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S社総務社員急性心筋梗塞等事件(パワハラ)
- 事件の分類
- 過労死・疾病
- 事件名
- S社総務社員急性心筋梗塞等事件(パワハラ)
- 事件番号
- 神戸地裁 − 平成20年(ワ)第1698号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 株式会社 - 業種
- 製造業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2011年04月08日
- 判決決定区分
- 一部認容・一部棄却(確定)
- 事件の概要
- 被告は、航空機等の製造販売及び修理、特装自動車その他の輸送車両の製造販売及び修理等を業とする株式会社であり、平成21年6月、M社を吸収合併し、その権利義務を承継した。原告(昭和30年生)は、昭和54年3月に大学を卒業後、3社において営業、人事等を経験した後、平成元年2月にM社に正社員として雇用され、平成19年8月8日付けで同社を退職した者である。
原告は、M社に採用された後、大阪市内での研修、西宮市での総務業務、東京本社での総務業務に従事した後、平成9年4月から西宮市で総務業務に従事していたところ、平成10年5月から10月にかけて自律神経失調症により休職した。原告は復職後の平成11年4月から、印刷受注を行う大阪の「O事業部」に配属され、営業を担当していたが、同年9月24日の帰宅後急性心筋梗塞を発症して同年10月17日まで入院し、平成12年1月17日から21日までも入院した。原告は復職後、平成13年3月までO事業部、翌4月からはP事業部に出向扱いとなり、営業業務に従事したが、同年7月10日から21日まで入院した。同年12月、原告は心臓機能障害について神戸市長から身体障害者等級4級の認定を受け、これをM社に報告した。
平成15年4月から、原告は宝塚市の事業本部で、社員採用・教育担当の業務を担当し、平成16年4月かに東京本社総務部に配属になって、新入社員基礎教育、高卒採用試験関連業務、階層別教育等を主務として担当していたが、平成17年5月27日に、通勤途上の駅構内においてパニック障害によって意識を消失して転倒し、足首捻挫、打撲の傷害を負い、併せて心臓の治療もなされた結果、意識消失発作疑い、狭心症、陳旧性心筋梗塞等と診断された。同年6月20日に退院した後、原告は精神的負担が改善するまで当分の間休業を要するとの診断書を提出して休業し、職場復帰について上司らと話し合ったところ、上司らは、休職者取扱規程に基づき、平成18年2月から18ヶ月間の休職を命じた。M社は原告の休職期間満了後、3回にわたり産業医との面談を求める書面を送付したが、原告が休職期間満了まで産業医と面談しなかったため、平成19年8月8日の休職期間満了をもって原告を退職扱いとした。
これに対し原告は、業務が過重でほとんど休暇も取れなかったことから、業務と心臓機能障害との間には相当因果関係が認められること、身体障害者等級4級に認定されたことから合理的な配慮がなされるべきところ、労働が依然として苛酷で、上司から、「身障者は働かん」、「仮病やろ」、「お前の足が1本でもなかったら身体障害者と認めてやる」などとパワハラを受け、これらが原因で精神障害を発症したことなどを挙げ、これらはM社の安全配慮義務違反に当たるとして、M社(訴訟承継後は被告)に対し、慰謝料1700万円、逸失利益7007万9937円(損益相殺後7651万6319円)、弁護士費用765万円を請求した。
なお、原告は、平成12年4月から平成22年3月までの10年間に30回、ハワイに渡航し、5日から13日間滞在した。 - 主文
- 1 被告は、原告に対し、2358万7106円及びこれに対する平成20年6月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを10分し、その3を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 - 判決要旨
- 1 原告の心臓機能障害の有無及びその程度について
