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札幌中央労基署長(A社)うつ病休職控訴事件

事件の分類
うつ病・自殺
事件名
札幌中央労基署長(A社)うつ病休職控訴事件
事件番号
札幌高裁 - 平成20年(行コ)第1号
当事者
控訴人 札幌中央労働基準監督署長
被控訴人 個人1名
業種
公務
判決・決定
判決
判決決定年月日
2008年11月21日
判決決定区分
原判決取消(控訴認容)
事件の概要
 被控訴人(第1審原告)は、昭和49年3月A社に入社し、昭和63年4月に函館支店物流課長代行に昇格したが、同年10月に抑うつ状態と診断され、同月7日から同年11月30日まで休職した(第一次発症)。

 被控訴人は、同年12月に復職し、函館支店の企画仕入課主任として勤務したが、課長の退職に伴い課長代行的な立場になり、同年8月には札幌西配送センター主任に転勤になった頃から次第に疲労の蓄積や不眠などの症状を感じるようになり、平成4年4月30日、抑うつ状態と診断され、3ヶ月間の休養と自宅療養を指示された(第二次発症)。

 被控訴人は、半年間の自宅療養後、同年10月に職場復帰し、倉庫での出荷作業等に従事したが、平成7年5月頃、突然激しい気分の落込みを感じて約2週間休職し(第三次発症)、同年10月20日、被控訴人はA社から退職勧告を受け、病状は更に悪化した。

 被控訴人は、控訴人(第1審被告)に対して、業務に起因する抑うつ状態を理由として、労災保険法に基づき、休業補償給付及び療養補償給付の支給を請求したが、控訴人が不支給処分(本件処分)としたことから、本件処分の取消しを求めて本訴を提起した。
 第1審では、第一次発症、第二次発症及び第三次発症とも業務起因性があると認め、本件処分を取り消したことから、控訴人はこれを不服として控訴に及んだ。
主文
1 原判決を取り消す。

2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
判決要旨
 第一次発症のうつ病は業務によるものと認めるのが相当であるが、そのうつ病が治癒した後に再び発症したうつ病は、第一次発症の原因たる業務及び第一次発症の存在を考慮することはできず、当該治癒以降の業務が、第二次発症との関係で業務起因性を有するかどうかで判断しなければならず、本件の場合、第二次発症の初期異変は、第一次発症のうつ病の治癒後約1年9ヶ月経過した頃生じており、その間の業務の負荷の程度は精神障害を発生させるおそれがあるほどに過重なものとは認められず、また第三次発症の場合も同様であるので、第二次発症及び第三次発症のうつ病は、業務に起因する疾病とは認められない。
適用法規・条文
労災保険法13条、14条
収録文献(出典)
平成21年版労働判例命令要旨集218頁
その他特記事項
(注)本件は、「札幌地裁平成17年(行ウ)9号」2007年11月30被判決の控訴審