判例データベース
東京地下鉄ホーム整理員アルバイト雇止事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- 東京地下鉄ホーム整理員アルバイト雇止事件
- 事件番号
- 東京地裁 - 平成21年(ワ)第19029号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 地下鉄株式会社 - 業種
- 運輸・通信業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2010年03月26日
- 判決決定区分
- 一部却下・一部棄却
- 事件の概要
- 被告は、旅客鉄道事業等を目的とする株式会社であり、原告は被告との間で、平成18年3月27日から6ヶ月間のパートタイマー労働契約書を締結し、就労していた者である。
被告は、平成19年5月7日、原告に対し本件契約が終了した旨告げ、原告の就労を拒否したものの、その後の話合いにより、同月21日に原告の就労を再開させ、その際、雇用期間を同日から平成19年11月20日までとする雇用契約を締結し、本件契約が継続していれば付与されるべき10日間の年休を付与せず、5日間のみ年休を認め、勤務が中断した同年5月7日から18日までの10日間の給与を支払わなかった(本件中間紛争)。
原告は、本件中間紛争に際し、被告に対し、本件契約が間断なく更新されたことを前提とした年休計算、中断期間の賃金の支払い等を求めて平成19年12月に東京都労働相談情報センターに相談したところ、同センターによりあっせんが行われ、平成20年4月9日、本件中間紛争に関する和解(本件中間和解)が成立し、被告は、平成18年3月27日から有期雇用契約が間断なく更新されているように改めた。被告は、本件中間紛争時にも、原告の勤怠不良を理由として、平成20年3月27日以降更新を行わない旨申し出をしたこともあったが、本件中間和解において、雇用期間を同年3月27日から2ヶ月間と定めて契約を締結した。
その後、原告と被告は2ヶ月毎の契約更新を繰り返していたが、被告は、平成21年1月26日、原告に対し、ホームの整理員の配置が必要なくなったこと、更新の限度は3年間を限度に運用していること等を理由に、本件契約の更新を行わない旨通告し、平成21年3月26日(本件期間満了日)をもって雇止めを行った。結局、原告と被告の雇用契約は、(1)平成18年3月27日から平成20年3月26日まで6ヶ月毎4回、(2)平成20年3月27日から平成21年3月26日まで2ヶ月毎6回、合計10回更新された。
これに対し原告は、本件契約は更新回数が10回、通算期間が3年に及んでいるほか、更新手続きが杜撰であり、雇用前の面接において長く勤めてくださいと説明するなどしており、原告も学生の身分が継続している以上、3年を超えて雇用を継続されることについ期待を有することについて合理性を有するとして、本件雇止めの無効による従業員としての地位の確認と賃金の支払いを請求した。 - 主文
- 1 本件訴えのうち本判決確定日の翌日以降の金員の支払を求める部分を却下する。
2 その余の原告の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は原告の負担とする。 - 判決要旨
- 被告は、平成17年以降、ホーム整理員アルバイトについて雇用契約を締結してきており、2ヶ月ないし6ヶ月の期間を定めて契約の更新を繰り返す一方で、更新の限度は入社日から3年と定めて運用してきている。被告が更新の限度を3年と定めたのは、同アルバイトが高校生以上の学生を対象としており、3年間は学生の在学期間にほぼ相当すること、同アルバイトの実際の就労期間は概ね短く、1年たたずに退職する者も多数いて、在籍者が激しく入れ替わること、比較的長期にわたり就労する者でも、就職活動を開始する時期に多忙により出勤できなくなり、ほとんどの者が3年以内に退職していることなどの状況があり、更新の限度を3年と定めるのが同アルバイトの実情に整合して合理的であることなどからである。被告は、アルバイトの定着率が低いことから、採用時にはできる限り長く勤めてくださいと説明しており、更新の限度である3年の範囲内では緩やかに更新を繰り返していたが、同アルバイトの雇用期間の実情は上記の通りであった。
被告は、ホーム整理員アルバイトについて、原則として、更新の限度を3年間と定めて運用してきており、これを超えて更新するのは例外的な措置であり、本件雇止めは被告の原則的な運用に沿うものであること、本件契約においては、契約更新の限度は本件期間満了日までと明示されていたこと、被告は原告に対し、本件期間満了日に先立つ直近の更新時において、本件期間満了日以降本件契約を更新しない旨明示していたことなどからすると、原告が本件契約による雇用継続の期待を有することが合理的であったものとは認められない。したがって、本件契約は、本件期間満了日の経過をもって、本件雇止めによる期間満了によって終了したものと認めるのが相当である。
よって、本件訴えのうち、本判決確定日の翌日以降の賃金支払請求の部分は訴えの利益がなく不適法であるから却下することとし、その余の原告の請求にはいずれも理由がないから、その余の部分を棄却することとする。 - 適用法規・条文
- 収録文献(出典)
- その他特記事項
- 労働経済判例速報2079号10頁
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|