原告のCTR(心胸郭比)、EF(駆出率)の数値からすると、原告に心機能の低下があったと直ちに認めることはできない。他方、原告は平成17年6月の検査で冠攣縮の所見が認められ、平成19年11月27日付けP医師の診断書には、陳旧性心筋梗塞のほかに「冠攣縮性狭心症」との記載があることからすると、現在冠攣縮狭心症を残していると認められる。更にP医師やQ医師の意見書では、左室・心突部の運動低下を認める旨の所見が示されていることなどを総合考慮すると、原告には心機能低下による中程度の運動耐用能の低下が認められる。以上によれば、原告は、P医師の平成19年11月27日付け診断書の「治癒年月日」である平成19年11月14日に症状固定となった「胸腹部臓器の機能に障害を遺し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」として労災則別表第1の9級7号の3に該当する心機能障害を残していると認めるのが相当である。
2 原告の精神障害の有無及びその程度について
原告は、平成17年6月頃に、ICD−10の診断基準に照らすとF40の「恐怖症性不安障害」に該当する精神疾患を発症したと認めるのが相当である。そして、原告の精神疾患の程度は、労働基準監督署に対する医師の意見書において現在の原告の抑うつ状態が強度とされていること、原告が平成19年8月に交付を受けた精神障害者保健福祉手帳では、原告の精神障害の程度について、障害等級3級に該当するとされていること、M社が主治医との面談を踏まえて原告に18ヶ月間の休職を命じ、休職期間満了後も産業医の意見を踏まえて原告の休職を不可と判断したこと、原告の照会に対する回答書において、平成21年9月25日頃の原告の症状について、相変わらず予期不安が強く、感情過敏は激しく、抑うつ状態が強く見られる旨の意見が述べられており、原告がM社を退職してから2年を経過した時点でも抑うつ等の症状がみられる一方、現在、原告に就労低下の意欲が窺われず、通常の作業を持続することや、他人との意思伝達、対人関係・協調性などの就労に当たって必要な能力の低下があることが窺われる具体的な事情を認めるに足りる証拠がないことなどを踏まえると、原告が発症した精神疾患の程度は、「局部の神経症状を残すもの」として労災則別表第1の14級9号に該当するとみるのが相当である。
3 原告の業務と心臓機能障害との間の因果関係について
原告の業務の過重性について検討するに、原告が急性心筋梗塞を発症する前6ヶ月間の労働時間数等は、発症前2ヶ月間ないし6ヶ月間は42時間24分から78時間35分、発症前1ヶ月間は85時間30分であり、いずれも業務と発症との関連性が強いとされる時間を超えるものではない。しかしながら、原告は夏休み後の平成11年8月19日から9月4日まで、5日の休日労働を含めて17日間連続して勤務し、同月5日の休日を挟んで翌6日から14日まで、2日の休日労働を含めて9日間連続して労働し、同月6日から13日までの間は概ね1日当たり2時間から4時間の時間外労働に従事していたことを指摘することができる。これに加えて、発症前2ヶ月間の時間外労働時間数が78時間35分であって、業務と発症との関連性が強いとされる80時間に近い時間数であることも考慮すると、原告が急性心筋梗塞を発症する前に従事していた業務は、量的に過重なものであったと評価することができる。また、原告の業務は相当広範囲の移動を必要とする業務であり、原告は移動のために私有自動車を主として使用していたのであって、自動車の運転等による負担も無視できないところである。当時原告には直属の部下がなく、自ら担当する上記のような業務について自ら行わなければならなかったことも考慮すると、原告の業務は、質的にも相当程度過重なものであったと評価することができる。
M社が平成11年6月に実施した健康診断結果によると、血清総コレステロール値が、虚血性心疾患の発症率が増加するとされる220/mgに近い217/mgであり、冠動脈疾患による死亡率の相対危険度が1.5倍とされるLDLコレステロール値140/mgを超えていて、原告は当時、虚血性心疾患等の発症に関するリスクファクターとなる高脂血症を有していた。原告は、平成10年6月、抑うつ状態、不安神経症と診断され、また精神疾患発症の原因の1つとして妻との関係の悪化を挙げるなど、家庭生活においてストレス要因があったと認められる。
