判例データベース

N社給与減額控訴事件(パワハラ)

事件の分類
職場でのいじめ・嫌がらせ
事件名
N社給与減額控訴事件(パワハラ)
事件番号
東京高裁 - 平成15年(ネ)第615号
当事者
控訴人 個人1名 
被控訴人 株式会社
業種
製造業
判決・決定
判決
判決決定年月日
2004年04月15日
判決決定区分
一部認容・一部却下・一部棄却(確定)
事件の概要
 控訴人(第1審原告)は昭和39年4月、被控訴人(第1審被告)に入社した者である。

 被控訴人は、昭和60年1月1日付けで定年を55歳から60歳に延長し、更に平成11年7月1日付けで、社員を1等級から11等級まで区分する能力主義に基づく新人事考課制度を施行した。同制度により、被控訴人は目標を達成していない控訴人を含む24名の従業員に対し退職を勧奨し、その結果、控訴人外1名を除き全員が退職した。平成13年1月1日付けで、控訴人は新設された廃液処理班に配転され、被控訴人は本件配転と同時に、控訴人を1等級に降格し、給与を従前の約半額に減額する内容の本件給与辞令を控訴人に交付した。 

 新人事制度の下、被控訴人は1等級から7等級までの職員については、5段階(E10点、F−E7点、F5点、M−F3点、M)と評価とされ、控訴人に対する人事考課は、平成12年4月頃から7月頃までの及び同年7月頃から12月頃までの総合評価は、いずれもF(中間)であった。控訴人は、本件給与辞令は、その内容が就業規則に根拠がないこと、退職勧奨を拒否したことに対する報復であること、配転とはいっても従前と同じ作業をしていること、病気に罹患して一時休養したことはあるが労働能力の大きな低下はないこと、代償措置もないことなどを挙げ、その無効確認と、それに伴う差額賃金相当額の支払いを請求した。

 第1審では、本件給与辞令は合理性を有しない無効なものと判示し、控訴人の請求のうち一定部分の差額賃金相当額の支払いを認めたが、控訴人は将来分の賃金の支払請求に係る部分が却下されたことを不服とし、更に平成15年6月支給及び12月支給の格賞与差額相当分の支払を被控訴人に対し請求した。
主文
1 本件控訴及び当審における請求の拡張に基づき、原判決を次のとおり変更する。

(1)被控訴人は、控訴人に対し、1110万4793円及び別紙未払賃金額目録金額欄記載の各金員に対する同目録起算日欄記載の各日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

(2)被控訴人は、控訴人に対し、平成16年4月から本判決確定の月まで、毎月25日限り、20万2920円及びこれらに対する格弁済期日の翌日から格支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

(3)本件訴えのうち、本判決確定の月の翌月から平成17年9月までの給与(月例給)及びこれらに対する遅延損害金の支払請求に係る部分を却下する。

(4)控訴人のその余の請求を棄却する。

2 訴訟費用は、第1審及び第2審とも被控訴人の負担とする。
3 この判決は、第1項(1)に限り、仮に執行することができる。
判決要旨
 当裁判所も、本件給与辞令は無効であり、控訴人の本件請求は権利濫用には当たらないと判断する。その理由は、原判決に説示するとおりである。

 控訴人の給与の差額相当分の支払請求は、平成13年1月から本判決確定の月まで、毎月25日限り、その差額相当分として20万2920円及びこれらに対する遅延損害金の支払を求める限度において理由があるが、その余の請求については将来の給付を求める利益があるとはいえないというべきである。
 また、平成15年支給の賞与の差額相当分の支払を求める部分(当審において追加した部分)についても、その差額相当分は、まず賞与ごとに控訴人に対する現実の支給額をその賞与基準賃金で除して得られた支給割合を算出した上で、賞与基礎賃金の差額相当分にその支給割合を乗じて算出することが相当である。したがって、平成15年6月の現実の支給額は60万4767円であり、同年12月の現実の支給額は65万5333円であり、その賞与基礎賃金は21万4670円であるから、支給割合は、それぞれ、2.817及び3.052であり、賞与基礎賃金の差額相当分が20万2920円であることは原判決の認定のとおりである。したがって、平成15年6月支給の賞与の差額相当分は57万1625円、同年12月支給の差額相当分は61万9311円である。
適用法規・条文
収録文献(出典)
[収録文献(出展)]
その他特記事項