兼業を禁止されておらず、実際にも過去に兼業をしていた時期があったことなども併せ考慮すれば、被上告人が長期間ほぼ上告人からの収入により生活してきたことを勘案しても、上告人が上記申入れに応じなかったことが不当とはいい難い。また合意に至らない部分につき労働審判を申し立てるとの条件で週4コマを担当するとの被上告人の申入れに上告人が応じなかったことも、上記事情に加え、そのような合意をすれば全体の講義編成に影響が生じ得ることからみて、特段非難されるべきものとはいえない。そして、上告人は、平成17年中に平成18年度のコマ数削減を被上告人に伝え、2度にわたり被上告人の回答を待ったものであり、その過程で不適切な説明をしたり、不当な手段を用いたりした等の事情があるとも窺われない。
以上のような事情の下では、平成18年度の出講契約の締結へ向けた被上告人との交渉における上告人の対応が不法行為に当たるとはいえない。 - 適用法規・条文
- 07:労働基準法9条
02:民法709条 - 収録文献(出典)
- 労働経済判例速報2075号3頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
福岡地裁 − 平成18年(ワ)第2585号 | 棄却(控訴) | 2008年05月15日 |
福岡高裁 − 平成20年(ネ)第546号 | 一部認容(原判決一部変更)・一部棄却(上告) | 2009年05月19日 |
最高裁−平成21年(受)第1527号 | 原判決破棄(上告認容) | 2010年04月27日 |