以上にみたとおり、原告の業務が量的に過重なものであり、質的にも相当程度過重なものであったこと、一方で健康診断の結果によっても、原告の心臓に異常は認められておらず、原告の虚血性心疾患のリスクファクターとして高脂血症が挙げられるものの、虚血性心疾患の発症が増加して来るとされる血清総コレステロール値の基準値を超えていないこと、家庭生活におけるストレス要因は見受けられるものの、その程度が重いとまでは評価できないこと、原告にはそのほかにみるべき虚血性心疾患のリスクファクターを認められないことなどを総合的に考慮すると、原告が有していた血管病変等の基礎疾患が、原告が従事していた業務に起因する過重な負荷によってその自然的経過を超えて増悪し、急性心筋梗塞を発症するに至ったというべきであり、上記の業務による過重な負荷が急性心筋梗塞の発症の原因となったものとして、原告が従事していた業務と急性心筋梗塞の発症、原告が後遺障害として残した陳旧性心筋梗塞との間に相当因果関係を認めるのが相当である。
また、医師の意見書には、原告が冠攣縮性狭心症を基礎疾患として急性心筋梗塞を発症したことを窺わせる記載があること、原告は急性心筋梗塞を発症した平成11年9月25日以降も、2度にわたり再入院し、平成13年12月以降内科に通院し、平成17年3月23日付け診断書には、「労作性狭心症、陳旧性心筋梗塞」との記載があることからすると、原告が一貫して狭心症状を訴えており、狭心症の診断がなされていたことなどに照らせば、原告の後遺障害の1つである冠攣縮性狭心症についても、確定診断がなされたのが平成17年5月27日に実施された検査の結果であることを考慮しても、原告が発症した急性心筋梗塞及び陳旧性心筋梗塞と一連の疾患とみるべきであり、原告の業務との間に相当因果関係を認めるのが相当である。
4 原告の業務と精神障害発症との間の因果関係について
労働者に発症する精神障害は、業務による心理的負荷のほか、業務外の心理的負荷や労働者の心理的反応性、脆弱性の個体側の要因といった様々な要因が考えられるから、業務と精神障害の発症との間に相当因果関係があるというためには、これらの要因を総合考慮した上で、業務による心理的負荷が、社会通念上、精神障害を発症させる程度に過重であるといえる場合に、当該精神障害の発症が業務に内在又は通常随伴する危険が現実化したものであるということが必要というべきである。具体的には、勤務時間、職務内容等が過重であるために当該精神障害を発症したと認められるかどうかをまず判断し、これが認められる場合に、業務外の心理的負荷や精神障害の既往症や性格要因等の個体側の要因を判断し、これらが存在し、業務よりもこれらが発症の原因であると認められる場合でない限り、相当因果関係を認めるのが相当である。そして、その判断は、当該労働者と同種の業務に従事し、遂行することが許容できる程度の心身の健康状態を有する労働者(平均的労働者)を基準とすることを原則とすべきである。
しかしながら、あらゆる場合に、相当因果関係の有無を判断するに当たって、平均的労働者を基準とすることは妥当でない。すなわち、企業が、身体障害者等の障害を有する者を雇用して業務に従事させた場合、施行設備や職場環境を改善したり、特別の雇用管理や能力開発等を行うなど障害の程度に即して当該労働者の安全に配慮することが求められるところ、業務と災害の発生との間の相当因果関係の有無について、平均的労働者を基準とすると、業務と災害との間の相当因果関係を認めるのが実質的に困難になり、障害者が企業の安全配慮義務違反を理由として責任を追及する道を閉ざすことになりかねない。また、企業が障害者を障害者と知りながら雇用し、業務に従事させた場合には、当該障害を有する障害者を基準として業務と災害の発生との間の相当因果関係の有無を判断したとしても、企業にとっても酷な結果をもたらさないと考えられる。そこで、企業が、障害者をその者が障害を有することを知りながら雇用し、又は障害を負ったことを知りながら雇用を継続した場合には、当該障害を有する労働者を基準として、業務と災害の発生との間の相当因果関係を判断するのが相当である。そして、M社は、原告が心臓機能障害について身体障害者等級4級に認定された後も、原告の雇用を継続し、業務に従事させた以上、身体障害者4級に相当する心臓機能障害を有する労働者を基準として、原告の業務と原告が発症した精神障害との間の相当因果関係の有無を判断するのが相当である。
