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N大学懲戒雇止事件(パワハラ)

事件の分類
解雇
事件名
N大学懲戒雇止事件(パワハラ)
事件番号
秋田地裁 - 平成22年(ヨ)第18号
当事者
債権者 個人1名 
債務者 学校法人
業種
サービス業
判決・決定
判決
判決決定年月日
2010年10月07日
判決決定区分
一部認容・一部却下
事件の概要
 債務者は、教育事業を目的として、N大学及びその他の2つの大学、1つの高校を設置・運営している学校法人であり、債権者は平成15年4月に債務者に雇用され、N大学法学部の講師、准教授として国際法を担当してきた者である。

 債務者は、大学の教員等の任期に関する法律(任期法)に基づき、大学・短大の専任教員の任期に関する規程(任期規程)を制定し、平成19年4月から全面的に任期制を導入し、これに伴い、債権者と債務者は、任期を平成19年4月1日から1年間とする内容の任期制雇用契約を締結した。その後任期満了後に債権者が再任用され、任期を更に2年(平成22年3月31日まで)とする任期制雇用契約が締結された。

 債務者における業績審査は、各教員に対する評価シートを中心にして行われ、同シートでは、教育、研究、学内貢献度、自己点検の4つの大項目からなり、総合評価として、AAA、AA、A、A-、B、Cの6段階の評価がなされていた。債務者は、任期制導入と同時に成果給を導入したため、平成19年度から評価シートによる評価を行うことになったが、従前の年功序列制からの継続的な運用を考慮して、ほとんどの教員に対して給料が現状維持となる評価(A-)又は1号給昇給する評価(A)とする方針で評価した。債権者の総合評価は、平成19年度がA-、平成20年度がAであったが、平成21年度は、学務に非協力的であること、研究業績がないこと、協調性がないことなどを理由として、Cとされた。

 債権者は、平成21年7月末、学生募集活動の一環として、東北6県所在の高校約500校に対し、N大学のイメージ、進学希望の生徒の有無等について、内部の決済を受けることなくアンケート(本件アンケート)を送付した。これについて債務者は、対外に発信する文書については事前に決済を受ける旨定めた文書取扱内規に違反したこと、アンケートの内容も粗雑で債務者と高校との間の信頼関係が損なわれたことなどを理由に、就業規則に基づき、債権者を准教授から講師に降格する懲戒処分を行い、これに伴い基本給を減給した。

 これに対し原告は、本件雇用契約の雇止めについては解雇権濫用の法理が類推適用されるところ、更新手続きは形式的で雇用継続に対する債権者の期待には合理性があること、本件アンケート送付について事前に理事長に説明しており、内容も常識的であったことから、形式的に文書取扱内規に違反するとしても、降格及び減給をすることは均衡を欠き、本件懲戒処分は権利濫用に当たること、債権者の人事評価からすれば、更新拒絶に合理的な理由は存在しないことを挙げて、雇止めの無効により平成22年4月以降も雇用契約上の地位を有していることを主張して、仮処分の申立を行った。
主文
判決要旨
1 債務者は、債権者に対し、平成22年10月から平成24年3月まで、毎月21日限り、27万8000円を仮に支払え。

2 債権者のその余の申立をいずれも却下する。

3 申立費用は債務者の負担とする。
適用法規・条文
収録文献(出典)
労働判例1021号57頁
その他特記事項