判例データベース
L社配転拒否解雇事件(パワハラ)
- 事件の分類
- 配置転換
- 事件名
- L社配転拒否解雇事件(パワハラ)
- 事件番号
- 東京地裁 - 平成12年(ワ)第17192号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 株式会社 - 業種
- 卸・小売業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2002年03月08日
- 判決決定区分
- 棄却(控訴)
- 事件の概要
- 被告は、自動車の販売を業とする会社であり、原告は平成10年3月11日に被告に雇用され、被告松戸営業所において事務に従事していた女性である。
平成10年10月初め、本社(東京都杉並区)勤務で事務を担当していた従業員が同月末に退社することになったため、被告の常務はこの業務を原告に担当させようと、電話で本社への転勤を打診した。これに対し原告が通勤の困難さを理由に難色を示したため、常務は転居費用は多少であれば会社が負担するとか、昇給等で多少は原告に有利になるよう考慮する等の提案を行い、異動について前向きに検討することを依頼した。
被告においては、松戸営業所が赤字続きであったため、同年10月下旬頃には同営業所のサービス部門を同年11月20日限りで閉鎖することを正式に決定し、同年10月24日、代表者が松戸営業所に赴き、サービス部を閉鎖して本社工場に統合することを従業員に伝え、これに伴い、同営業所サービス部に所属したメカニック担当の従業員3名は本社工場に転勤することとなった。
同年11月8日、原告が、本社異動に伴い通勤に利用する自動車のガソリン代、高速道路利用料金及び駐車場の賃貸料を被告に全額負担してもらいたいと要求したところ、常務は、会社が負担できるのは電車通勤の定期代相当額のみと返事したため、原告はそれでは転勤に応じられないと回答した。原告のこの回答を受けた被告は、原告の担当していた業務が本社に一括して統括され、原告の仕事がなくなるため、原告が本社勤務に応じないのであれば解雇もやむなしとして、同年11月10日、同年12月9日付けで解雇する旨原告に通知した。
原告は、同年11月13日、電話で常務に対し、雇用保険受給申請のため必要な書類の交付を求め、常務は同日、原告に対し、雇用保険被保険者離職証明書、雇用保険被保険者資格喪失届の用紙を送付し、原告は同月21日、これら書面に署名押印をした上被告に送付した。原告は、同年11月12日、19日に就職活動を理由とした有給休暇を取得し、同月17日に事務引継ぎを行い、同月21日以降は出勤せず。同月28日、制服と健康保険証を返還した。また原告は、常務から退職届の提出を求められていたが、労働基準監督署に相談をした上、同月21日頃、被告に対し、自己都合退職ではないから退職届は提出しないこと、同月21日から12月9日まで休職する旨の手紙を、同期間の休職届を同封して常務宛送付したが、常務はこれを返送した。
原告は、膠原病を患っているため電車通勤ができず車で通勤していたところ、常務は高速道路料金等を会社で負担するとの話だったので転勤を前向きに考え、その後車の経費を負担できないとの話になって納得いかないと伝えたところ、突如本件解雇予告通知を受けたものであって、本件解雇は権利濫用として無効であるとして、従業員としての地位の確認と賃金の請求を求めた。 - 主文
- 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 - 判決要旨
- 1 原告は本件解雇の効力発生前に自主退職をしたか
原告は、解雇予告を受けた平成10年11月10日以降、被告を退職することを前提とした行動をとっていることが認められ、解雇それ自体はやむを得ないと考えていたことが窺われる。しかし、その一方で、労働基準監督署に相談に行った上、被告から求められた退職届の提出を拒否し、同年11月21日から12月9日までの間の休職届を提出するなどの行動を取っていることも認められるのであり、この事実に照らすと、11月13日の電話において、原告が自らの意思で退職するとの意思表示をしたとまでは推認することができない。
2 本件解雇の効力
1)被告が原告を解雇したのは、松戸営業所サービス部の閉鎖に伴い、平成11年11月21日以降サービス部に配置されていた人員が不要となったためであること、2)被告は解雇を選択する前に、原告に対し、サービス部の他の従業員3名と同様に本社での勤務の機会を提供したこと、3)原告が本社勤務を拒絶したため、結局原告に提供できる業務がなくなり、被告はやむを得ず予告期間を置いた上で原告を解雇したこと、以上の事実が認められ、この事実関係に照らすと、本件解雇にはやむを得ない事由があるというべきであって、権利の濫用であるとはいえない。 - 適用法規・条文
- 収録文献(出典)
- 労働経済判例速報1803号13頁
- その他特記事項
- 本件は控訴された。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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