平成17年3月31日に始まった平成17年度の新入社員研修においては、原告がカリキュラムを最も多く担当しており、相当程度の時間外労働を要する状況であったとみられ、同年4月の時間外労働時間が42時間と、原告が平成17年6月頃に精神疾患を発症する前6ヶ月間の中で最も長時間になっている。もっとも、健常人については1ヶ月当たり45時間を超える時間外労働時間が認められない場合は、業務と発症との関連が弱いとされるが、心機能障害を遺すために身体的活動が制限されている者は、健常人と同様の労働をした場合であっても、健常人よりもより疲労が蓄積されるものと考えられることに照らし、労働時間そのほかの量的な面からみて、原告の業務は相当程度過重なものであったということができる。
身体障害者等級4級の心臓機能障害者は、家庭内の通常の活動や極めて穏和な社会生活には支障がないが、それ以上では著しい制限があるため、座業程度が限界であるとされることに照らすと、時間中ずっと立ち仕事となる現場研修の引率は、心臓に過度の担をかけることとなるおそれがあり、質的に過重に過ぎる業務であったといわざるを得ない。また、原告は片道1時間30分かけて通勤していたのであり、長時間の通勤が原告に精神的ストレスを与えていたことが認められる。更に「早く仕事せんかい」、「お前は仮病やろ」との苛烈なパワーハラスメントとなるような発言や、「元気そうやのに、本当に身障者か」など、差別的発言を認めるに足りる証拠はないが、原告が残していた心臓機能障害が目に見えないものであるために、上司であるAを始めM社の者に十分な理解が得られておらず、原告が職場において精神的ストレスを感じていたことが窺われる。
原告は、妻と別居し、離婚協議中であるが、かかる出来事の一般的な心理的負荷の程度は大きいものと考えられるが、原告が妻と別居したのは平成12年4月からであって、原告は東京本社に転勤した際も単身で社宅に入居したのであり、時間的経過ととともに心理的負荷は徐々に弱まっていくから、平成12年4月から別居し続けている妻との関係が、原告が平成17年6月に発症した精神障害の発症の要因となり得るほどの精神的負荷であったとは考え難い。
原告には精神疾患の既往歴があったことが認められるが、原告が平成11年9月に急性心筋梗塞を発症した後は徐々に投薬を減少させたとの記載があり、M社の関係者も原告の言動等に異常を感じていなかった旨述べていることに照らすと、前記原告の精神障害の既往症が、原告が平成17年6月頃に発症した精神疾患に関係しているとはみられない。原告の性格傾向をみても、原告が若干執着心が強い性格であることが窺われるものの、うつ病の発症に寄与する性格を有していたとまでは認められない。
以上、原告は身体障害者等級4級の心臓機能障害を有するにもかかわらず、原告が東京本社で従事していた業務が、平成17年3月から4月にかけて繁忙であり、特に同年4月の時間外労働時間は42時間に及び、1日中立ち仕事となる業務にも複数日従事していたことなどからすると、原告の業務は、後遺障害等級4級に相当する後遺障害を有する原告を基準にすれば、量的・質的に相当程度過重であって、1日1時間30分を要する出勤を続けたことにより負担がかかる状況であったこと、上司から心臓機能障害について十分な理解が得られておらず、日頃の業務において原告が精神的ストレスを感じていたことが窺われることなども考慮すると、社会通念上、原告は平成17年6月に発症した精神障害の原因となり得る程度の疲労の蓄積や精神的ストレスをもたらす過重なものであったと認められ、他方業務外の要因について有力なものは認められず、原告の精神疾患の既往症も原告が発症した精神疾患に関連していないことなどを考慮すると、原告が業務よりも有力な発症要因となるような精神疾患に対する脆弱性を有していたと認められないから、原告の従事していた業務と平成17年6月に原告が発症した精神疾患との間に相当因果関係を認めるのが相当である。
