判例データベース
電信電話会社短時間特別社員人事考課事件(パワハラ)
- 事件の分類
- 職場でのいじめ・嫌がらせ
- 事件名
- 電信電話会社短時間特別社員人事考課事件(パワハラ)
- 事件番号
- 東京地裁 - 平成15年(ワ)第2050号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 株式会社 - 業種
- 運輸・通信業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2004年02月23日
- 判決決定区分
- 棄却(控訴)
- 事件の概要
- 原告は被告に雇用され、平成11年7月19日から同14年4月30日まで、千代田営業支店営業推進担当の短時間特別社員として勤務していた。
原告に対する平成13年度下期業績評価は、同年4月に導入された人事評価制度(本件制度)に従ってなされたところ、短時間制特別社員は一般資格グループ2級として取り扱うこととなっていたため、原告は評価において一般資格2級として扱われた。平成11年1月から同13年2月まで、原告は営業推進担当の中のISDN担当部門に所蔵していたところ、ミスが多いとの苦情が上司に寄せられたため、平成12年7月頃からネットワーク受付業務及び他業務の支援を指示された。ところが原告は、カスタムの入力手順を覚えられなかったため、主にAM支援のデータの打出し作業、販売情報連絡表の取次や注文伝票のファイリング等の比較的簡易な業務を行うこととなった。なおデータの打出し作業等には原告は意欲的に取り組み、多量のデータの打出しを行い、必要な場合は残業も行った。
平成13年度下期業績評価において、被告は、原告が同年度前に担当したネットワーク受付業務に必要な顧客管理システムの操作方法を覚えることができなかったこと、そのため原告に他の簡易な業務を割り振ることとなったこと、上司から、作業の速度や正確性、時間に空きがあるときの他業務の支援及び帰宅前の引継ぎについて指導が必要であったこと、マイラインの契約獲得の目標20件に対し、評価対象期間中には1件の受注もなかったこと等を総合して、原告の業績評価をDとした。また平成13年度総合評価においては、同年度下期業績評価に加え、同年度上期において、ネットワーク受付業務に必要な管理システムの操作方法を自ら覚えられず、他の簡易な作業を割り振ることになったこと等を総合し、Dと評価した。
これに対し原告は、D評価は不当であり、C評価に基づく賞与、退職金を受ける権利があるとして、被告苦情処理調整委員会に異議申立てを行ったが却下され、更に労働局紛争調整委員会に対しあっせんの申立をしたが、被告がこれに応じずあっせんが打ち切られたことから、賞与及び退職金の差額の支払いを要求して本訴を提起した。 - 主文
- 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 - 判決要旨
- 使用者が賞与等を決定するために行う人事評価は、使用者が企業経営のための効率的な価値配分を目指して行うものであるから、基本的には使用者の総合的裁量的判断が尊重されるべきであり、それが社会通念上著しく不合理である場合に限り、労働契約上与えられた評価権限を濫用したものとして無効となるというべきである。原告に対する平成13年度下期業績評価及び同年度同年度総合評価は、原告の特別手当及び退職金の金額に反映する人事評価であるから、この理が当てはまり、使用者の総合的裁量判断が尊重され、それが社会通念上著しく不合理である場合に限り、労働契約上与えられた評価権限を濫用したとして無効になるというべきである。
平成13年度下期業績評価及び総合評価は本件制度に従って行われたこと、本件制度において原告の評価の基準とされた一般資格3級の社員資格基準は「部門業務に関わる必要な情報を収集し、客観的な分析・判断を行っており、会社の基本的な方針や戦略を自分の担当業務と関連づけている。」等とされていたこと、業績評価については、この社員資格基準をもとに、量的側面、質的側面及び価値創造の側面から判定し「期待し要求する程度であった」と評価されて初めてC評価となること、総合評価においては、この業績評価と、資格2級に期待される行動評価基準による判定を総合して「期待し要求する程度であった」と評価されて初めてC評価となることからすれば、原告自らがC評価されるべき根拠として主張するところは、原告が一般資格2級の社員資格基準に照らし期待し要求されていた目標に何ら言及することがなく、自分で設定した目標であるチャレンジシートの目標を達成したことや、担当した業務の物量のみを強調するものであって、いずれも失当というべきである。
更に、原告が平成13年度担当していたネットワーク受付業務に必要なコンピューターソフトの操作方法を自ら覚えることができなかったこと、そのため原告に他の軽易な作業を割り振ることとなったこと、作業の速度や正確性、時間に空きがあるときの他業務の支援及び帰宅前の引継ぎについて上司から指導が必要であったこと、マイラインの契約獲得の目標20件に対し、評価対象期間中に1件の受注もなかったこと等に鑑みれば、原告が割り振られた作業において意欲的に大量の業務をこなしたことを考慮しても、原告に対する平成13年度下期業績評価及び総合評価を「期待し要求する水準を下回った」とするD評価としたことが、社会通念上著しく不合理ということはできない。
したがって、平成13年度下期業績評価及び総合評価において、被告が原告についてしたD評価は、労働契約上与えられた権限を濫用したものとはいえず有効であり、原告にC評価を受けるべき権利があるということはできない。 - 適用法規・条文
- 収録文献(出典)
- [収録文献(出展)]
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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