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広島中央保健生協(C生協病院)事件(控訴)(マタハラ)

事件の分類
賃金・昇格妊娠・出産・育児休業・介護休業等
事件名
広島中央保健生協(C生協病院)事件(控訴)(マタハラ)
事件番号
広島高裁 − 平成24年(ネ)第165号
当事者
原告…個人1名、被告…広島中央保健生活協同組合
業種
医療介護事業
判決・決定
判決
判決決定年月日
2012年07月19日
判決決定区分
棄却
事件の概要
 X(控訴人)は1994(平成6)年3月21日、医療介護事務等を営む協同組合Y(被控訴人)に雇用され、Yが運営するC生協病院の理学療法科(現在のリハビリテーション科、以下「リハビリ科」と略称する)に配属された者である。

 2008(平成20)年2月、子を妊娠したXは、Yに対し、労働基準法65条3項に基づいて軽易業務への転換(具体的には、訪問リハビリ業務から病院リハビリ業務への転換)を請求したところ、同年3月1日、Yは、Xに対して病院リハビリ業務への異動を命じるとともに、同日付で副主任の地位を免じた(以下、副主任を免じた措置を「本件措置1)」という)。さらに、2009(平成21)年10月12日、Xが育児休業から復帰した際、YはXを副主任の地位につけなかった(以下、副主任の地位に復帰させなかったことを「本件措置2)」という)。

 XはYに対し、本件措置1)は男女雇用機会均等法(以下、「均等法」と略記する)9条3項に反する違法無効なものであるとし、また、本件措置2)は同項および育児・介護休業法(以下、「育介法」と略記する)10条に反する違法無効なものであるとし、管理職(副主任)の手当の支払い等を求めて本件を提訴したが、第一審では、いずれの措置も事業主であるYの裁量権の範囲内で行ったものであり、均等法等にいう不利益な取扱いをしたものとは認め難いとしてXの請求を棄却したため、Xはこれを不服として控訴した。
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は、控訴人の負担とする。
判決要旨
 本件措置1)は、副主任という職位を免ずるものであるところ、管理職たる地位の任免は、管理職の配置という経営判断を要する事項であるから、人事権の行使として、使用者の広範な裁量に委ねられている。但し、均等法第9条3項は、妊娠、出産等を理由として女性労働者に対して不利益な扱いをすることを禁じており、同法に違反する場合には裁量の範囲内ともいえず、無効となるものと解する。しかし、第一審の認定した事実経緯からすれば、Yは、Xからの妊娠に伴う軽易な業務への転換の希望を受けて、Xを異動させ、当該異動先には副主任を置く必要がなかったために本件措置1)をなしたものであり、Xも渋々ながらもこれに同意していたと評価され、均等法に違反するということも、人事権の濫用に当たるともいえない。

 また、本件措置2)については、YがXの復帰先を検討するなかで、Xが配置されるならば自分は辞めるという職員があるなどして復帰先がしぼられる一方で、Xの希望も聞いたうえで復帰先が決定されたものであり、さらに当該復帰先は当時すでに副主任が配置されていたため、Xを副主任に任ずる必要がなかったのであるから、本件措置2)が均等法や育介法に違反するということも、人事権の濫用に当たるともいえない。
適用法規・条文
均等法9条3項、育介法10条
収録文献(出典)
労働判例1100号15頁
その他特記事項
本件は上告された。