5 M社の安全配慮義務違反について
使用者は、その雇用する労働者に従事する業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当である。
M社は、原告が夏休みを終えた平成11年8月19日以降、数時間の時間外労働や休日労働を行い、疲労を過度に蓄積して心身の健康を損なう危険があることを認識することができたのであるから、原告の心身の健康を損なうことがないよう、人員増加や役割分担を実施するなど、原告の業務負担を軽減する措置を講じる義務を負う。しかるに、M社はこれを怠り、漫然と原告に過重な労働に従事させたものであり、原告に対して負う安全配慮義務を怠ったものといわざるを得ない。
M社は、原告を東京本社に転勤させるに当たり、健常者であっても通勤に70分を要し、朝のラッシュアワーの時間では満員電車での通勤を余儀なくされる社宅への入居を勧め、原告が産業医等に対して通勤の負担の軽減を求めていたのに対し、フレックス通勤、勤務時間短縮、配置転換等を検討していたものの、結局これらを実現せず、平成17年度の新入社員研修の際、原告に対して長期間の立ち仕事となる現場見学の引率をさせるなど、健常人と変わらない程度の労働をさせていたものであって、原告に対して負う安全配慮義務を怠ったものといわざるを得ない。以上によれば、M社は、原告の心臓機能障害発症及び精神障害発症に関し、原告に対して負う安全配慮義務に違反したのであるから、M社の地位を承継した被告は、民法415条に基づき、心臓機能障害及び精神障害の発症により原告に生じた損害を賠償する責任を負う。
6 素因減額の有無及びその程度について
原告は、急性心筋梗塞を発症する前、LDLコレステロール値140/mgを超えていた、高脂血症を有していたのであり、これが原告の急性心筋梗塞、原告が残した心臓機能障害の発症に寄与していたものとみられるが、その程度を重く見ることはできない。
原告の性格的傾向は、若干執着心が強い性格であることが窺われるものの、ある業務に従事する特定の労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでない場合には、裁判所は、業務の負担が過重であることを原因とする損害賠償請求において使用者の賠償すべき額を決定するに当たり、その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等を心因的要因として斟酌することはできないというべきであるところ、上記の原告の性格的傾向は、いまだ原告の従事していた業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものではない。したがって、原告の性格傾向を心因的要因として斟酌することは相当でない。
以上によれば、原告の心臓機能障害の発症には、原告が当時有していた高脂血症のリスクファクターが身体的要因として寄与していたものと認められるから、原告の損害額を決定するに当たり、公平の観点から、民法418条を類推適用して、これを斟酌するのが相当であり、原告に生じた全損害額から2割を控除するのが相当である。
7 損害について
原告は、M社の債務不履行により、逸失利益3246万6959円、慰謝料810万円の損失を被ったことが認められ、厚生障害年金として357万3841円、健康保険法に基づく傷害手当金として319万6918円を受けていたから、これを損益相殺する。また、原告の素因を考慮して、原告に生じた全損害額から2割を減額するのが相当であるから、損益相殺後の原告の損害額は、2148万7106円となり、弁護士費用は210万円と認めるのが相当である。 - 適用法規・条文
- 地方公務員災害補償法31条、45条
- 収録文献(出典)
- 労働判例1033号56頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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