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証券会社歩合外務員契約解消事件
- 事件の分類
- その他
- 事件名
- 証券会社歩合外務員契約解消事件
- 事件番号
- 岡山地裁 − 平成13年(ワ)第807号
- 当事者
- 被告A証券株式会社
被告B
被告A証券株式会社 - 業種
- 金融・保険業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2003年02月25日
- 判決決定区分
- 棄却
- 事件の概要
- 被告会社は証券業を営む株式会社であり、被告Bは平成8年2月から平成12年6月まで被告会社津山支店長の地位にあった者である。一方原告は、昭和60年4月、被告会社に入社して昭和62年4月から津山支店に配属され、平成7年8月に被告会社との間で歩合外務員契約を締結した者である。なお、原告の父も津山支店の歩合外務員であったが、平成10年11月30日に定年退職していた。
平成9年1月ないし2月頃、顧客Mに信用取引の追証が発生した際、営業員(Mについては原告)を通じてその解消を求めるという被告会社のルールに従い、被告Bは原告に対し、Mへの追証請求を指示した。平成8年ないし9年頃、Jに発生した追証が直ぐには解消しなかったため、被告Bは原告に対し、土日にJのところへ行って相談し、月曜日に処理方法について報告するように指示したが、原告は月曜日に欠勤し、その後も被告Bに追証解消の報告をしなかった。平成9年頃にKに追証が発生した際、原告は直ちに3日後の300万円の入金約束を取り付けて被告Bに報告したが、普段から被告Bは、追証が発生した顧客には歩合外務員を通じて必ずその解消方法を聞かせており、Kに関してはその維持率が20%を割る18%であったため、被告Bは原告に対し入金の実現性を何度も確認した。平成10年3月末、原告は父から引継予定であった顧客Nから「X」の信用取引の新規買い注文を受けたが、同年1月以降、津山支店では「X」の信用取引は禁止されていたため、被告Bは原告に対し、同注文を断るよう指示した。同年2月18日、歩合外務員Fの顧客がO製鋼の株式1万8000株を現物で買い、これを担保にして、同日にO製鋼の株式2万株を信用取引で買ったことがあったが、後日被告BはFに注意するとともに反対売買により決済させた。
平成9年1月の津山支店での席替えにより、原告は業務遂行上不便な席となったが、席替えはその前半年間における歩合外務員の売買手数料額の成績によって決定されるところ、原告の成績は当時の歩合外務員12人中11番目であった。津山支店では、勤務時間は午前8時40分から午後5時までと定められていたところ、歩合外務員の出勤は内勤者と比較するとルーズであったが、原告は欠勤が多く、大幅な遅刻もあり、顧客から苦情を受けたことから、被告Bから出勤時間を守るよう注意を受けたことがあった。原告の出勤状況即ち休み(土日等の休日を除く)、遅刻の状況を見ると、平成10年1月はそれぞれ、8回、8回、2月は2回、10回、3月は3回、11回、4月は15回、5回となっており、遅刻の場合は、午後からの出勤が半数を超えていた。
被告Bは、以前より、顧客から原告以外の担当に替えて欲しい旨要請を受けていたところ、平成11年2月1日に出社した原告に対し、仕事を終えたら連絡するよう伝えておいたが、原告は外出ボードに「当分の間休み」と書いたまま帰宅した。その後同月8日に出社した原告に対し、被告Bは顧客Jと連絡するように指示したが、原告はJに連絡しなかった。同年7月、原告が真面目に仕事をする気持ちがあるなら復職も可能であることを伝えるため、被告会社大阪支店相談役が津山支店を訪れ連絡をとったが、原告は面会を拒否し、その後も音沙汰がないため、被告会社は同月12日付通知書により、原告との歩合外務員契約を解除した。
原告は、追証の決済、信用買い、決済期日、座席配置、出社時間等において、被告Bは他の従業員と差別し、原告の業務を妨害し、不当に歩合外務員契約を解除したとして、慰謝料、逸失利益等総額4313万8983円の損害賠償を請求した。 - 主文
- 1,原告の請求を棄却する。
2,訴訟費用は、原告の負担とする。 - 判決要旨
- 「X」の信用取引に関し、原告の顧客とDの顧客との間で異なる取扱いをした事実までは認められるが、その差異には合理的な理由があり、これをもって差別とすることはできず、他に原告主張の事実を認めるに足りる証拠はない。
被告BはMに関し、被告会社のルールに則って許可や不許可の判断をしたにすぎず、原告主張の事実を認めるに足りる証拠はない。また、原告は、Fの顧客のO製鋼株買付に関し、Fと被告Bとの間で同一銘柄信用買い取引を相談の上で行ったと主張するが、その内容は、結局のところ、客観的な裏付けを欠く憶測に止まっている。更に、Jに関しては、原告主張の時期には、JがP株を信用取引の担保として入庫していないことは証拠上明らかであるから、これは同一銘柄の問題とはならず、かかる点で差別を受けたとする原告の主張は採用できない。また、被告BがJのP株信用取引を許可しなかったのは、Jが同人の妻名義での仮名口座取引を申し込んでいることを知ったためであり、仮に仮名口座取引が発覚すれば、被告会社自体にも監督庁の検査が入り営業停止処分を受けるおそれがあることからすると、当該不許可自体には合理的な理由が認められる。
信用取引決済期日の建玉処理は、同期日の1週間前から最終期日表が配布され、期日当日にも未処理の場合は本社から指示がされるなど、被告会社として重要視していたことが認められるところ、仮に原告主張のように、津山支店での信用取引決済状況の過半数が同日午後3時頃の決済になっているとしても、被告Bが原告に決済を急ぐよう指示を出すこと自体は当然であり、何ら差別には当たらない。
席替えが過去半年間に稼いだ売買手数料額の順位に基づくものであったとすれば、平成9年1月当時の同順位は、原告は歩合外務員12名中11番目で、Dが4番目であったことは明らかである。そうすると、原告が最後に残った2席から自席を選ばざるを得ないのは当然のことであり、差別を受けたとの原告の主張は採用できない。
原告は欠勤や大幅な遅刻出勤が多く、被告Bによる常日頃からの出勤時間に関する注意喚起を受けていたにも関わらず、これを守らなかったため顧客からの苦情を受けていたこと、また平成10年1月〜4月の原告の勤務状況を見ると、顧客宅の訪問などの事情を十分考慮しても、常軌を逸した勤務状況であったといわざるを得ない。以上、本件に現れた全証拠を総合考慮すれば、被告Bが原告に対して行った出社時間に関する注意には合理的な理由があり、これをもって差別を受けたと認めるには至らない。なお、原告は、Dその他の歩合給外務員も出社時間がルーズであったと主張するが、仮に歩合外務員の特殊性から多少勤務時間にルーズな面があったとしても、原告の常軌を逸した勤務状況に比し、それと同程度であったと認めるに足りる証拠がない以上、被告Bが他の歩合外務員以上に注意を払うのは至極当然であり、原告の主張は採用できない。
原告は、Dに営業妨害を受け、被告Bがこれを放置したと主張するが、仮に原告主張どおりであるとすれば、他の歩合給外務員から被告Bに対して出されてもおかしくない同様の苦情が一切ないこと等、本件に現れた全趣旨を総合して判断しても、原告の主張は認められない。
よって、原告の本件請求は理由がない。 - 適用法規・条文
- 02:民法709条、715条,
- 収録文献(出典)
- その他特記事項
- ・法律 民法・法律 民法・キーワード 慰謝料
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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