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N市水道局採用内定取消控訴事件
- 事件の分類
- 採用内定取消
- 事件名
- N市水道局採用内定取消控訴事件
- 事件番号
- 名古屋高裁 - 昭和54年(ネ)第205号
- 当事者
- 控訴人 個人1名
被控訴人 名古屋市 - 業種
- 公務
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1980年05月01日
- 判決決定区分
- 控訴棄却(上告)
- 事件の概要
- 控訴人(第1審原告)は、昭和51年2月、被控訴人(第1審被告)水道局職員採用試験(本件採用試験)を受験したところ、同年3月18日、合格通知を受けた。
被控訴人水道局では、最終合格者13名中7名に対し、同年4月1日からの勤務が可能かを問い合わせたところ、控訴人は同月23日、水道局総務課に電話で就労する意思を伝えた。そして、同月26日、控訴人は人事係に出頭して、指示された身上申立書、誓約書等必要書類を提出したところ、同年4月1日に出頭するよう指示された。
一方、同年2月開催の被控訴人市議会に水道局職員の増員を含む市職員定数条例案が上程されたが、同案は修正されて増員数が削られた。そのため被控訴人水道局では、前記7名の採用予定者の中から3名を抽出し、この3名に対しては予定通り辞令を交付したが、採用に漏れた原告を含むその余の採用試験合格者に対しては、同月29日、被告水道局長名で、昭和51年度の予算定数削減により、当初からの採用ができなくなったこと、試験合格の有効期間は合格の日から1年であることを内容とする通知を送付した。
これに対し控訴人は、被控訴人との間で既に労働契約が成立していると主張し、被控訴人職員の地位の確認と賃金の支払いを求めるとともに、その精神的苦痛に対する慰謝料100万円を請求した。
第1審では、辞令交付がなされていない以上任用行為は行われていないとして、控訴人の請求を棄却したことから、控訴人はこれを不服として控訴に及んだ。 - 主文
- 本件控訴を棄却する。
控訴人の当審において拡張した請求を棄却する。
控訴費用は原告の控訴人とする。 - 判決要旨
- 当裁判所も控訴人の本訴請求は、いずれも(当審において拡張した請求をも含めて)失当としてこれを棄却すべきものと判断する。
控訴人を被控訴人の水道局職員として採用する行為が任用行為という新たな公法関係を設定する性質のものである以上、その行為に明確牲を要求されることは蓋し当然の事理であるといわざるを得ず、この見地から見るとき、控訴人に対する辞令の交付がないことは控訴人の争わないところであり、控訴人主張の一連の手続きも右辞令の交付に準ずる任命権者による控訴人を任用する旨の明確な意思表示と目することは困難である。よって原判決は相当で、控訴人の控訴及び当審において拡張した請求はいずれもその理由がないので棄却する。 - 適用法規・条文
- 民法709条
- 収録文献(出典)
- その他特記事項
- 本件は上告された。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
名古屋地裁 - 昭和51年(ワ)第2756号 | 棄却(控訴) | 1979年03月26日 |
名古屋高裁 - 昭和54年(ネ)第205号 | 控訴棄却(上告) | 1980年05月01日 |
最高裁 - 昭和55年(オ)第827号 | 上告棄却 | 1981年06月04日 |