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青森県教委等(市立S中学校教諭)解雇事件(パワハラ)
- 事件の分類
- 解雇
- 事件名
- 青森県教委等(市立S中学校教諭)解雇事件(パワハラ)
- 事件番号
- 青森地裁 − 平成4年(行ウ)第1号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 青森県教育委員会
青森県人事委員会 - 業種
- 公務
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1992年12月15日
- 判決決定区分
- 棄却
- 事件の概要
- 原告は、昭和34年4月に青森県立中学校教諭として採用され、昭和60年4月から青森市立S中学校に勤務していた女性である。
原告は、昭和63年9月27日まで15.5日の年次有給休暇を取っていたが、同年10月に入ってから、7日、13日、21日、28日、29日には各数時間ずつ、同月1日、6日、14日、22日、23日、31日には全日欠勤した。そのため原告は、欠勤に関する顛末書を提出し、右顛末書提出後も時々欠勤を続け、結局同年9月28日から12月28日までの欠勤日数は20日となった。なお、原告は、昭和62、3年頃から顛末書記載のような言動を多く発するようになったため、校長は原告に対し、精神科で受診し、異常の有無の診断書を報告するよう職務命令を発したところ、原告はその日は承諾したものの、その後受診しないと回答した。原告は、平成元年5月8日以降欠勤が多くなり、同日から同年7月3日までの間の欠勤日数は31日にのぼったため、校長は同月4日、原告に対し、同月6日に市教委学務課長の面接を受けるよう文書で職務命令を発したが、原告は欠勤して面接を受けず、原告の同月4日から20日までの欠勤日数は13日となった。校長は、欠勤日数を踏まえ、第2学期から原告の授業時間数を週21時間から週7時間に減らし、校務分掌も保健指導を外した。原告は、同年8月にも時々欠勤し、同月4日から28日までの欠勤日数が5日となった。そこで校長は、原告に対し、同年9月4日に教育事務所長の面接を受けるよう指示したが、原告は欠勤して面接を受けず、その後も命令に反し面接を受けなかった。
校長は、同年9月18日から原告の授業時間をなくしたところ、原告は同日から欠勤を続け校長及び教頭が原告宅前で待機し、訪問しても応答しないため、校長らは、このまま欠勤を続けた場合は懲戒処分又は分限処分になり得ること及び欠勤が健康上の理由による場合は専門医の診断を受けること等を記載した文書を原告宅に置いてきたが、原告はその後も欠勤を続けた。原告は、同年11月16日、市教委を訪れ、市民館への転任を請求したため、校長らは原告にS中学校に勤務するよう督促したが、原告は同年末まで連日欠勤を続けた。
原告は、平成2年に入ってからも年休の取得を続け、同年2月5日で同年分の年休を全て消化してしまったにもかかわらず、その後も連日のように欠勤を続け、結局、原告の平成元年度の欠勤日数は177日にのぼった。そこで被告教育委員会は、平成2年3月27日付けで原告に対し、地方公務員法28条1項1号に基づき分限免職処分(本件処分)を行った。
原告は、本件処分を不服として、同年3月28日、被告人事委員会に対し、本件処分について審査請求を申し立てたが、被告人事委員会は平成3年12月5日付けで本件処分を承認する旨の裁決(本件裁決)をした。そこで原告は、本件処分事由とされる事実は存在しないとして、本件処分及び本件裁決の取消しを求めて本訴を提起した。 - 主文
- 原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。 - 判決要旨
- 1 本件処分の適法性について
校長らの再三の指導・職務命令にもかかわらず、原告の欠勤日数が長期間(長時間)にわたり、その勤務実績が著しく不良であったことは明らかであり、原告を公立学校教諭の職務に引き続き任用しておくことは適当でないと評定されてもやむを得ないものがあるから、被告教育委員会が地方公務員法28条1項1号に該当するとして原告を分限免職に処した本件処分は、分限制度の趣旨・目的に照らし合理性を持つものとして適法である。
2 本件裁決の適法性について
原告は、本件裁決の適否につき、本件処分事由となった事実は存在しないから本件裁決は取り消されるべきである旨主張する。しかしながら、裁決の取消の訴えにおいては、処分の違法性を主張することができず、当該裁決固有の違法事由に限り主張できるところ、裁決固有の違法事由とは、裁決の主体・手続等の形式に関する違法を意味し、裁決の実体的判断に関する違法は含まれないと解すべきであるから、原告の右主張はそもそも失当である。 - 適用法規・条文
- 収録文献(出典)
- 労働判例625号26頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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