判例データベース
広島中央保健生協(C生協病院)事件(マタハラ)
- 事件の分類
- 賃金・昇格妊娠・出産・育児休業・介護休業等
- 事件名
- 広島中央保健生協(C生協病院)事件(マタハラ)
- 事件番号
- 広島地裁 − 平成22年(ワ)第2171号
- 当事者
- 原告…個人1名、被告…広島中央保健生活協同組合
- 業種
- 医療介護事業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2012年02月23日
- 判決決定区分
- 棄却
- 事件の概要
- X(原告)は1994(平成6)年3月21日、医療介護事務等を営む協同組合Y(被告)との間に、理学療法士として期間の定めのない労働契約を締結し、Yが運営するC生協病院の理学療法科(現在のリハビリテーション科、以下「リハビリ科」と略称する)に配属され、2004(平成16)年4月16日、Yからリハビリ科の副主任に任ぜられた。同科の医学療法士は患者の自宅を訪問してリハビリ業務を行う「訪問リハビリチーム」と、病院内においてリハビリ業務を行う「病院リハビリチーム」のいずれかに属するものとされていたが、2007(平成19)年7月、Yは前者業務をF訪問介護施設に移管し、当該業務チームに属していたXはこれよりリハビリ科の副主任からF訪問介護施設の副主任となった。
2008(平成20)年2月、第2子を妊娠したXは、労働基準法65条3項に基づいて軽易業務への転換を請求し、病院リハビリ業務を希望した。これを受けてYは、2008(平成20)年3月1日、Xに病院リハビリ業務への異動を命じるとともに、副主任の地位を免じた(以下、副主任を免じた措置を「本件措置1)」という)。Xは、2008(平成20)年9月1日から同年12月7日まで産前産後休暇を、同月8日から2009(平成21)年10月11日まで育児休暇を取得した。Yは同月12日、Xに対してF訪問介護施設への異動を命じた。その際、当時F訪問介護施設ではXよりも職歴が6年短い職員が副主任として訪問リハビリ業務の取りまとめを行っていたことから、Xは再び副主任に任ぜられることはなかった(以下、副主任の地位に復帰させなかったことを「本件措置2)」という)。
XはYに対し、本件措置1)は男女雇用機会均等法(以下、「均等法」と略記する)9条3項に定める「妊娠又は出産に関する事由」によって行われたものであり、同措置によりYはXに均等法告示に定める「降格」という不利益な取扱いをしたから、本件措置1)は均等法9条3項に反する違法無効なものであるとし、また、本件措置2)は同項および育児・介護休業法(以下、「育介法」と略記する)10条に反する違法無効なものであるとし、管理職(副主任)の手当(月額9500円)の支払い等を求めて本件を提訴した。 - 主文
- 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。 - 判決要旨
- 本件措置1)は、Xが軽易業務への転換を希望したことを契機に、その希望に沿うべく、病院リハビリ業務に異動することとなったところ、当時、当該異動先にはXより職歴が3年ほど長い職員が主任として取りまとめを行っており、Yが、当該異動先の規模や体制からみて、副主任を置く必要性がないと判断したことから講じられたものである。他方、Xも本件措置1)に渋々ながら了解をしており、また本件措置1)が講じられた後、産前産後休暇を取得するまでYに対し異議を述べなかったこと等から、Xが副主任免除について同意していたことは明らかである。以上の認定事実に鑑み、本件措置1)はYがXの軽易業務への転換請求を契機に、これに配慮しつつ、Xの同意を得たうえで、事業主であるYの業務遂行・管理運営上、人事配置上の必要性に基づいてその裁量権の範囲内で行ったものであり、均等法等にいう不利益な取扱いをしたものとは認め難い。
また、本件措置2)は、Xが職場復帰するに際し、Xの希望(勤務先と保育園との距離関係等)を聞くなどして復帰先を慎重に内定したところ、当該復帰先は当時すでに副主任がいたこと等から、YにおいてXを副主任に任じないこととして講じられたものである。以上を踏まえ、本件措置2)は、Yの業務遂行・管理運営上、人事配置上の必要性に基づいてその裁量権の範囲内で行われたものと認められ、均等法や育介法に反する不利益な取扱いをしたものとは認められない。 - 適用法規・条文
- 均等法9条3項、育介法10条
- 収録文献(出典)
- 労働判例1100号18頁
- その他特記事項
- 本件は控訴された。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
広島地裁−平成22年(ワ)第2171号 | 棄却 | 2012年02月23日 |
広島高裁 − 平成24年(ネ)第165号 | 棄却 | 2012年07月19日 |
最高裁 − 平成24年(受)第2231号 | 破棄・差戻し | 2014年10月23日 |
平成26年(ネ)第342号 | 判決 | 2015年11月17日 |