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F社転籍社員降格事件(パワハラ)

事件の分類
職場でのいじめ・嫌がらせ
事件名
F社転籍社員降格事件(パワハラ)
事件番号
東京地裁 - 平成15年(ワ)第13533号
当事者
原告 個人1名 
被告 株式会社
業種
製造業
判決・決定
判決
判決決定年月日
2006年09月01日
判決決定区分
棄却(控訴)
事件の概要
 被告は、F電機及びF通が出資して設立された制御用電子計算機システムの製造・販売を業とする会社であり、原告はF電機の社員であり、平成10年頃から被告に出向し、平成13年3月被告に転籍した者である。

 被告における管理職等を除く一般社員を対象とする本件処遇規定は、いわゆる成果主義の処遇体系を目的として、職責に応じて社員を〜級に位置付け、各級内で1)ないし2)〜5)の成果区分を設定して、これに対応する賃金を支給する体系を導入した。この成果区分の見直しは、各年上期・下期2回の評価を基に行い、昇級・降級は直近2年4期の評価ポイントが一定数となった場合に実施するが、降級後1年2期の評価が一定値以上の場合に復級すること、成果区分が前年度から2区分以上低下する場合は1区分降下に止めることといった内容が定められていた。しかし、被告のプロパー社員は平成13年度から採用したため平成14年度における昇級、降級には前2年度の評価が存在しないことから、平成14年度に限っては、降級対象者を1年2期の評価ポイントを基に、所属長が目標設定不達である者とした。


 原告は、平成14年の降級につき、本件処遇規定上予定されていないものであり、これに続く平成15年の成果区分の位置付けも違法・無効であること、降級、成果区分それぞれの評価が不当であること等を主張し、級成果区分3)の地位にあることの確認と、これに対応した賃金等の支払いを請求した。
主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
判決要旨
1 本件労使合意の効力、意味等

 1)本件処遇規程によれば、被告社員の昇級・降級は直近2年4期の評価ポイントの合計に基づき行うことになっていたところ、平成14年度の昇級・降級については、被告社員はいずれも平成13年3月1日にF電機、F通から転籍してきた社員ばかりであり、同年上期、同下期の1年2期の評価ポイントしかなかったため、被告における直近2年4期の評価ポイントを得ることができなかったこと、2)このため、直近2年4期の解釈について3つの方法が考えられること、3)第1の解釈方法である平成14年度の昇級・降級を行わないということは、被告が成果主義の処遇体系を採ったことと矛盾すると考えられること、4)第2の解釈方法である平成12年度のF電機、F通の評価を使用するという方法は、両者間での評価態度の違いも大きく、公平性の観点からみて問題があること、5)残る解釈方法は、平成14年度の昇級・降級を2年4期のポイントの半分を基準に、被告での同13年上期・下期の評価ポイントの合計で昇級・降級を決めるとの解釈であるところ、当該解釈方法は、成果主義の処遇体系を採る被告の処遇制度に合致する最も難点の少ない解釈であること、6)労使双方とも、平成14年度の昇級・降級は本件労使合意したこと、7)前記第3の解釈方法に従い、被告において平成14年度に降級したのは原告を含め11名であるところ、原告を除く10名は第3の解釈方法による降級を承諾していること、原告は前記第2の解釈方法を適用しても降級対象者となったことが認められる。

 以上によれば、被告においては、本件処遇規定の昇級・降級基準である直近2年4期の解釈が、平成14年度の昇級・降級を決めるに当たって不明確であったということができ、被告は、平成14年度の昇級・降級を、同13年度上期・下期の1年2期の評価ポイントの合計を基準に決定することができるというべきである。

2 被告の原告に対する平成13年上期・下期の評価の相当性

 級職の社員は、各期が終了すると、目標評価シートに、個別業務目標ごとの達成度の自己評価等を記入して所属長に提出し、所属長はこれを基に総合評価を決めて人事部に上げ、最終的に全社的に評価を行った上で評価が確定するところ、原告は総務部長からの数回の求めにかかわらず、平成13年上期評価シートを上期中に提出せず、提出したのは上期終了後であった。原告の自己評価は各項目ともA(目標達成・5段階評価の3番目)であったが、総務部長は項目毎にB(目標未達・4番目)或いはC(目標を大幅に未達・5番目)の評価をし、職責レベルとしては級相当が適当との評価を人事部に上げた。そして、人事部は平成13年上期の原告の成績をCと評価した。原告は、平成13年下期には、期限内に目標評価シートを提出し、自己評価として、BからSS(目標を大幅に上回る成果・1番目)としたが、総務部長は項目ごとにCからAと評価し、人事部も同年下期についてCと評価した。


3 被告の原告に対する平成14年上期・下期の評価の相当性
適用法規・条文
収録文献(出典)
[収録文献(出展)]
その他特記事項
本件は控訴された。